魔法高校編Ⅵ

「誰だお前」

「・・・・」


透と向かい合ったやつは黙ったままだった。

運動用の服をきてフードを深く被り顔は仮面で覆っている。

体格は男と推測できるほど肩幅が広く、服の袖から漏れた手首には筋肉が見える。

透の青い目が薄く発光した、それはUQ粒子の情報が書き換えられたとき、すなわち魔法を発動させた時に発せられる微弱なものだった。


魔法で複数の効果を体にほどこしているな、身体能力を強化、体の表面には何か魔法が・・・・。

触れて見なきゃ分からないか。


透と仮面の男は一定の距離をとりながら様子をうかがいあっている。

男は突如として懐から銃を取り出した。


マジックストック!

ここでどれだけの魔法を使おうとしているんだ。


仮面の男はそれの引き金を引いた。

街灯の白い光だけで照らされていた地面に巨大な魔法陣が現れた。


魔法破壊、いや間に合わないか。何かもっと短時間で発動できる・・・・。


透は構築した魔法を消滅させた。

そして珍しく楽しそうな笑みを浮かべた。


発動する時間なんて関係ないか・・・・。


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「魔法の構築を止めるなんて何を考えている」


キャスター式の椅子に腰をかけた少年、という

より幼年だろうか。見た目は8歳の男の子だ。

そして画面に映し出された映像を見ている。

それは透と仮面の男が二人で向かい合っているもので、あの場の近くの街灯につけられた防犯カメラからのものだった。

そこに映った透は地面に現れた魔法陣に触れた。

その直後に魔法陣からそれを囲むように激しい糸状の光が放たれた。

ガラスが割れるような音がし、それとともに魔法陣は破壊されて空間中に消えていく。


「何が起きた!一体何が起きたんだ!」


子供がかんしゃくを起こすように椅子に座った幼年はテーブルを叩いたりしている。


======


透は魔法陣破壊後に転移魔法を使って背後に周り魔法破壊を使用して仮面の男にほどこされた魔法をといた。

男はそのまま地面へと倒れ込む。

それを途中で支えて近くの壁に寝かせ、近くの地面に落ちていたデバイスを拾った。


「ねえ大丈夫⁈応答して!」


心配する水島の声がスピーカーでもないのに漏れ出していた。


「大丈夫ですよ」

「そう、よかった」


彼女の声には安心から来たため息が混じっていた。


「ですがまだ少し、あとでかけ直します」

「ねえちょっ」


透はおかまいなしに電話を切った。


「おい、見ているんじゃないか?」


透は防犯カメラに喋りかけた。


「・・・・・・・・・」


もしかしたらと思ったが違ったか、それともただ隠れているだけなのか・・・・。


そう考えながら街灯の高い位置についた防犯カメラに目を向けた。


======


先程まで体を暴れさせていた幼年は机から身を乗り出して画面に映りカメラ越しに自身のことを見ている透の姿を見ていた。

透を見つめる彼の目は何かに見惚れているようなものだった。


「やはり君は面白い、さっきの魔法陣を破壊したことも。ああ、早く君を僕の手の中に」


暗い室内、画面から発せられる薄い光が心酔した表情の幼年を照らしている。


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「これでいいな」


透は魔法を使って光を屈折させて撃退した仮面の男を透明にして姿を隠し、再び家への帰路へと着いた。

歩きながらデバイスを取り出して再び水島に連絡を始めた。


「やっとかけ直して来ましたか」

「すみません、遅くなりました」

「まあいいです。それより現状の報告を」

「つい先ほど仮面をつけた男に背後から襲われやむおえなく魔法を使用して撃退しました。処理隊の手配と防犯カメラの映像の消去をお願いします」

「わかった、すぐに手配するは。それより透君自身に怪我はない?」

「はい」

「まあそうよね、魔法打撃連隊のエースである君がこの程度のことで怪我なんてあるわけないか」

「そういえばそろそろ10時回るけどまだ外なんでしょ、一応高校生なんだから早く家に帰りなさい、雫さんも心配してるわよ」

「そうですね、では」

「ええ、おやすみなさい」


電話を切ると再び家へと歩き出した。


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見慣れた入り口の扉、家の敷地内から見る限り室内は電気がついていない。


「11時か、流石に雫ももう寝たか」


家に入ると廊下に取り付けられていた人感センサー式の電気がついた。

そしてそのままリビングへと向かった。

扉を開くとソファアの背もたれに寄りかかって眠る雫がいた。

彼女を起こさないように雫に扉を閉めて手を洗うため洗面所の扉を開けた。


「あっ・・・・」


と、小さな声を出したのは下着姿の永原だった。


「きゃあああああああああああああああああ」


その声とほぼ同時に透は洗面所の扉を慌てて閉めた。


「すまなかった、まさかその・・・・着替えているとは」

「い、いえ私も不注意でした」


扉を挟んだ二人の間にしばらく微妙な空気が流れた。

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