第十一話

 近くのソファーに座るとギルドマスター、ゴーラスは俺に色々聞いてきた。何処から来ただの何してた、だのくだらない事だった。


 「こんな事を聞く為に呼んだのか?街に来たばかりで宿もまだ決めてないんだが。」


 不愉快そうに言うとゴーラスは逆に愉快そうにしていた。


 「そうか‼︎それは済まない。オススメの宿を紹介するから許してくれ。ヒナミ食堂って言う宿だ。」


 宿の他にも街の有名所を教えてくれたが、時間を無駄にしたのは変わらないので不快な気分だった。その後、ギルドカードという物を貰いギルドを出た。宿に行く前にまず武器屋に行った。そこもゴーラスから教えてもらった店で、鍛治の腕は確かなのだが、店主がかなりの頑固者で有名らしい。それらしき場所に着くと店前で誰かが揉めていた。


 「なんで武器を売らねぇんだよ‼︎金ならあると言ってるだろうが‼︎」

 「お前見たいな剣の扱いが雑な奴にくれてやるもんはない‼︎出て行け‼︎」


 明らかに何処かのボンボンと思われる男とドワーフの男が言い争いをしていた。揉め事を無視して俺は、店の店主らしきドワーフに話しかけた。


 「なあ。あんたがドワーフのカンザか?」

 「あん?そうだが。何の用だ。」


 このドワーフがゴーラスの言っていた奴で間違いないらしい。


 「武器を買いに来た。ゴーラスから武器を買うならここが良いと聞いた。怪しいなら紹介状がある。」


 カンザは疑った目で俺を見た。


 「ゴーラスからだと。買うのは良いが、実力は見せて貰う。」


 俺達が話しをしていると横で先程カンザと言い争いをしていた男が騒いでいた。


 「おい、ドワーフ風情が俺様を無視してんじゃねぇ‼︎さっさとこの店で一番良い武器を売りやがれ‼︎」

 「五月蝿いぞ餓鬼‼︎人の会話に横入りしてんじゃねぇ‼︎礼儀も知らんのか‼︎いいからさっさと出てけ‼︎」


 カンザはそう言って男を殴って吹き飛ばした。その衝撃で、男は気絶したようだ。カンザは鼻で笑って俺を店の裏に招き入れた。


 「で、俺は何をすればいい?」


 カンザは鉄鎧を着た木のカカシと剣を用意していた。


 「このカカシを俺が用意した剣で切って貰う。これが出来たら好きな武器を売ってやる。」


 渡された剣を確かめると仕上げが終わっていないなまくらだった。カンザの様子を見るに、分かっていて渡してきたな。


 「良いぜ。やってやるよ。」


 カンサの挑戦に俺は受けて立つ事にした。ニヤニヤしているカンザの前で俺は目を閉じ自然体で剣を構え、意識を斬る事のみに集中させた。周囲から音が消え、自分の存在が希薄になっていくのを感じながら集中し続けた。そして、目を閉じたままカカシに対して斜めに遅く剣を振った。少し深呼吸をした後、目を開けると予想通りカカシはだった。


 「な、なんだ・・・と?」


 カンザは目を限界まで見開き、顎が外れたかのように口をあんぐり開けていた。俺の剣は確かにカカシを斬った、だが実際には斬れていない。それどころか、何も変わっていないように見える。


 俺はカカシを剣で軽く突くとカカシは綺麗に真っ二つになって倒れた。簡単な話だ。切断面が綺麗過ぎたのだ。


 「な、な、なんだとおぉぉぉーーー‼︎‼︎‼︎」


 カンザはやっと理解が追いついたのか絶叫しながら尻もちをつき、震えていた。


 「ま、まさかこんな事が・・・・・。済まねぇ‼︎‼︎あんた程の剣士を試すような真似をして‼︎‼︎お詫びとして店の武器は勝手に持ってて構わん‼︎‼︎」


 突然土下座しながら詫びてきたカンザに割と素で俺はドン引きした。


 「そ、そうか。・・・なら、刀ってあるか?」

 「かたな?あぁ、刀か!!ありますぜ‼︎・・・だが旦那に釣り合うようなもんじゃねぇ。だから、旦那‼︎俺に一カ月、いや二週間くれ‼︎必ずや旦那に釣り合う刀を打ってみせる。この通りだ。頼む‼︎‼︎」


 頭を地面に擦り付けるカンザの変わりように俺は酷く困惑しながらも答えた。


 「構わないが、一応既にある刀も貰って良いか?」

 「良いですぜ‼︎」


 そうして刀を貰った俺は、ゴーラスから紹介された宿に泊まり、直ぐに眠りについた。


———————————————————


 翌日、宿で起きた俺は朝飯を食って冒険者ギルドで魔物討伐の依頼を受けた。今更だが、ギルドにはランクがある。ランクはスキルなどで使われるランクと変わらず、俺はギルドマスターを倒した事から最初からDランクから始まった。受けた依頼は街に近い森で出るグレイウルフの討伐だ。乗り合い馬車で森の近くまで行き、森で刀の試し斬りをしていた。


 「ん?奥から人の気配がするな。一人っぽいが。」


 森の奥から人の気配を感じたのでそこに向かうと、女が一人でグレイウルフの群れと戦っていた。女は剣を扱った経験が少ないのか構えや動きが不恰好だった。対して、グレイウルフは統率の取れた動きで女を翻弄して遊んでいた。


 「おい、助けはいるか?」

 「えっ⁉︎は、はい‼︎助けてください‼︎」


 女に声を掛けると涙目で助けを求めてきた。なので、グレイウルフの中であまり動いていないリーダーらしき奴を刀で斬り、そして統率を失ったグレイウルフ達も直ぐに斬り全滅させた。女の方を向くと女は尻もちをついていた。そして、俺は女に自分の疑問をぶつけた。


 「お前、プレイヤーか?」


—————————————————

 作者です。主人公、プレイヤーとの初遭遇です。主人公の判断材料はただの勘です。

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