第6話

 轟音が遠のいていく。青山健斗は後ろを振り返り見、追っ手がないことを確認すると、ようやく腰を下ろした。まだ心臓がバクバクと騒がしい。

 モンキーターンをやった。そのためにハッチを取り払った。

 ミサイルを機体から切り離す操作は甲斐連がいれんがやった。健斗はただ、レースと同じことをすれば良いだけだった。

「すごいなお前っ! 日本の海軍はみんなアレができるのかっ?」

 興奮気味に、甲斐連がいれんが聞く。

「俺はっ、海軍じゃないよっ」

 健斗も声が上擦った。とんでもない世界に来てしまった。自分はこれからどうなってしまうのだろう。師匠はここで、どんな生活を送ったのだろう。不安と、知りたいという好奇心が湧いてくる。けれど今一番胸を占めているのは、全速ターンを成功させたという、達成感だった。

「ならどうしてあんな操作ができるっ? 向こうで、特殊な訓練を受けていたんだろうっ! 何者なんだっ、お前はっ!」

 伝わるかはわからない。でも、胸を張って答えた。

「俺は、ボートレーサーだっ!」


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