対少女編Ⅶ
透が現れたことによって真森を操る者は魔法破壊を恐れて彼女を後退させた。
だが、それよりも先に透の手が伸びて彼女の頭を掴んだ。
青い発光と魔法が破壊される時特有のガラスの割れたような音が鳴った。
倒れ込む彼女の体をそっと支えて床に寝かす。
「とお、る?・・・・」
微かに開く目で見えた彼の名前を呼んでいる。
「今は眠った方がいい」
「わかった・・・・」
眠った彼女の顔は段々と熱を出した時のように赤くなり額から汗がこぼれ始めた。
魔法が脳にもたらす影響。これは情報体であるUQ粒子の壊変や読み取りを行う時、つまり魔法の使用時に発生してしまう。
一般的な学生ならば第一段階に分類される魔法ならば何ら問題なく使えるがそれもまた使用回数が増えれば脳に影響をもたらす。
他にも第二、第三段階の競技用や軍事用の魔法を使用すれば同じく演算による影響が出る。
「雫、すぐに真森を上に運んでくれ」
「演算限界⁈」
「多分な」
「わかった、でも透は?」
「俺はこのまま永原を助けに行く」
「わかった、気をつけて。あっ」
透は雫のことをいきなり抱きしめた。
「いつも悪いな・・・・」
「本当だよ、危険なとこには一人で行っちゃうんだから。でも昔と違って今は前みたいな危ない感じはしないから、だから早く行って戻って来て」
「ああ、また後で」
透は真森を背負った雫を背にその場を後にした。
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「やっぱり君は面白いね、僕の予想通りだ。一つの体に二つの意識とは」
永原をさらった男は気持ち悪い笑みを浮かべていた。
「あなたもやはり私の力が目当てなのですか?」
機械的な冷たい声が先程まで気を失っていた治療代の上に寝た永原から聞こえた。
「先ほどまでの漢字とは違うね、君は・・・・もう一人の君の方かな?」
「もう一人の永原美織ですか・・・・あながち間違いではないんでしょうね。それよりあなたは私に何を求めているのですか?」
「難しいな、なんて言ったらいいか・・・・そうだ、映画とか漫画でよくタイムワープてあるだろ。そういうのに近いと思うんだ」
「つまり過去や未来に行きたいということでしょうか」
「そうだね、まあ未来は要らないかな。過去があれば」
少し間が空いて彼女が話した。
「あなたはそんな子供みたいな理由で私をさらったのですか?」
男は笑いながら言った。
「子供みたいか、確かに他の人から見ればそうかもしれない。・・・・じゃあそろそろ再開しようか、僕もそろそろ君の声に聞き飽きたから」
「・・・・」
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