第5話

 梅雨明けの青空。

 海岸のバーベキュー。


 ヒマワリちゃんの水着姿を期待した男性社員。

 残念!


 日焼けを怖れるヒマワリちゃん。

 長袖、長ズボンの完全装備。


 企画倒れの美味しい時間。

 楽しそうに笑うふたり。


 トナカイくんとヒマワリちゃん。


 良い雰囲気と、波の音。

 磯の香りと、焼ける炭の匂い。


 お一人様の私。

 紙カップのビールは、減っていくのに、さみしい気持ちは増えていく。


『ねぇ、お日さま。

 あなたが赤く染まる頃、

 私の中の妬む気持ち。

 波が、さらってくれないかしら?』


 気づけば、トナカイくんは、焼けた肉をヒマワリちゃんは、冷えた飲み物を私に。


 眩しいふたりの笑顔。

 眩しい夏の日射し。

 夏の海の似合う恋人。


 遠くなってしまった、眩しい去年のクリスマスのあのお店。


 眩しいヒマワリちゃんの若さ。

 でも、その瞳のキラメク星の代わりのハートが滲んだ様にみえたのは、夏の日射しが眩し過ぎるせいかしら?


 ここで、ヒマワリちゃんクイズ。


「先輩、ビールって何から出来ているか知ってます?」


 ビール?

 麦芽、

 ホップ、

 水かな?


「ブー!先輩知らなかったの?ビールは、夏の海に涙を落として造られたのです。泡は、寄せては返す波が作るの。寄せては返す苦い思い出の波」


 あら?

 知らなかったわ。

 海の水が原料なら、どんなに飲んでも大丈夫ね。

 でも、涙も必要なら今の私にはちょうどいいわね。

 時間が心の傷を癒すまでの間、涙の枯れるまで。

 その時までの飲酒タイム。

 今のうちにたくさん飲み続けましょう。


 恋人たちに、夏、海、太陽があるように、

 私にだって、ビール、焼肉、時々溢れる涙を散らす潮風があるわ。


 まだまだ、負けてないわね。

 


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