☆快感に翻弄される飛燕。乳首を吸われ、ずっと自分はこうされたかったのだと気づく

「だからっ、俺はあんたと同じタンチョウ族なんだってっ!」


 黒髪の男が叫んだ。男は後ろ手に体を縛られ、床に正座させられている。


 飛燕は「あんたと同じ」という聞き捨てならない言葉に総毛立った。


「あいつが……佐了が、タンチョウ族だと吐いたのかっ……」


 部屋は密室。男をここから出す気はない。だから開き直って聞いた。


 男は口をつぐんだ。佐了を庇うための言い訳を考えているのだ。


 最後に兎斗を見たのは十年前。飛燕は十七歳で、兎斗は九歳だった。あの頃の面影が、男には強く残っている。確かに兎斗に似ている……気づけば男の顔に見入っていた。 


「……そうだよ。俺が宇羅の部隊からきたって言ったら、自分は甲斐連の部隊からだって、教えてくれた」


「くだらん嘘はいらん。死ね」


 飛燕は長剣を引き抜いた。床が汚れてしまうが、構うものかと振り上げた。


 カラン、と長剣が手から滑り落ち、床に落ちた。ハッと手を見ると、凍えるように震えていた。さっき飲まされた薬が残っているのか、効いてきたのか……拾い上げようと片膝をつく。これはまずい、と冷や汗が噴き出した。体に力が入らない。


「う、嘘じゃないっ……俺はあんたの仲間だよ」


 少しの間のあと、男が言った。


「こざかしいっ! あいつにそう言えと吹き込まれたのだろうっ!」


「なんで信じてくれないんだよ……髪だって黒いだろ? 信用できないならあと十日、俺を監禁して様子を見ろよ。黒髪しか生えてこないから」


 黒髪はタンチョウ族特有のものだ。それを切り札にタンチョウ族だと言い張るのは当然のことなのに、この日は感情が許さなかった。


 黒髪は、飛燕が手に入れたくて止まないもの。自分と正反対の色。それがあれば問答無用で仲間と認められると思うなよと、腹の底がドッと煮えた。


 膝をついたまま、飛燕は怒り任せに長剣を振るった。わずかな手応えの後、すぽんと長剣が手から抜け落ち、床を滑っていく。


「いっ……」


 男が顔をしかめた。兎斗に……やっぱり似ていると思った。


 男の体から、縄がパサりと落ちた。首を刎ねるつもりだったのに、縄を斬ってしまったのだ。


「あ……」


 男がそれに気づいて腕を伸ばした。そして飛燕を見る。じっと見つめ合う時間が続き、飛燕は内心うろたえた。


 男がこの部屋を出るのは問題ない。外には見張りがいるからどうせ逃げられはしない。


 いや、ダメだ。男は、俺と佐了がタンチョウ族だと知っている。誰にも会わせるわけにはいかない。ここで殺さなければっ……


 飛燕は床に転がった長剣を見た。立ち上がろうと踏ん張るが、力が入らない。床に手をついて這った。


 男が動いた。長剣ではなく、こちらへ……飛燕の背中に馬乗りになった。


「っ……!」


 この俺を縊り殺す気かと、怒りで視界が赤く染まった。


「俺を殺せばっ……貴様の命もっ、佐了の命もないぞっ!」


 男が背中に密着し、怒りが抑えられずに声を荒げた。自分がこんな目に遭っているのも佐了のせいだと思うと、余計に腹立たしかった。


「物騒なことばっか言うなよ。俺があんたを殺せるわけないだろ」


 耳元で男は言った。唇が耳朶に触れている。


「……なら、離れろ」


「やだね。このままじゃ俺はあんたに殺される」


 男はそう言って、飛燕の腰紐をスルリと解いた。


「何をする気だ? 妙な真似をすれば、楽には死なせんぞっ……」


「あんたさ、なんか変な薬盛られてるだろ」


 ぬめったものが耳朶を舐めた。やわく噛まれ、背筋がゾクリとした。


「貴様っ……楽に死ねると思うでないぞっ……少しずつ肉を削ぎ落としっ……塩漬けにしてやるっ……」


「何その拷問……異世界流の処刑? 非人道的すぎるんだけど」


 男は言いながら、飛燕が着ている長襦をまくり上げていく。


「楽に死ねるか死ねないかって、わりと気持ち揺さぶられるよな。楽に死ぬって、誰しもが望むことだろうし。でもそれを、あんたに左右されるのは気に入らない。俺、悪いことした覚えない……し……」


 男が言葉を切り、息を詰めた。背中の痣に驚いたのだろう。


「え……これ、なに? 痛い?」


 いたわるように背中を撫でられ、目の下の皮膚がヒクヒクと引き攣った。


「退けっ!」


「まあ……痛くないなら良いけど。脱がすよ」


 ズボンをずるっと下げられる。


「何をするっ!」


 円を描くように尻たぶを撫で回される。


 両手で尻たぶを割り開かれ、全身に力が入った。


「ふうん、あんたはこっち、使ったことないんだ」


 カッと頭に血が昇った。怒りとは別に羞恥が芽生え、物凄い速さで膨れていく。


「それとも焚刑にするかっ……佐了にっ、燻され爛れていく姿を見られながらっ、死にゆくのだっ……」


「いいかげん処刑から離れろよ。あんたが今考えなきゃいけないのは自分の体だよ」


 パチン、と水っぽい打撃音と尻への衝撃に、飛燕は一瞬、頭が空白になった。


「貴様なにをっ……」


 ペチペチと尻を叩かれる。滑稽な音が恥ずかしい。


「汗ぐっしょりじゃん。……熱いし、これかなりしんどいだろ」


「退けっ!」


 男は背中をそろそろと撫でながら、汗を尻の間に流していく。


 つぷ、と中に異物が入ってきて、羞恥はたちまち怒りに塗り変わった。


「何をするっ!」


 ずぶぶと奥まで入れられ、浅いところを擦られる。何を探しているのか、普段、佐了に同じことをしている飛燕にはすぐにわかった。


「八つ裂きにっ……してやるっ……」


「あんたそればっかだな。あんたは今から、ナンバーワンセラピストから極上の奉仕を受けるんだ。そういう危なっかしい思考は置いといて、楽しもうよ」


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