第十二話

 女は俺の言葉に驚き、慌てて聞いてきた。


 「っ!?貴方もプレイヤー何ですか⁉︎私、ゲーム配信者のキアラって言います。助けてくれてありがとうございます。」

 「俺はロストだ。で、何でグレイウルフと戦っていたんだ?」


 キアラは俺の質問に気不味そうに答えた。生配信中に魔物を予定より多く狩れ、調子に乗って森の奥に入った結果グレイウルフに狙われたらしい。補足しとくと、このゲームには配信専用の設定があり、それを弄ると生配信などが出来るようになる。視聴するには、専用の機材もいるらしいがキアラは配信者としてそれなりに有名らしく、一定の視聴者がいつもいるということだ。


 「災難だったな。一つアドバイスしとくが、基本だけで良いから剣術を学んだ方がいいぞ。構えが不恰好過ぎだ。」


 これは優しさとかでなく、剣の構え方が気に入らなくムズムズするからだ。


 「はい。参考にします。失礼ですけど、ロストさんってもしかして先行プレイヤーですか?」

 「そうだ。」


 肯定するとキアラは興奮しだした。


 「皆さん、先行プレイヤーの人ですよ‼︎だからあんなに強いんですね‼︎」


 キアラの反応からしてまだ配信しているようだ。


 「まあな。他の奴よりもステータスは高いはずだ。」

 「ステータスって見せてもらえませんか?」


 見せるのは構わないが、流石に配信している中ステータスを見せたくない。


 「能力値とレベルだけなら、誰にも言わない条件で構わない。」

 「分かりました。では視聴者の皆さん、ここからは私の反応だけで楽しんでください。ロストさん、フレンド登録もお願いします。」


 そうして、俺はキアラとフレンド登録して互いのステータスを見せ合った。キアラは俺のステータスを見てかなり驚いていた。


 「ロストさんってアポカリプスでプレイしているんですか‼︎‼︎それでこのレベルって、一体何したんですか‼︎」

 「いや、自分よりレベルの高い魔物を狩りまくっただけだぞ。初期位置が森の深い所でな。」


 能力値とレベルだけの表示でもアポカリプスモードなのは分かるらしい。一応言うとキアラのステータスは意外とバランスがいい。ゲーム配信者なだけはあるようだ。軽く話をした後、俺がナイフでグレイウルフを解体し始めるとキアラが不思議そうに聞いてきた。


 「何しているんですか?」

 「ん?何って解体だけど。」


 キアラはまた驚いていた。


 「か、解体するんですか‼︎インベントリを使えば、てロストさん使えないか。」


 インベントリには解体機能があるのか。多分ちょっとした制約があるのだろうが。解体を終えた俺は立ち上がって森の奥に歩き出した。


 「では俺はもう少し奥に行くから。じゃ。」

 「はい。私は浅い所で狩りをしているので、何かあったら遠慮なく頼ってください。」


 俺はキアラと別れ、森の奥に進んだ。グレイウルフやでかい猪が襲ってきたが全部倒して解体した。そして、森の中で一番強い気配を放つ存在がいる場所に着いた。


 刀の試し斬りに来ただけだったが、森に入って直ぐに強い奴がいると勘が囁いていたので探していたのだ。灰色の毛並みの三メートル近い狼型の魔物のようだ。気配を隠しているつもりなようだが、俺からしたら無いにも等しい。気配探知には昔から自信があった。ゲームでもそれは変わらなかった。


 「さっさと起きろ‼︎犬野郎‼︎」


 俺は狼にそこら辺に落ちていた石を拾い全力で投げつけた。すると、狼は石を躱すように飛び起き俺に襲い掛かってきた。


 「良いね‼︎そう来なくっちゃ‼︎」


 狼は鋭い爪を振り下ろしてきた。それを弾き、刀で斬り付けたが灰色の毛が思いの外硬く弾かれた。狼は後ろに後退し風の刃を飛ばしてきた。それを躱わし狼に炎の魔術【ファイヤショット】を放ったが、炎は狼に当たると直ぐに霧散した。やはり、魔力の耐性もかなりある。


 「さっきの風は魔法か。厄介だが、躱す事自体は難しくないな。」


 俺は刀を納刀し、素手で狼に挑んだ。狼は警戒を強めたのか、距離を置きながら魔法を使って俺を攻撃してきた。それらを全て躱して一気に距離を詰め、狼の懐に潜り込んだ。


 「これはどうだぁ!!『破衝撃』‼︎」

 「ガウッ‼︎‼︎」


 破衝撃をくらった狼は吹き飛ばされ、呻き声を上げた。かなり手応えがあった。ゴーラスに使った技と同じだが、殺す気で使ったので威力は桁違いだ。それでも狼は立ち上がり、俺に再度襲いかかってきた。爪を振り下ろし攻撃した後、すぐに俺に対して吠えてきた。すると狼の周りから幾つか雷が発生し俺目掛けて飛んできた。


 「次は雷か!!面白い、受けて立つ!!」


 雷を躱しながら狼に接近したが、突然風の刃が飛んできて、俺の頬に掠った。雷と風の猛攻に耐えながら、俺は狼に隙が出来るのを待った。30分くらい耐えていると、魔力が少なくなってきたのか動きが一瞬鈍った。その一瞬に距離を詰め、破衝撃を放ち狼を吹き飛ばした。


 そこから狼と3時間殺し合いをした。狼が想像以上にしぶとく、かなり手こずったが満足な戦いが出来た。その代わり装備が裂けたりして、ボロボロになった。


 俺は狼の死骸を解体しようとしたが、体がかなり硬く解体用のナイフで斬れなかったので、マジックバッグに入れて持ち帰る事にした。そのせいで一部の素材を捨てる羽目になった。


 街に戻って冒険者ギルドに依頼達成の報告のついでに解体依頼を出した。担当の職員に狼の死骸を見せると悲鳴を上げて気絶した。そこに急いで駆けつけたゴーラスに問い詰められたが、機嫌が良かったのでゴーラスには狼との戦闘の一部始終を全部伝えた。するとゴーラスは大声で笑い、明日ギルドに来るよう言われ、急かすように帰らされた。その時のゴーラスは目が笑っていなかった。


—————————————————

 作者です。主人公が何かやらかしたようです。他のプレイヤーと会ったようですが、あまり興味がなさそうですね。

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