第1話:「行ってきます!」
エリオットは次の日、旅立つための準備を屋敷で行っていた。
冒険に必要な
・傷薬や薬草
・何日分かの食糧と着替え
・そして何より大切な絵を描くための道具一式
これらをバッグの中に詰めていた。
準備が整えたエリオットは朝ごはんを作りリリアナが起きてくるのを待っている。リリアナは隣の客間に泊まっているので起こしにいくことに。扉の前に立ち、コンコンとノックをして。
「リリアナさん、おはようございます。
準備が出来ましたら下で朝食を作りますのできてください!」
反応がない、どうやらまだ寝ているようだ。エリオットはそう思い、下で朝食の準備をするために降りて行った。こうして誰かが家にいること自体久しぶりのエリオットにとっては起こしに行くことも新鮮な気持ちでいた。
朝食はシンプルにパンとサラダ、あとはジャガイモをすり潰してあげたハッシュポテトを作る。何年も1人で生活をしてきたからエリオットにとっては料理も趣味の一つになっていた。こうして2人分の食事を作るのは初めての体験だった。
ーーーーーーー
40分くらいで朝食の支度を済ませたエリオットの元に寝起き姿のリリアナが下に降りてきた。
「ん〜おはよ、エリオット...」
「あ、おはようございますリリアナさん!
やっと起きてきたんですね」
「朝は弱くて...ん、くんくん...。これエリオットが作ったの?」
「そうですよ!1人で生活してきましたので料理も暇つぶしに覚えたんです。」
「そうなんだ!顔洗って歯磨きしたらすぐに食べるね!」
そう言ってリリアナは急いで準備をしていく。エリオットにとっては誰かが自分の屋敷にいるのが非日常なので新鮮な気持ちになっていた。1人しかいない屋敷の中に自分と違う高い声が響く。
ーーーーーー
「ごちそうさま!美味しかったよエリオット!これからはエリオットは料理担当だね!」
「え、リリアナさんは料理できないんですか?」
「んー実を言うとずっとこれを食べてきてて...」
リリアナは恥ずかしがりながらそれを見せる。干し肉のようなものだ。栄養価は確かにあるけど、味はまずいことで有名なお菓子だ。
「これは料理とは言えないですよ...
わかりました、これからは僕が料理を作りますよ。」
「ありがと!楽しみだなー毎日!」
リリアナは微笑みながらエリオットの方を向いて言った。エリオットは人に褒められたりするのも久しぶりのことだから顔を真っ赤にしながらうつむいていた。
「じゃあ少ししたら出発しよ!まずはここから南に向かって、川を越えたエーベの町に行ってみよ!」
「わかりました!あ、その前に一つだけしておきたいことがあるんですけど...」
「いいよ!私もこれから着替えたりするから!終わったら玄関の前で待ってて!」
そう言ってリリアナは客間のある2階へ戻って行った。一方はエリオットは昔両親が使っていた部屋へと向かった。生前のままで残している部屋のテーブルに写真が飾ってある。昔、両親と3人で撮った家族写真。
そしてエリオットは笑いながらその写真に言う。
「父さん、母さん。しばらく僕はリリアナって人と旅をするから家を開けるね。どうか僕とリリアナさんを見守ってください。
行ってきます!」
そうしてエリオットは笑顔で両親の写真に思いを伝えて部屋を後にした。玄関の前に着いたがまだリリアナは来ていない。女の子だからきっと準備がかかるんだろうとエリオットは思いながら敷地の中を見渡していた。
しばらく離れていくからこの景色を忘れないように記憶をしていくエリオット。いつか戻ってきたらまたこの景色で絵を描いていこうと決意をする。ありったけの楽しい思い出、たくさんの仲間、手に入れたものを添えて。
「ごめん、待った?」
リリアナがしばらくしてから出てきた。昨日のとはまた違う魔法使いの服を着て荷物を持って。
「大丈夫ですよ!僕も今出てきたので」
エリオットはそう言い、リリアナの荷物を片手に持った。
「よし、それじゃ出発ー!」
こうして2人は屋敷を後にして冒険に出る。
森を南下してまずはガリス平原へと向かうことになった。
ーーーーーーー
最初の目的地、ガリス平原。この平原は1000年前に神々と人類が些細ないざこざによって滅ぼされた。かつては巨大な王国があった地。
無能な王様に従った軍団が太古の昔に神々が設置した塔を破壊した。それに激怒した神々が王国ごと辺り一面を何もない焦土へと変えた。その後、1000年の刻で自然の力により廃墟すらも飲み込む植物で平原を作り上げた。
リリアナがエリオットにガリス平原についてを説明した。
「っていうことが昔あったんだよね。エリオットにはまだ難しいよね?」
「そうですね、ただ...。
1000年で平原ができて、自然や動物が住めるようになってるのはスゴイですよ!」
エリオットにとっては未知の世界だからこそ少年の眼差しでリリアナを見て話を聞いていた。森の中では鳥のさえずりがいろいろと聞こえて心地よくなれる。リラックス効果が期待できるものだ。
「てか敬語じゃなくていいよ?私とそんなに歳変わらないじゃん!それに仲間なんだから!」
「そうですか...。うん、わかった!これから改めてよろしくねリリアナ!」
リリアナの気さくな態度にエリオットは少しずつ気を許し始めていく。こうしてエリオットとリリアナは最初の目的地、ガリス平原に向けて進みながら森の中の景色を楽しんでいた。
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