第十三話

 次の日の朝、俺は宿で朝飯を食って日課の素振りをしギルドに狼の件で向かった。ギルドに入ると職員達は大忙しな様子だった。受付に行くと、受付嬢が憂鬱そうにしていて俺を見つけて急に興奮しだした。


 「ロストさん!!今すぐ執務室に来てください‼︎」


 受付嬢、カリアにゴーラスがいるらしい執務室に案内された。中にいたゴーラスは疲れた様にしていた。


 「ロストか。もう一度昨日の話を聞かせて欲しい。少し確かめたい事があるんだ。」

 「構わないが。あの狼ってヤバいやつなのか?」


 ゴーラスは渇いた笑みを浮かべながら言った。


 「お前が倒したあの狼を詳しく調べたんだが、実はあの狼はレッサーフェンリルだった。危険度Sのモンスターだ。」

 「ほ〜。強いとは思ったがそこまでか。」


 素直に関心しながら聞いているとゴーラスは俯いた。


 「そんな反応だけか。・・・とんだ奴が来たもんだ。」


 ゴーラスは何か呟くと顔を上げた。


 「ロスト。お前を俺の権限で冒険者ランクをAにする。そして、あんたにとある依頼を受けてもらいたい。」


 先程とは打って変わって厳格な雰囲気で依頼を頼まれた。


 「構わない。丁度暇してたからな。依頼内容は?」


 レッサーフェンリルを倒したせいか、グレイウルフでは物足りないと思っていたので気分転換に良いだろう。


 「街の北の森を拠点にしている盗賊団の殲滅だ。なんでも貴族が裏にいるらしく俺達じゃ手を出せん。報酬は盗賊団の財宝の三割と金貨100枚だ。・・・頼めるか?」


 俺からしたらかなりの好条件だが、直ぐには頷かず黙って考えた。


 「敵の規模は?数や装備などについて知っている事を出来る限り教えてくれ。」


 ゴーラスは盗賊団の規模と要注意人物について教えてくれた。盗賊団の中では元Aランク冒険者の【影黒のシガー】という奴が一番強いらしい。貴族がバックにいるようだがどうでも良い。


 「いいぞ。受けよう。俺が皆殺しにしてやる。」

 「助かる。そして、。」


 ゴーラスは俺に対して礼を言ってきた。俺は気にせず部屋を出た。ギルドでレッサーフェンリルの素材を受付で受け取り、カンザに防具も追加しで作ってもらうことにした。カンザは鍛冶師としてだけでなく防具職人としても有名らしい。そして、街を出て薬草を採取し、回復ポーションなどを宿で作りギルドで売るなどのことをして二週間が経った。


 朝起きて、直ぐにカンザの所に武器と防具を取りに行った。カンザは俺を待っていたのか店に着くと武器と防具を用意していた。


 「旦那‼︎これが俺の人生最高傑作だ‼︎これだけの装備なら旦那にだって釣り合うは筈だ。防具の方はレッサーフェンリルの体毛を使って東方の服を元に一式作った。知り合いに頼んで付与もしてもらってる。外套は黒く加工したりして隠密性を上げてる。」


 カンザは物凄く興奮して装備について饒舌に語っていた。


 「武器は色々作った‼︎一つは旦那が仕留めたレッサーフェンリルの牙や骨、魔石を使って作った普段使い用の刀【白塵はくじん】と余った素材で作った短剣3本だ。そして、これが・・・本命だぁぁぁぁ‼︎‼︎」


 突然カンザは叫ぶと、店の奥から血のように赤いラインが走り暗黒その物のように黒い刀を持って来た。


 「これは先祖代々受け継がれてきた家宝、伝説の黒龍の素材を使った俺の最高傑作ぅぅぅぅ‼︎‼︎」


 サラッと凄い単語が出てきたが、そんな事が気にならないくらい俺はその刀に見入っていた。まるで生きているかのような刀に、俺は惹かれるように触れた。すると視界が急に切り替わった。


 「っ⁉︎何だ!!」


 辺りが真っ暗な空間に移動して俺は警戒した。そして後ろからドス黒いオーラを感じ、瞬時に体を伏せた。すると俺がいた場所にとんでもない速度で黒い斬撃らしきものが通り過ぎた。オーラの発生源の方を見ると、黒髪で暗く儚い雰囲気の着物を着て妖艶に微笑む一人美女が立っていた。


 「お前が俺をここに連れて来たのか?」


 質問すると女は面白そうに言った。


 「ふふふ。さぁ、どうじゃろな?そんなことより自身の罪を償うのじゃな。我が名は黒龍マブラスタである。我が半身を扱おうとするならば、我を討ち倒して見せよ‼︎」

 「そういうパターンかよ!!」


 俺は内心舌打ちするしながら、直ぐに横に跳んだ。先程まで俺がいた場所が突然爆発した。女の周りに黒いもやが発生し、槍の形に変化すると高速で飛んできた。それを全てギリギリで躱し、女に近づこうとしたが何の予兆もなく足元が爆発した。間一髪で躱せたがかなり危なかった。女はおかしそうに笑っていた。持っていたはずの武器は何故か無かった。攻撃の手を緩める気配はない。それが体感2時間続いた。一方的に攻撃され続け、反撃する隙が一切無かった。それでも俺は笑っていた。


 「いいねぇ‼︎これだよこれ‼︎最高だね‼︎死が目の前にある。久しぶりの感覚だぁ‼︎‼︎」


 最高の気分だった。本当に久しぶりに死を感じた。紛争で敵にアサルトライフルの銃口を向けられ囲まれた時でもこんなに死を予感した事はない。気付けば俺は心の底から笑っていた。


 「アハハハハハハハハ‼︎もっとだ‼︎もっと俺に死を、刺激を寄越せ‼︎‼︎」


 攻撃をギリギリで避け続ける中、体の中にあった何かが壊れたような気がした。そして、体の中から力が漲ってきた。俺はいつの間にか刀を持っていた。紛争地域に行く時に必ず持ち歩いている愛刀【氷雨ひさめ】だ。


 「なっ⁉︎何故武器を持っておる‼︎ここは我の精神世界じゃぞ!!」


 女は驚いていたが、気にせず突っ込んだ。黒い槍が飛んできたが全て斬り伏せた。


 「さぁ。ここから反撃の時間だぁ!!・・・覚悟しろよぉ女ぁ。」


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 作者です。予定より早いですが、主人公覚醒です。ここから主人公の無双開始です。

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