☆いざ挿入!という時に体を取り戻した兎斗。裕翔のように飛燕を優しく抱く
兎斗に与えられたのは覗き窓付きの地下牢だった。文机も、手紙を書くための紙や筆もある。食事は朝夕二回与えられ、見張りに「便所に行きたい」と言えばちゃんと連れて行ってもらえる。自由はないが、タンチョウ族として捕らえられた者の処遇としては不可解なほど快適な生活……これも全て、飛燕のおかげだ。
あの日、山道を逃げていた兎斗は崖を転げ落ち、捕まった。すぐさま縛り上げられ、荷馬車に転がされたが、それから間も無く、この部屋に移された。
自分は拷問にかけられ、殺されるのだと思った。この世に未練はなかった。知布には拒絶され、この体が裕翔に支配されている間は知布との交わりを見せつけられる……そんな生活ともお別れだと、どこかホッとしている部分もあった。
けれどその日のうちに飛燕がやってきた。てっきり、黒髪の男を処刑せず、見逃したとして糾弾されているものと思っていたから、驚いた。
飛燕は言った。
話はつけてきたから、心配いらない。このまま我々の計画を実行する。俺は十日後にここを発つ。タンチョウ族との決戦だ。お前は俺が発った五日後、ここを抜け出し、呂帝とその一族を皆殺しにしろ。
一体どんな手を使ったのか。感心せずにはいられなかった。やはりこの男は有能だと、悔しいが認めざるを得なかった。
「裕翔か?」
ここに入れられてから、日に何度も知布はやってきて、覗き窓からこちらを伺う。
「僕だよ」
兎斗がそう答えると、その目はスッと覗き窓から消える。
けれど裕翔の時は歓喜し、扉を開けて入ってくる。それを何度も、兎斗は自分の体の中にいながら、第三者の立場で見ていた。
今、自分の体を支配しているのは裕翔だ。裕翔は、兎斗が書いた手紙を読んでいる。
裕翔は手紙を読み終えると、筆を取った。けれどすぐさま、「っていうか、お前は俺の行動を見てるんだよな? リアルタイムで」と思い出したように言って、筆を置いた。
「別に紙に書かなくても、言えば伝わるんだよな?」
こっちは返事ができなくてもどかしいのに、馬鹿みたいに確認してくる。
「お前にセックス見られてると思うとやり辛いんだよ」
手紙には、「なぜ僕のフリをした?」と書いた。
昨日、裕翔は知布に「兎斗だよ」と言った。知布は落胆し、去っていった。なんならさっきも、裕翔は兎斗のフリをして、知布を追い払った。
裕翔は兎斗が聞いているものと思って、一人で話し始める。
「……お前の記憶、ちょっとずつ見てるよ。佐了と俺がしてるの見るの、耐えられないって飛燕に泣きついてたろ。あんなの見たらできないよ。哀れでさ」
裕翔はフッと笑った。
「お前ってほんとガキだよな。飛燕のこと憎んでるくせに、あいつに甘えてばっかり。ちんこ切るとかやばすぎるし、妥協みたいに飛燕を犯そうとすんのも胸糞悪い。ほんと、お前は自分勝手だよ」
カツカツと足音が聞こえてきて、裕翔は口をつぐんだ。
扉が開く。現れたのは飛燕だった。走ってきたのか、大きく胸を喘がせている。
「飛燕っ!」
裕翔が立ち上がると、飛燕はハッとしたように目を見開いた。
「飛燕……会いたかった……なんでちっとも来てくれないんだよ」
飛燕と会うのは投獄された日以来、九日振りだ。
「裕翔……」
裕翔は飛燕の腕を引き、部屋に連れ込んだ。パタン、と扉が閉まるなり、裕翔は飛燕の頬を両手で挟み、唇を重ねた。……知布とするより激しい。
「はっ……んうっ……」
「飛燕……俺、どんどん時間が減ってる。この体、もうすぐ兎斗に返すんだ……」
飛燕の両肩をグッと押し、床に二人でしゃがむ。
見られてるとやり辛いという、さっきの発言が嘘のように、裕翔は飛燕にのし掛かり、忙しなく服を脱がしていく。
「裕翔っ……」
「飛燕……ずっとあんたが来るのを待ってた。あんたが欲しくてたまらなかった……」
ズボンを脱がせ、腰を持ち上げる。足が顔の横につくほど逆さに持ち上げ、窄まりを弄りやすい格好にする。
あられもない格好に、下で飛燕が、驚愕に目を見開いた。両足をバタバタと振って抵抗するが、裕翔がちゅっとそこに口付けると、ピタリと硬直した。
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