第4話

 初夏。

 吹く風も爽やか、

 研修終了の新入社員、

 その娘。


 まるでヒマワリの様な

 明るい笑顔。

 若さ溢れる健康美。

 初夏のキラメキを届ける様に、人々に幸せを届けるその笑顔。


 ヒマワリちゃんと呼びましょう。

 男性社員たちのその心。

 全て奪ってひとり占め。

 そんなヒマワリちゃんの教育係は、この私。


 本当は、指導してほしい私。


 そのキラキラの笑顔。

 その1/10。

 私にも、いただけないかしら?


 ヒマワリちゃんは、そつなくこなす。

 お仕事もしっかり。

 今年は楽する教育係。


 どんなお客様もヒマワリちゃんの笑顔には勝てず。

 心は無防備。

 お財布まで無防備。

 お仕事ガポガポ。

 成績グングン。


 教育係の私の控えめな鼻タカダカ。


 いつものヒマワリちゃん。

 おっきな瞳の中、お星さまがキラキラ。

 

 その日のヒマワリちゃん。

 おっきな瞳の中、ハートマークがチカチカ。


「先輩、鹿野かのさんて、素敵ですよね!」


 鹿野くん=トナカイくん


「わたし、今まで恋に縁がありませんでしたけど。鹿野さんを思うと胸が熱くなります。こんなの初めて。初恋かもです」


 モテ過ぎヒマワリちゃん。

 自分への観察力低し。

 全周囲の男子は、恋する熱い視線を彼女に。

 それが普通だと思ったヒマワリちゃん、

 恋される事は、日常に。

 木は、森に。

 恋は、たくさんの恋に、

 隠され、見つける事の出来なかった彼女。


 しかし、見る目は確か。

 トナカイくんへの観察力高し。


 教育係としては、

 鼻が、タカダカ。

 心は、ガクガク。


 でも。

 さすがに、ヒマワリちゃんが相手では……。


 ここは、ひとつ大人になって、おふたりを応援しましょう。


「真千子ちゃん、さすが鋭い観察力。鹿野くんは、とっても良い人、オススメよ」


 真千子ちゃん=ヒマワリちゃん


「あれ?」


 一瞬、ヒマワリちゃんの顔が曇った様に感じたました。


「私、ふたりを応援しているわ」


 大人の私。

 いえ、ヒマワリちゃんに敗北宣言する私。

 あなたのキラメキに、勝てるヒトなんていないわ。

 でも、今日のヒマワリちゃんは、何故かおかしい。


「やっぱり、いえいえ、でもでも」


 恥じらいの赤いホッペ。

 困った青い顔。

 まるで信号機の様に、表情を変えるヒマワリちゃん。

 今日の彼女は、シグナルちゃん。

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