第十四話

 黒龍マブラスタside

 我の名は黒龍マブラスタ。かつて世界全てを敵に回し、人族と神々に無様にも負けた龍じゃ。そんなんでも我は世界最強と名高い龍じゃった。何のために戦ったのかは今では全く覚えとらん。だが、我は決して人族に負けた訳では無い。人族達は神々に与えられた神器や龍特効を宿した武器を用い、我を卑劣な罠にかけ数という暴力で倒しただけじゃ。まともに戦えば我が勝っていた。だからこそ我は、人族達を自分の力で戦えない間抜けと思っておった。そう、思っておった。


 「おりゃぁぁぁぁぁ!!まだまだぁぁぁ‼︎」


 無礼にも我の体で武器を作り、それを扱おうとする愚か者がいた。その者に身の程を教えようとまず我を扱おうとする愚者を我が精神世界に引き摺り込んだが、今、我は防戦一方になっておった。


 「こんなもんかよぉぉぉ‼︎‼︎」


 最初は手加減していた我が一方的に攻撃しておった。だが、途中から奴は突然狂ったように笑い出すと変わった形の剣を出した。そこから攻守が完全に逆転した。先程まで圧倒的だった力の差が剣一本でひっくり返ったのじゃ。そもそもここは我の精神世界。この空間では我が許可したものしか存在出来ないはずなんじゃ。なのにあの奴は剣を出した。我の許可無しで。その時点で異常じゃ。


 「体があったまってきたぁぁぁ!!」


 あまつさえ奴は我の魔法を斬り伏せて見せた。音速で射出した闇の槍は剣で斬られ、爆発魔法は発動前に魔力を斬り発動を阻止などと人では到底不可能な芸当を平然とやってのけている。我は生まれて初めて自分以外の生物を恐れた。


 「今だぁぁぁ!!」


 そして遂に奴は我の眼前に到達した。認めたくは無いがこの男は強い。だから我は手加減を辞めた。


 「グォォォォ‼︎」


 人の姿を捨て龍になった。男は我の咆哮で吹き飛ばされたが、それでも笑っていた。


 「いい。いいぞ。これなら存分に力を試せる。『無心一体』。」


 何かを呟くと男は消えた。まるで最初からいなかったかのように消えた。全力で探知したが全く探知出来ない。辺りに黒炎を無差別に放ったが、まるで手応えがない。突然背中から気配を感じた我は、反射的に空を飛んだ。


 「『極撃』」


 我の背中が斬られた。幾ら弱体化しているとはいえアダマンタイト以上の硬度を誇る鱗を斬り、我の血肉を斬り裂いた。飛んでいなければ首を斬られていた。


 「ガァァァァ‼︎‼︎」


 久しく感じていなかった激痛に我は叫んだ。その叫びですら衝撃波となったが、それすらも容易く斬った。その後、男は気にする事なく空中に立ち、ゆっくりと何かを呟きながら剣を構えていた。


 「我が一撃は最強を砕き滅ぼすである。我が一撃は終焉をもたらす技である。我が一撃は世界を切り裂く技である。故に、我が一撃に斬れるもの無し。『絶断剣』。」


 そこから一閃を放った。その一閃は我の体を容易く斬り裂き、我が精神世界を斬った。そこで我の意識は途絶えた。


 そして、壊れかけの精神世界で我は目覚めた。その横に先程の男がおった。殺さなかったのか。


 「お主、何故我を殺さなんだ?」


 男は凶暴な笑みを浮かべながら言った。


 「ただの礼だよ。お前は本当の俺を目覚めさせてくれた。それに、こんなに楽しい戦いは久しぶりだった。」


 イカれている。我相手にほぼ無傷で勝利し、我を殺さないように配慮する余裕すらある。我は初めて明確な恐怖を感じた。それと同時に恋と言うのだろうか?我はその男がどうしようもなく愛おしいと感じた。我は強者に問おた。


 「主の名は何と申すのだろうか?」


 強者は答えた。


 「ロスト。人外を超えた化け物だ。」


 ロスト。なんと愛おしい名なのだろう。我は決めた。この強者、ロストを我が主人とし、いつか主人と子を成すと。


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 作者です。かなり短くなった自覚はあります。なので、主人公の技や黒龍マブラスタについて解説をしたいと思います。別視点で書くのって難しいですね。


 主人公の技について※主人公は現実世界で無意識に少し魔力を使っています。

 無心一体

•周りと同化することで相手の認識から外れる技。主人公の場合ただ同化するだけでなく気配や気、魔力、そして自身の生命力すら自然と同化させ、あらゆる探知能力を掻い潜る事が出来る。言うなれば自然とほぼ一つになっている。又、普通なら使用者も相手を認識しづらくなるが、主人公は相手をしっかり認識出来る。

 極撃

•魔力と気を極限まで圧縮して剣に纏わせ放つ技。威力は絶大で龍の鱗を容易く斬れる程である。主人公はこの技で戦車を切断した事がある。

 絶断剣

•主人公が使える絶技の一つ。自らの宣言の中、極限まで集中力を高め、己の全てで持って一閃を放つ技。その一撃は他の技を凌駕し、空間にすら影響を与える。主人公は現実世界でこの技を使い、完治3週間の大怪我をした。

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 黒龍マブラスタについて

•説明は一部冒頭にもあります。マブラスタの恋心については、龍種の中では一般的な価値観に基づいて生まれました。現在のレベルは100くらいです。全盛期では500前後で、単純なステータスだけでも平均は300000を超えます。得意属性は闇と精神系全般で、当時は龍種最強でした。

 龍種について

•竜種の完全な上位種で、下級龍ですら上位竜をボコボコに出来るほど力の差がある。龍種はほぼ全ての個体が自分の力に自信を持っており、番を作る際は大体が自分より強い者に求婚する。龍同志の子供はこの風習のせいで滅多に生まれない。

 精神世界について

•マブラスタが創った世界。マブラスタが許可した者だけが立ち入ることが許される。主人公本来の精神が完全な形で復活したことで、主人公の精神領域が精神世界を一部侵食したことで主人公は武器を出したり、空中に立つなどのことが出来た。尚、あくまでも精神世界なので体の負担が大きい技を使ったり、ダメージを受けても精神が少し摩擦する程度で危険はあまりないが、死んだ場合は廃人になる。

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