第14話

 雲ひとつない青い空を、白い鳥が優雅に飛んでいく。この世界に空を飛ぶ機体がないことを……つまり人間が空を飛ぶことはできないということを、健斗は異世界生活一ヶ月目にしてようやく知った。

 海にそびえる鉄柱へ、迂迫うはくが猛スピードで接近する。操縦しているのは兎斗ととだ。鉄柱の直前で兎斗ととは腰をひょいと上げ、体を外側へ倒した。

 迂迫うはくは速度を落とすことなく、鉄柱を旋回した。

「やった!」

 浜からそれを眺めていた健斗は、思わず声を上げた。気づけば隣にいた兵士と手を取り合い、飛び跳ねていた。

兎斗ととがやったぞっ! 全速旋回を成功させたっ!」

 別の兵士が大声で叫んだ。それに応えるように、兎斗ととがこちらに手を振った。


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