第十話

 「お嬢様‼︎我々の恩人に失礼ですよ‼︎申し訳ありません、ロスト殿。お嬢様が御無礼を。」


 俺に騎士になれと言った女の発言に対して側にいたアリアが謝罪してきた。


 「貴方が謝ることじゃない。おい、俺は強いと思う奴と礼儀正しい奴以外に敬意を払うつもりは無い。諦めろ。」


 俺はサルフィアと名乗った女の誘いをはっきり断った。


 「ならば、私の専属騎士のアリアと決闘しなさい。」


 すると、そんな馬鹿みたいなことを言い出した。アリアはかなり慌てていた。


 「お嬢様⁉︎私がロスト殿に勝てると思っているのですか‼︎決闘の意味をしっかり理解していますよね‼︎」


 アリア自身はそんなに弱い訳ではない。なんとなくだが、レベルはかなり高いはずだ。そんな彼女が苦戦していた盗賊達を不意打ちとは言え容易く殺したのだから、彼女の反応も無理もないと思う。


 「アリア。私はこの男を欲しいと思ったのよ。無論、負けた際はそれ相応の謝礼はするわ。」

 「うっ。あの余り我儘を言わないお嬢様が。・・・分かりました。ロスト殿、少しお付き合いください。」


 アリアは剣を抜いて俺に対して構えた。


 「良いだろう。少し遊んでやる。」


 俺はそう言って素手で構えた。流石に舐められていると感じたのか、アリアは不愉快そうにしていた。


 「私を馬鹿にしているのですか?」

 「いや。ただコレの方が手っ取り早い。」


 そして互いに黙った。周囲で動いていた騎士達がいつの間にか集まっていた。短くも長くも感じる静寂の中、先に動いたのはアリアだった。


 「はぁぁぁ‼︎」


 かなりの気迫で剣を振ってきたが、俺はそれを受け流し彼女を投げ飛ばした。


 「威勢はいいが、素直過ぎだ。」


 彼女はすぐに体勢を立て直して斬り込んできた。俺はまた同じ構えをすると、彼女は急に減速して勢いよく剣を振った。先程よりキレがあり、刀身が少し光っている一撃だったが、俺はすぐに構え直し、手刀で剣を叩き落とした。そして彼女の首にそっと手を添えた。


 「ま、参りました。」


 彼女の降参宣言を聞き、俺は手を下ろした。


 「たったの二撃でやられるとは。」


 アリアは呆然と呟いた。


 「剣は悪くなかった。実戦経験が足りてないな。で、謝礼は弾んでくれるんだろ。」


 サルフィアに確認すると、観念したように言った。


 「分かりました。先程の謝礼とお礼を含めて金貨150枚出しましょう。」

 「いや、200枚だ。」

 「・・・・・はあ。いいでしょう。200枚出します。ここから先の街に私の別荘があるのでそこで払います。それまでの間、護衛として一緒にいてください。」


 意外とあっさり承諾したな。貴族からしたら端金ってことか。


 「それで構わない。」


 その後、死体を燃やして周囲の安全を確認し馬車を動かした。俺は盗賊との戦闘で亡くなった騎士の馬を借りた。移動は順調に進み二日で街に着いた。金は別荘らしいでかい屋敷で貰い、ニルヘシアという街で宿探しと冒険者ギルドという場所に冒険者登録をしに行った。住人に場所を聞きながら、俺は冒険者ギルドを見つけた。早速建物に入り、受付らしき場所に行った。


 「ニルヘシア冒険者ギルド支部にようこそ。どう言ったご用件でしょうか。」

「冒険者登録をしたい。」


 若そうな受付嬢は笑顔で応対した。


 「分かりました。では、こちらの水晶に手をかざしてもらって宜しいでしょうか。」


 そう言われて目の前にある水晶に手をかざした。


 「はい。ありがとうございます。ロストさんですね。犯罪歴は、ないと。登録をする際に試験を受けられますが、どうしますか?」


 水晶には簡易鑑定らしきものが付与されてるっぽいな。試験を受ける事に問題は無いので受ける事にした。


 「では、こちらに来てください。」


 受付嬢に促されて着いた場所は広い訓練所だった。


 「ここで試験官と戦って頂き、ランクを判断します。ご武運を。」


 そう言って受付嬢は訓練所の隅に移動していった。


 「あんたが試験希望者か?」


 訓練所に大剣を担いだ大男が入ってきた。この男が試験官らしい。


 「そうだ。あんたを倒せば良いんだろ。さっさと始めろ。」

 「今回の奴は威勢が良いな。いいぜ。どっからでも来い。」


 そう言われたので剣を抜かずに突っ込んだ。男は面白そうにしながら大剣を構えた。そのまま大剣を振ってきた。大剣だというのにアリアより剣速が速く、キレがあった。難なく剣をかわして俺は男の腹を殴った。一見ただのパンチだが、勿論ただのパンチじゃない。


 「グハァ⁉︎」


 分かりやすく言うなら発勁の超凄い版だ。それを喰らった男は血こそ吐かなかったが、一撃で気絶した。相手の図体がデカかったので簡単に決まった。


 「これで終わりか。なあ、これで良いんだよな。」


 呆然としている受付嬢に確認すると我に返って倒れた男を介抱しに行った。


 「ま、マスター‼︎しっかりしてください‼︎少しお、お待ちください‼︎」


 野次馬に来ていた冒険者らしき奴らは妙に騒がしくしていた。訓練所を出て30分くらい待っていたら、先程の受付嬢が現れた。


 「ロストさん。ギルドマスターの部屋に来てもらえませんか。」

 「・・・構わないぞ。」


 受付嬢に着いて行き、案内された部屋に入ると俺が倒した大男がいた。


 「まさか試験官がマスターとはな。」

 「ガハハハハハ‼︎お前強いな!!まさか一撃でこの俺が負けるとは‼︎世の中何がいるか分からんな!!」


 男は興奮気味に言った。俺は面倒くさそうに思っているとそれを察したのか、俺を座るように促した。


 「気にせず座りな。あんたには色々聞きたい事があるんだ。」


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