第五話
「回復魔法?なんでそんなもんをアスカが使えるんだ?訳ありなのか?」
婆さんは決心したのか、
「それは・・・アスカが聖女だからだよ。まだ見習いだけどね。」
俺は婆さんの答えに納得した。
「要は、アスカのその回復魔術で万が一の時に対応しろということか。」
俺がそう言うと何故か婆さんは驚いていた。
「な、何か聞かないのかい?アスカの出自とか。」
俺は呆れながら婆さんに言った。
「今、俺にとって一番大事な事はゴブリンの親玉を倒す事であって、聖女やなんやについて知る事じゃないんだよ。そこんとこ、理解しろよ婆さん。」
「・・・分かったよ。行って良いよ。」
婆さんは、ホッとしたように言った。
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翌日の夜、俺達は村の北にある洞窟に隠れながら来ていた。
「ここが、婆さんの言っていた洞窟で間違いないな。おい、ゴライ、キヤミ。俺が洞窟の見張りを一体やるからその後、出来るだけ大きな声でゴブリンを誘導しろ。アスカ、お前は俺と一緒に来い。いいな。」
「分かったよ。行こう。」
キヤミが返事し、他の二人は静かにうなづいた。キヤミの野郎は最初はいけすかねぇガキだったが、村の為にという事で俺の言う通りに動いてくれた。
そうして、婆さんから貰った装備を纏った俺は隠れていた草むらから突撃して見張りのゴブリンを一体倒してもう一体はわざと逃した。そして、キヤミ達が大声で雄叫びを上げた。俺はすぐに近くの草むらに隠れた。しばらくすると洞窟の中から20体以上のホブゴブリンが飛び出てきた。
「キヤミとゴライ、大丈夫かな。」
ゆっくりと近づいてきたアスカがそんなことを言った。
「うだうだ言ってんじゃねぇよ。何の為に朝から落とし穴とか掘ったと思ってんだよ。・・・よし、来ないな。アスカ、行くぞ。」
この時の為に朝からキヤミ達と落とし穴などの罠を作っていたのだ。アスカを連れて洞窟内に入ると意外にあっさり奥まで来れた。
「む、・・・アスカ、お前はここで待ってろ。」
「ど、どうしたの?」
アスカは突然俺が険しい顔をしたことで怯えていた。
「いや、ただこの奥から嫌な気配を感じただけだ。しっかりしろよ。いざとなったらお前が頼りなんだからな。気を引き締めろよ。」
「は、はい。」
アスカは申し訳なさそうに言った。そして奥の広い部屋に入ると、高価そうな剣を持った俺と同じくらいの大きさのゴブリンがいた。
「ニンゲン、ヤッパリキタ。」
「あぁん。最近のゴブリンは喋ることを覚えるのかよ。」
そう言うと、喋るゴブリンは愉快そうにしていた。
「ソンナニユウチョウニシテイテ、イイノカニンゲン。ナカマガタタカッテイルダロ?」
「ごちゃごちゃうるせぇな格下。テメェの口はそんな馬鹿みてぇなことを言う為に付いてんのかよ。」
俺の挑発にゴブリンはみるみる顔を真っ赤にして憤慨した。
「フザケルナヨ‼︎ニンゲンフゼイガ‼︎」
意外と沸点が低かった。
「その人間にすぐに言い返せてねぇ奴がよく言うぜ‼︎」
更に挑発するとゴブリンが斬り掛かってきた。それを構えた剣に魔力を纏わせ、襲ってきた剣を弾いて戦闘に突入した。婆さんから魔術の基本を習った際に使えるようになったものだ。効果は剣の強度を上げるだけだが、無いよりマシだ。
「どうしたよ‼︎さっきのは威勢だけかよ‼︎」
戦闘は最初は俺に有利に進んでいた。だが、ステータスの差で、浅い傷しか与えられてなかった。
(ちっ、ステータスは相手の方がかなり高いな。それに少しずつだが技にキレに出てきてる。)
ゴブリンは剣を打ち合うごとに強くなっている。元々センスがあったのだろう。このままだとキツイ。
「ギギ、ドウシタ。オサレテイテイルゾ。」
「お前が想像より弱くて戸惑ってんだよ。・・・なっ⁉︎」
俺の剣が弾かれた。これは、俺が最初に使った技だ。
(コイツ、俺の技を見て盗んだのか。良いねぇ。)
「ふざけやがって‼︎『激衝』ぃ!!」
「ギッ、グゥー」
俺は自身で作った我流の技でゴブリンを吹き飛ばした。だが、感触からして大したダメージは与えられていない。そして、ゴブリンとまた打ち合いが始まったが、遂に
「がっ⁉︎」
ゴブリンの一撃で剣が壊れ、吹き飛ばされた。
(ぐっ、肋が何本かやられた。右腕の骨もやられたか。)
動けない俺に対してゴブリンは余裕そうな様子で、俺を嘲笑ってきた。
「オワリカ?ニンゲン。オマエノオカゲデオレハマタ、ツヨクナッタ。セメテモノナサケダ。オマエノワザデオワラセテヤル。」
そうしてゴブリンは俺が使った『激衝』の構えをして、
「シネ。」
放った。・・・・・俺は確信した。・・・・・自分の勝利を。剣が俺に触れる前にゴブリンは倒れた。体中から血を出して。
「ガッ、ナ、ナゼ‼︎」
「・・・ハ、ハハ、アハハハハァ‼︎やっぱ、馬鹿だなお前。俺がこんな無様な負け方する訳ないだろぉ。ネタバラシするとさ、俺が使った技『激衝』は使うと体に物凄い負担が掛かるんだよ。それも技の完成度が低いと余計になぁ。」
ゴブリンは酷く驚いた顔をしていた。
「マ、マサカサイショカラ。」
「そう。お前と剣を打ち合ってる間にお前の戦い方は大体分かったからな。お前は俺の手のひらの上で踊っていた訳だ。まぁ、一応賭けだったんだぜ。それじゃ、じゃあな。」
俺はゴブリンの剣を拾い、魔力を纏わせゴブリンの首を切断した。ゴブリンが死んだのを確認した俺は、溜め息をついた。
「はぁ〜。やっと終わった。・・・・・うっ、あ、がぁ。」
体のダメージが大きかったせいか意識が朦朧としだした。誰か呼んでいる声がするがよく聞こえない。そして、俺は意識を手放した。
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作者です。次回は主人公のステータスを公開します。おまけで喋るゴブリンの簡単なステータスも載せます。
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