第9話
健斗が全速旋回を決めると、黄亜の兵士らがドッと沸いた。
「なんだ今のはっ!」
「減速しないで旋回したぞっ!」
「あれが飛鳥を沈めた日本人だ。あいつは体当たり攻撃を止めてくれた、俺の命の恩人だ」
「ですが隊長。
だが
健斗は旋回時、全身を機体から落とすようにして均衡を取る。
「
自分で言ったものの、改良は現実的ではないなと
だが蓋を取るとなると、搭乗者が吹き曝しだ。今回は運良く飛鳥に辿り着けたが、毎回あれが成功するとは思えない。それに……
しかし信じられないことに、その
ともかく、あんな幸運は二度とない。
「すごいぞ日本人っ!」
「俺にも教えてくれっ!」
陸に上がった健斗は、早速兵士らに取り囲まれた。その光景に
「日本軍の特攻は、護衛機がついていたと聞きました。特攻機が、確実に目的地に着けるように」
「それは、最初から特攻すると決まっていたからだ。俺たちとは状況が違う。日本軍は、作戦として特攻を行っていた」
黄亜のカミカゼは、もうどうしようもない時の最終手段として行われる。出撃前に「さあやるぞ」と決めてやるものではないのだ。
「なら、俺たちも作戦としてやりましょう。出撃前に、カミカゼを行う兵士を指名するんです」
「いい加減にしろっ、旋回技術を磨いたって、必ず成功するわけじゃないっ! 簡単に言うなっ!」
「ただ海で戦うより、よっぽど打撃を与えられる。今日だって、第七分隊は全滅です。どうせ死ぬんなら、カミカゼをやった方がまだ報われた。第七分隊の連中はただ逃げ回って、みっともなく犬死に」
パチン、と乾いた音が立った。
「国のために、最後まで勇敢に戦った者を侮辱するな」
「……でも、本当のことです。どうかカミカゼを作戦に取り入れてください。みながやりたくないって言うんなら、俺がやります。ですがその代わり、護衛機をつけてください」
「日本人っ! 俺にも教えてくれっ! 特訓だっ!」
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