第四話

 「な、何のことだい。」


 「隠さなくたって良いんだぜ。もう確信してるからよ。」


 すると婆さんは呆れたように、


 「なら、あんただって分かるだろ。キングの討伐推定レベルは70だよ。勝ち目なんてないよ。あんたのレベルはたったの12じゃないか。まぁ、変わったスキルを持っているらしいけれどキングに勝てるとは思えないね。」


 へぇ〜。スキルも見えるのか。なんとなく察していたが、この婆さんは只者じゃないな。


 「いや。俺なら勝てると思うぜ。レベルとスキルだけで人を見るのはよくないぜ婆さん。」


 婆さんは疑うような目で言った。


 「根拠は、あるんだろうね?」


 「もちろんだ。これを見てくれ。」


 俺は、懐に隠していた一つの牙を出した。


 「そ、それは、アサシンスネークの牙かい⁉︎何でそんな物をあんたが。」


 「俺が倒して解体したからだな。いやぁ〜突然後ろから襲われて大変だったぜ。言っとくとコイツは、レベル0で倒したんだ。」


 「ば、バカな⁉︎アサシンスネークは、レベル35相当だよ!!レベル0が倒せるような魔物じゃない。」


 うわ、あの蛇のレベルってそんな高かったのか。


 「嘘言ってるように見えるか。」


 自信満々で言ってやった。


 「嘘では・・・無さそうだね。でも、あんた何者だい。アサシンスネークを一人で倒したにしては、レベルが低過ぎやしないかい。ここに来る途中で魔物は何体か倒したんだろ。」


 「そう焦るなよ、婆さん。こっからが本題なんだからよ。俺はよ・・・こことは別の世界から来たんだ。そこでは、俺は剣の腕が相当高くてな。この世界に来た時に襲ってきた蛇を倒してここまで来たんだよ。信じるかは別だがな。」


 婆さんは納得したように、


 「その変なスキルを持っとるのは、その影響かい。」


 俺は、婆さんの答えに少し困惑した。


 「信じるのか⁉︎てか、変なスキルって何だ?もしかしてアポカリプスのことを言ってるのか。」


 婆さんは、申し訳無さそうにしていた。


 「聖教会から一年前くらいにこの世界に異界からの使徒がやって来るという話がきたんだよ。まさか本当だったとはね。で、変なスキルっていうのはそのアポカリプス?で合ってると思うよ。何故か文字化けって言うんだったかな?まぁ、訳が分からん文字で書かれてるよ。」


 聖教会?それに文字化けって、訳分からんな。後で爺さんを脅、ゲフン聞くか。


 「色々聞きたい事が多いが、ゴブリンはどうする?奇襲するか、それとも軍が来るのを待つか。」


 「あんたが言った通り、近いうちにゴブリン供は襲って来るだろうね。領主様の軍が来るまで持ち堪えるのは正直私らじゃ難しい。」


 「なら、やる事は奇襲しかないが・・・。」


 婆さんは俺の考えていたことを察したのか、うなづいた。

 「奴等の根城は私が探そう。私はこれでも高名な魔術師だったからね。」


 えっ、ま、魔術師⁉︎なら魔術を学ぶチャンスじゃないか。


 「なぁ、婆さん。突然だが、俺を鍛えてくれんか。」


 「・・・はい?」


 婆さんは唖然としていた。


 そんな事があって、俺はフォスナ村に住むことにした。だが、その前に一度ログアウトした。そして、時間が時間だったので少し遅めの夕飯を食いに行こうとしていたら、爺さんと遭遇した。


 「隆貴、ゲームをしてみた感想はどうだったのじゃ?気に入ってくれたか?」


 「あぁ。気に入ったぜ。爺さんが、自慢するだけあったぜ。スッゲーリアルだった。だけど大丈夫かよ?あんなゲームしてると現実との区別がつかねー奴が出てくるぞ。」


 爺さんは心底嬉しそうにして、


 「そうか、気に入ってくれたか。嬉しいぞ。お前の言う問題に関しては既に対策はしておる。ん、何じゃ?・・・あ!隆貴、ワシは忙しい。それではな。」


 爺さんの近くにいた執事が何か耳打ちしていた。すると何か思い出したのか慌てたように去って行った。聞きたい事が色々あったんだが。そして夕飯食った後、軽く体を動かしてまたゲームを始めた。


 そして、ゲーム内時間で5日くらいフォスナ村で暮らし、村の手伝いをする条件で婆さんに魔術や錬金術について学ばせてもらっている。たまに何処からか視線を感じるが、敵意は無さなので無視している。村の奴らに聞いても気にするなと言ってくる。そして、ついにゴブリン供の根城が見つかった。俺は、婆さんに呼ばれて婆さんの家にいた。


 「どうも、奴等は村の北にある洞窟を住処にしているらしい。それもその洞窟、迷宮に成りかけているようだよ。」


 この世界での迷宮というのは、俺達が知るダンジョンのことだ。説明する必要はないだろうが。


 「で、俺意外に誰が行くんだよ。流石に一人で挑むのは無理があるぞ。」


 「それなら心配要らないよ。メンバーは既に決めてる。そろそろ来るはずだ。」


 婆さんが、そう言うと部屋に誰か入ってきた。


 「村長、呼ばれて来ましたけど何か話が?」


 男二人と女一人が入ってきた。意外にも女の方は、アスカだった。


 「おい婆さん、まさかコイツらが討伐隊のメンバーか?他の奴は兎も角何故アスカが混ざってる。」


 アスカを含めた三人組は、俺の突然の発言に酷く困惑した。


 「あ、あの、討伐隊ってどういう事ですか⁉︎」


 アスカが婆さんに対して慌てて質問した。


 「言葉通りだよ。そこのを加えた四人で、ある魔物を討伐してもらいたい。」


 図体がデカい男ゴライは落ち着いて、


 「その魔物は何なんだよ。」


 その後ろにいたヒョロイ優男キヤミは、


 「どんな魔物だって大丈夫ですよ。そんな余所者なんて居なくても。」


 そう言って睨んできたので、少しだけ殺気を混ぜて睨み返したらキヤミは怯んで目を逸らした。


 「はぁ〜。しっかり話を聞きな。あんたらには、ゴブリンキングを討伐してもらう。断っても良いが、そん時は村が滅んでるかもしれないね。」


 俺以外の三人は絶句していた。無理もないと思うが、今そんな事は気にしてられない。婆さんは、他の三人にも村の状況を説明した。


 「作戦はどうする。キングは、俺が殺るとしても雑魚が邪魔だ。」


 婆さんは、最初から作戦を決めていたのか俺達に簡単に説明した。


 「まず、ゴライとキヤミでゴブリン供を引きつけ、その間にアスカとロストでキングを倒してもらう。私はその間村を守らんといけないから助けることはできん。決行は明日の夜。異論はあるかい?」


 俺は異論は無い。他の三人も婆さんの作戦だったので渋々納得した。その後、明日の準備に向けて三人は急いで家に帰り、俺は婆さんと話しをしていた。


 「わざわざ残ってもらって悪いね。」


 「構わないが、一つ聞かせろ。何故アスカも同行させるんだ?」


 婆さんは険しい顔で、


 「他所から来たあんたは知らんだろが、アスカは回復魔法を使えるんだよ。それも、他の聖職者より腕が良い。」


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 作者です。アスカちゃんの秘密とは一体何でしょう?気付く人は簡単に分かると思います。定番ですからね。

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