カミカゼ
第7話
「敵の母艦を沈めたぞっ! 健斗っ! 俺の部隊に入ってくれっ! さっきの旋回を教えてほしいっ! あれはすごいっ!」
ふと、味方の戦闘機がこちらに向かってくるのが見えた。接近し、隣に並ぶと、パカリとハッチが開かれた。
「
「なんです? そいつ」
「河西戦線で拾った日本人だっ! こいつはすごいぞっ! 飛鳥を沈めたんだっ! 信じられない旋回技術を持っているっ!」
「日本人?」
「マルレの搭乗員ですか」
「いいや、ボートレーサーだ。賭博の駒として速度を競い合ってる。だよな? 健斗?」
「へえ……それじゃあさっきの、お前がやったんだ?」
「ああ」
「ふうん。俺にも教えてくれよ。隊長、さっきの旋回を覚えたら、カミカゼを許してくれますよね」
操縦桿を握る
「……カミカゼは最終手段だ。最初からやると決めるものじゃない」
「日本人、俺も練習すればできるようになるか?」
体型は申し分ないと思った。ボートレーサーは小柄な方がいい。操縦基礎は既にあるから、彼ならすぐにできるようになるだろう。
でも安易に「できる」と答えていいのだろうか。レースではなく、彼らが出るのは戦場だ。
「健斗、俺たちはこんなことを毎日やってるんだ。役立つ技術はなんでも吸収したい。それをカミカゼに使うとは限らずに、だ」
健斗の屈託を見透かすように、
「できなかったら、俺は体当たりするだけだ」
「健斗、自爆攻撃は、お前らの先人が持ち込んだ、悪しき切り札だ。俺たち黄亜軍人は、お前ら日本人に対して恨みに近い感情を持っている」
薄々そうではないかと思っていたが、はっきり口にされるとドキリとした。
「お前が塗り替えるんだ。九死一生でも構わない。俺はもう誰にも、命を諦めて欲しくないんだ」
数十分前、カミカゼを決意した時のことを思い出しているのだろうか、
戦場だからこそ、覚えなければいけないのだ。健斗は考えを改めた。誰もが「できる」ようになれば、決死作戦はなくなる。全速ターンを広める。それが、ここへ来た自分の使命であると、健斗は思った。
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