魔法高校編Ⅳ
「お前が創った?・・・・」
「はい」
「わかっているのか?お前が何を言っているのか、魔法を創るという行為は国のや民間の巨大な研究機関が行うものだ。それを民間人が一人でなんてできるわけがない」
「信じる信じないは先生の自由ですが話が終わったのでしたらもう帰ります」
そう言って透が振り返って実技場を出ようとしたところに真森が数発の“アイスクルース”を放った。
「俺でなければ死んでいますよ」
透は呆れた声で言った。
「数発の攻撃魔法を一瞬で破壊か、使用UQ粒子が多量なE-リターンではこの時点で莫大な演算量のせいで立つことすら出来ないはず、となるとやっぱり他の魔法か」
一人でぶつぶつと呟く真森をおいて透はため息をつきながら再び帰路につこうとしたがまた背後から彼女が彼に声をかけた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。お前とはまだ話したいことがある、だからちょっとおわああああああ」
離れた場所にいる透に彼女は走って近づいたがあと数歩のところで前へと体制を崩した。
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「大丈夫ですか?」
倒れた真森はいつのまにかとおるの膝の上にいた。
空に向いた彼女の顔についた目に透の顔が映った。夕方の赤い光に照らされた彼の顔は無表情だったが彼の顔についた青い目から真森は目を離せずに固まってしまった。
「大丈夫ですか?」
彼女が転んだ時に唇を噛んで出た血を優しく拭きとりながら顔を近づけて透は再び膝の上の彼女に尋ねた。
「えっ?・・・・あ、うわあああああああああ」
彼女の顔は全体がすぐに真っ赤になり慌ててそれを隠すように両手で覆った。
私は何を考えているんだ、ただの生徒なのに顔が近すぎてつい思ってしまった・・・・、こんなふうに男を見たのはいつぶりだろう。
そう思いながらも顔を覆った両手の指と指でできた少しの隙間から透の顔を見た。
それよりどうにかしてここから離れないともう心臓が持たない。
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「先ほどは助けてくれてありがとう、助かった。その上帰る準備が終わるのを待っていてもらってしまった、すまない」
そう言って人がいなくなった学校の校舎から出てきたのは長いスカートに可愛らしい色の服を着た真森直子だった。
授業の時や先ほどまでの雰囲気とはまるで違う。
「いえ、そこまで待っていませんのでお気になさらず。それより早くいきましょうか」
「・・・・・・・・・・・・」
「先生?」
「あっ、ああそうだな・・・・行こう」
真森は少し頬を赤くし、後ろにいる透の方に視線を向けながら前を歩いた。
夕方に空はまだ赤く、それによって周囲もかすかに赤くなり彼女の頬が赤いことは近くで見なければわからない。
「そういえば先生、今からどこに向かうんですか?」
透の質問に何も考えずにいた真森は急いで頭をフル回転させた。
しまった、転んだ時に支えられて見たあいつの顔が頭にちらついて何も考えていなかった。どうする、何か場所は・・・・。
考える彼女の視界に近くの不動産屋の看板が目に入った。
「わ、私の家はどうだ!」
「・・・・」
言われた透は何も言わなかったのではなく、ただなんと返したらいいかわからなかったのだ。
沈黙の後にそれを言った彼女自身も気がついたらしい。
「え、いや、今のはその」
彼女は耐えきれずに透の視線から顔を隠した。
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「ここが真森先生に家ですか?」
「そうだ」
自分から言ってしまい引くに引けなくなった真森直子は自宅へと透を招いていた。
「とりあえず入ってくれ」
「わかりました」
現代風で二階建ての一軒家の扉を真森が開き透が先に中に入った。玄関にはすでに一足靴が置かれてい
た。
玄関近くには二階への階段があり左にはリビング、その奥にはキッチンがある。
「荷物はその辺りに適当に置いてくつろいでいてくれ」
そう言って真森は廊下に出て他の部屋へと向かっていった。
透は食卓の椅子に座りつい癖で室内を観察してしまった。
綺麗にされた室内、整えられた洗い物に綺麗な花瓶の花。失礼かもしれないがどれもあの先生からは想像ができない、となるとこれは・・・・。
透が少し失礼なことを考えていると彼女が戻ってきた。どうやら服を着替えてきたらしい。
真森は透の向かいの椅子に座った。
「君は・・・・そういえば名前を聞いてなかった、教えてくれるか?」
「はい、神座透です」
透か、いやここは流石に教え子である以上こいつだけ下の名前というのも・・・・。
彼が名前を名乗っただけで真森は悩み黙り込んでしまった。
「先生?」
「えっあっどうした透ではなく神座」
「なぜ先生は俺を先生の自宅に連れてきたんですか?話なら学校でもできたのでは?」
「確かに、確かにそうだがその・・・・」
真森は透から視線をそらしたがそれを制するように透が彼女の頬に触れて顔を持ち上げた。
「ここに花びらがついてますよ」
耳の付近にある髪の毛についた桃色の桜の花びらを優しく取ってゆっくりテーブルの上に置いた。
「先生、ぼーして大丈夫ですか?」
真森の耳に口を近づけて透は言った。
「ひゃっ」
変な声を上げ彼女は急いで体を後方にずらした、すると椅子に座ったまま体制を崩してそのまま右後方に椅子ごと倒れ始めた。
彼女は目を瞑った。
だが少ししても彼女の耳に椅子が倒れた音は聞こえず、彼女の体に地面に倒れる衝撃は何一つ感じられなかった。
「大丈夫ですよ、目を開けても」
またしても彼女の視界は天井に向きそこには透の顔があった。
椅子の倒れた音がしなかったのは彼がそれを反対の手で抑えていたからだ。
「すまない、またしても神座に支えられてしまった。今起き上がる」
「少しこのままでいてください、俺からの質問が終わるまで」
真森は少し迷いながらも返事をした。
「わかった」
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