第三話
移動を再開してから体内時計で半日が経過した。途中から森の雰囲気が急に変わった。それに合わせて出て来る動物が変わったんだが、大体一撃で終わるから強さの違いがよく分からない。若干弱くなった気がするが。
その中に緑肌の人間ぽい、いわゆるゴブリンが良く出て来るようになった。たまに鎌や鍬みたいな農具や少しボロい剣を持ってるから俺からしたら武器をくれるカモだ。そんなことをしていた頃だった。
「ゃぁーーーー‼︎‼︎‼︎」
「な、なんだ?」
突然大きな悲鳴が聞こえた。急いでそこに向かったら他のより少し大きいゴブリンが人間と思われる赤髪の少女を襲い、今にも犯そうとしていた。
「うわぁ〜。テンプレだなぁ。」
そう言わずにはいられなかった。まぁ、しっかり助けるが。バレない様に後ろに回り込んで、
「ギャギャ、ギャ⁉︎」
「えっ」
剣で首を斬った。
「他の奴より少し大きかったが、やっぱ雑魚だな。たかが不意打ちにすら反応出来ないか。」
そう吐き捨て少女を見た。少女は、ゴブリンに服を破られていてほぼ裸だった。普通なら目を逸らしたりするところだが、俺は女の裸を見ただけで欲情するほどまともな精神はしていない。
「おい、大丈夫か。」
俺は今も混乱している少女に少し大きな声で声をかけた。
「え⁉︎あっ、はい。・・・大丈夫です。あ、あなたは、誰ですか?」
少女はビクビクしながら俺について聞いてきた。俺は少女を宥めるように質問に答えた。
「俺か?俺はロストと言う。えっと、森で迷って彷徨ってる間抜けだ。アンタは?」
「わ、私はアスカです。フォスナ村に住んでます。ボブゴブリンからた、助けてくれて、ありがとうございます。」
アスカは、落ち着いてきたのかぎこちないながら礼を言ってきた。だが今そんなことより、
「近くに村があるのか‼︎」
「えっ!は、はい。」
俺はその答えに心の底から喜んだ。これで森から出られる。
「じゃあ、そんな格好で悪いが村に案内してもらえるか。森で迷って出られなくなっちまたんだ。」
アスカは俺の言葉を聞いて顔を真っ赤にした。裸になってることに今気づいたようだ。
「は、はい‼︎つ、着いてきてください‼︎」
少女は、慌てて自分の腕で体を隠して立ち上がると小走りで駆け出した。俺はそれに着いて行った。しばらくすると開けた場所に出た。アスカは村に着くとさっきよりも早く走り出して近くにいた母親らしき女に抱き着いて泣き出した。
「あ、アスカ⁉︎あんたどうしたんだい⁉︎急に⁉︎」
抱き着かれた女はアスカの様子に困惑していた。
「おかあ〜さん、怖かったよぉ〜。うわぁ〜〜。」
「ええっと、そこのあなたは誰ですか?アスカ泣いてないで説明しなさい。」
「あ、俺が説明するぞ。」
そう言って俺は、アスカの母親にさっきの出来事を説明した。
「ほ、本当ですか⁉︎娘を助けていただいてありがとうございます。」
「いやぁ〜気にしなくていいぞ。俺もそいつに助けられたからな。それより早く服を着させてやれ。人が集まって来たからな。」
アスカの母親は慌てて自分が羽織っていた布をアスカに被せた。
「何事だい‼︎」
集まってきていた野次馬の中からデカい声が響いた。声の主と思う奴を見るとかなり高齢ぽい婆さんがいた。
「村長‼︎アスカがホブゴブリンに襲われたんです‼︎それで、そこの方が助けてくれたらしくて。」
「ッ!?アスカ、怪我は無いかい!誰かは知らんが感謝するよ。」
その後村長と呼ばれた婆さんは、アスカを宥めながら俺を空き家に案内した。
「すまんが、そこの家で少し待っててくれんか。」
「構わないぜ。井戸ってあるか?喉が渇いて仕方ねんだ。」
「な、なら私が案内します。」
アスカの母親、キサナに井戸を案内してもらい家の中で待っていた。半刻すると、
「待たせてすまないね。改めてアスカを助けてくれて感謝するよ。キサナ、あんたはアスカの所に行ってやんな。」
「は、はい。」
キサナが出ていくと俺は早速婆さんに問いただした。
「さっさと本題に入ろうとぜ。なんか頼みがあるんだろう。」
婆さんは、そんなことを言う俺に対して瞠目した。
「わ、分かった。単刀直入に言うよ。村を守るのを手伝ってくれんか。もちろん、報酬は出す。」
俺は少し悩んだ素振りを見せた。
「報酬が出るなら構わないが、何があったんだ?アスカを襲ったホブゴブリンと関係あるのかよ。」
婆さんは、眉を顰めた。
「あぁ。実は最近、ホブゴブリンが村の近くに頻繁に現れるようになってる。そこで私は、ゴブリンの上位種が生まれたと考えとる。」
「上位種つうと、キングかジェネラルかそれとも別のか?」
「多分だが、キングだと思うよ。ジェネラルにしては、動きが慎重過ぎるからね。」
面倒になったな。受けると言った今、断るのは格好がつかないしなぁ。やるしかないかー。
「で、いつ討伐するつもりだよ。領主に使者を出したにしてもゴブリン供が待ってくれるとは思わないな。偵察が来てるってことは、この村が狙われてるのは確かだ。出来る限り早く行動するべきだと思うが。例えば、討伐するとか。」
適当言ったが的外れでは無いはずだ。
「無理だよ。もし、本当にキングがいたら私らには勝ち目は無いよ。」
「なら俺が行こうか、討伐。」
婆さんは、より眉を顰めた。
「アスカを助けてくれたのは感謝するが、アンタには無理だよ。」
それを聞いてを俺は確信した。口元がニヤけるのを自覚しながら、俺は自分の勘に従って言った。
「やっぱりな。婆さん、あんた鑑定スキルを持ってんだろ。」
その言葉に婆さんは目を大きく見開き驚いていた。
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作者です。主人公の勘は、主人公の育った環境のせいでかなり精度が高いです。あとがきでは、ちょいちょい主人公に対しての補足をします。
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