第2話 「森を抜けて」
エリオットとリリアナはガリス平原へ向けて森を抜けようと歩いている。
この森には特に強いモンスターなどはいない。
子供でも簡単に倒せるスライムやウサギのようなモンスターなどが大半だ。
この森では生えている草木も毒消し草や回復薬の元になる木の実などが豊富で初心者の経験値稼ぎにもってこいの場所だ。
すると草むらの中からさっそくスライム2体が飛び出して来た。
「エリオットはそういえばモンスターと戦うのは初めて?」
「うん、どんな風に戦うのか分からないよ。」
「そかそか、そしたら私がお手本を見せてあげる!」
リリアナはそう言うと杖を取り出し、短文を詠唱していった。
「運命の女神よ、私にかのものを燃やす魔力を付与したまえ」
リリアナの周りに光の粒子が現れ、その粒子が魔法陣を描いていく。
そして指で銃の構えをとり
「フレイムショット」
炎が弾丸のように2発放たれ、スライムの体に着弾。そのまま燃えて消滅した。
「すごい!魔法でこんなこともできるんだ!」
「そう!これはあくまでも基本魔法に分類されるからあれなんだけど、やり方を掴めばエリオットもできるようになるよ!」
スライムを倒して先に向かう。
モンスター以外にも鹿やリスなどの動物もいろんな種類が共存している。
それから2時間ほど歩いたところで開けたところに出て来た。
夕日が差し込んできて辺り一面がオレンジ色に染まっている。
「今日はもう遅いからここで休もっか!」
リリアナはバッグをおろして簡易テントを取り出した。
他にも着替えや携帯食糧、寝袋、さらに枕と犬のぬいぐるみを取り出した。
「いろいろと用意してあるんだね!
でも、犬のぬいぐるみはなんで?」
「いいの!これが無いと寝れないの!」
随分とかわいい趣味を持っているのかとエリオットは感じていた。
「そういえば近くに川があるんだよね、リリアナは先に水浴びでもしてきてよ。
その間に夕食の準備をするから」
「ありがとエリオット!
そしたら行ってくるね!見ちゃダメだよ?」
「み、見ないよ!?」
リリアナは川へ向かって歩いて行った。
エリオットはその間に簡易テントを組み立て始めた。
たまに1人で絵を描きに行く時に泊まりがけで入るため、テントなどの準備は一通りできる。
だれかとキャンプは初めてのことだったからエリオットは鼻歌を歌いながら楽しく組んでいた。
ーーーーーーー
リリアナは川に着き、服を脱いで水浴びをしていた。
ゆっくりと体を洗って汚れを落としていく。
「冷たくて気持ちいいなー♪」
水浴びを堪能しているリリアナ。
体には多少ぼやけている傷が数カ所ある。
リリアナはその傷を優しく触る。
「見ちゃダメって言ったけど、ほんとに見に来ないのかな?」
うっすらと期待するリリアナだった。
一方エリオットはテントを組み終わり、木の枝や葉を集めている。
焚き火を起こして簡単なスープを作るためだ。
クリームソースの元と調味料を用意して、家から持って来た野菜を切る。
鍋で煮込みながら塩分の調節をして切った野菜を入れる。
あとはじっくりと野菜が柔らかくなるまで煮込めば完成。
リリアナが来るまで軽く絵を書くことになった。
エリオットは記憶をたどり、自分の屋敷の絵をサラサラと描いていく。
その間にリリアナが水浴びから戻ってきた。
「お待たせ!サッパリしたよー!
ん、いい匂い!」
リリアナは煮込んであるスープの匂いを嗅いでワクワクした顔でいる。
「あ、おかえり!
もうすぐできるから食器用意してほしいな。」
エリオットは筆を置いてスープの中身を確認していく。
だいぶコクが増してきてとろみがでている。
そしてリリアナが持って来た容器にスープを注ぐ。
「じゃあいただきまーす!」
一口パクリと頬張る。
野菜がしっかりと口の中でとろける。そしてスープが染みてより旨みを増している。
「おいしいねエリオット!」
「うん!いい感じにできたよ。」
こうして2人は楽しく食事を満喫した。
「そういえばガリス平原はあとどのくらいで着くの?」
「明日の夕方には到着すると思うよ!」
2人は寝る準備をしながら明日の予定を確認していた。
まずはガリス平原を南に向かい、川を越えたエーベの町が目的地。
「明日も早いし、今日はゆっくりと休も!
それじゃお休み!」
リリアナは自分のテントの中へと入っていった。
エリオットは再び筆を取り絵描きを再開した。
これから先どんな冒険が待ちわびているんだろうかとうきうきしながら静かに絵を書き続けていた。
ーーーーーーーー
次の日
「やっと着いたねエリオット!」
「ここが、ガリス平原...」
2人は広大なガリス平原にたどり着いた。
当たり一面に地平線が広がっている。
一体どこまでこの平原が続いているのだろうかとエリオットは感じていた。
動物はもちろん、モンスターの種類もさまざまで鳥型のモンスターや虫型のモンスターなど幅広い。
そして今の時刻は夕方、日も沈み始めているから地平線と合わさってオレンジ色の光が平原を大きく包み込んでいるようだ。
「ここから南に2日間ぐらい歩いていったところがエーベの町だよ!
でもそろそろ日が沈むから明日南に向かいながら平原を少し見てみよ!」
「そうだね!とっても楽しみだよ!
外の世界は初めてだから何もかもが新鮮だよ!」
そうして2人はまた野営の準備を始めた。
エリオットにとっての人生最初の冒険の始まりとなる。
〜続く〜
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