魔法高校編Ⅷ

「明!」

「稲田こっちだ」


赤い髪をした少女が5人のいる机へと向かってきた。


「えっとこの方は」

「やだなあ、この方なんて言い方はよしてよ私はあんたと同い年なんだから、透」

「私のことは琴って読んでね」

「・・・・稲田はなんで俺の名前を」

「知ってるのかってこと?」

「・・・・それはだってあんたは有名人だもん、色々とね」


そう言われて透は全員の方を見た。

四人は頷いたりして透の方を見た。


「でしょっ」

「・・・・」

「それより稲田、飯は?」

「私はパン買ってきた、これ」


彼女が持ち上げた袋には大量のパンが入っていた。


「そんなに食べるのか?」

「なあに?なんか文句でもあんの?」

「いや、なんでも」


稲田は頬を膨らませながら質問した明を睨みつけた。


「まあいいわ、えっと私はここに座っていい」

「どうぞ座って」


稲田が座ろうとした空いていた椅子の隣に座っていた雫が答えた。


「私は宮咲雫、よろしくね」

「よろしく」


他の全員もそれぞれ自己紹介をした。


======


「そういえば明、U式はどんな授業をしてるんだい?」

「まあ普通の学校と一緒だ、違うところと言えば魔法分析の授業や構築式に関する授業があるくらいだな」

「そうなのか、意外とこちらとも変わらないんだね」

「そうなのか?」

「違うのは魔法の実技があるくらいなんじゃないのかな」

「実技か・・・・なあ、魔法って使う時どんな感じなんだ?」


尋ねられてその場にいた全員がどう答えていいかわからなかった。

光希は顔をしかめた。


「改めて聞かれると難しいな」

「そうなのか?」

「僕たちも魔法を使う時に一つ一つの干渉を細かく理解しているわけじゃないんだ」


そこにパンを咥えた稲田が入ってきた。


「ほおふは?はほうほははににはっへ」


パンを食べ終えてもう一度言った。


「透は?魔法を破壊したって聞いたんだけどそれって魔法の演算なんかを全部理解してないとできないんじゃない?」

「確かにそうだね」

「ねえ、教えてよ」

「私もあれ、どうやったのか知りたい」


突然、雪の声が入ってきた。


「えっと、あなたは?」

「私は真森雪、よろしく」

「・・・・」


いきなり現れた見知らぬ彼女に全員が静かになった。


「彼女は俺と光希の実技の授業のチームなんだ。じゃあ今日の放課後にやってみるか、場所は実技場でいいか?」

「あそこって借りられるんだっけ?」

「らしいな、それは俺がやっておくよ」

「ありがと、じゃあまた放課後にね。次は移動教室なんだからあんたも行くよ」


稲田は明の腕を強引に引っ張って食堂を後にした。


======


「遅かったなお前たち」


七人が実技場に着くと真森直子の声が聞こえた。


「すみません、遅くなってしまいました」

「先生、お時間を取っていただいたのに申し訳ありません」


雫と透が謝ると真森は。


「気にするな」


そう言って透の耳に口を近づけて小声で言った。


「さっきの約束したこと忘れてないだろうな?」

「ええ、ですから安心してください。先生」


囁かれて彼女は体一瞬震わせてすぐに元の体勢に戻った。


「ほら行くぞ」


少し赤く染めた頬を膨らましながら彼女は近くに設置された台に手を置いた。

目の前の分厚い巨大な鉄柵は上下に開き始めた。


======


「雫は攻撃魔法の準備を頼む」

「わかった」

「光希、合図を頼む」

「分かったよ」


二人の向かい合った間に光希が手を下ろした。


「・・・・始め!」


勢いよく振り上げられた彼の手、それと同時に魔法使用に伴ってUQ粒子が大量に移動して発生した空気の流れがその場にいた全員の肌をうった。


「これが魔法陣」


雫が空中に作り上げた一つの芸術とも言える美しいその形に思わず稲田と明が言葉を漏らす。

だがそれを止めるようにガラスの破れたような音がして魔法陣が空間に消えていった。


「一瞬で魔法が、あの時見たのと同じで魔法陣の核すら残っていない」

「魔法の破壊って難しいのか?」


驚く光希の横で普段魔法を見慣れない明がいった。


「すごいなんてことなってもんじゃない、今透がやったようなことをできるのは日本にも十数人しかいないんだ」

「そうなのか!」

「ああ、今の魔法破壊をやるには発動された魔法を分析してそれに最適化された魔法を発動して破壊しなければならない。簡単に言うとその場その場で対抗魔法を作らなければならないってことかな」

「・・・・やっぱり見ただけじゃ魔法を使ってるのはどういうことかわからないな」

「そうね」


稲田と明は互いに見合わせながら言った。


「じゃあ体感してみるか?」

「できるの?」


透は明の後頭部に手を当てた。

反対の空いている手のひらには魔法で作り出した発光体を浮かべた。


「気分が悪かったりはないか?」

「大丈夫だ」

「じゃあ演算能力を増やしてくぞ」


球体状の発光体の光度がだんだんと上がっていく。


「まだ行けるか?」

「大丈夫だ」

「頭痛を感じたら知らせてくれ」

「わかった」


白色だった発光体に次は色がついた。

赤、青、緑、光の三原色。

その色が次々に切り替わり七色の発光を見せた。

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