魔法高校編Ⅲ

「いったい何が起こったんだ!」

「魔法が壊れた?」


光希と雪が他のものと同様に今の現象を理解できていない中で今の事象を引き起こした透とそれを見抜いていた雫だけが冷静で、その場に溶け込んでいた。


「お前ら何をしてる!魔法を勝手に使うなといったはずだ。それに同級生に対して攻撃魔法なんてお前は頭がどうかしているのか!」


遠くから忘れ物を取りにっていた教師の真森の怒鳴り声が響いた。

魔法を使用した2人のところに行くと雷撃を放った睦月に胸ぐらを掴んで地面から少し持ち上げて睨みつけた。


「授業は一度中止だ、お前ら二人はこのまま私について来い!それと誰かこの現場を見ていた奴を・・・・おーいお前、お前だ」


そう言って真森は透のことを指さした。


「俺、ですか?」

「ああ、だって最初から見てただろ」

「・・・・わかりました」

「よし、じゃあついて来い。それ以外の奴らは教室に戻って自習でもしてろ」


真森は2人の背中を押して前へと進ませた。


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「話は以上だ、さっさと帰れ」


教室内で真森から魔法使用に対する注意を受けていた二人は力強く、不満をぶつけるかの様に扉を開いて出ていった。


「では自分も」


透み頭を下げて二人同様に教室を出て行こうと跳ね返った衝撃で閉まりかけた扉を開いた。


「ちょっと待ってくれ、お前とはもう少し話したいことがある。いいか?」

「わかりました」

「ありがとう」


透は椅子に座りかけたが教室から出て行こうとする教師を見て声をかけた。


「あの話は?」

「少し歩きながらでもいいか?」

「わかりました」


ゆっくりとした足取りで透を連れて真森は下駄箱へと向かった。


======


靴を履き替えて外へと出て歩き出した。


「どうだ学校は?友達とかは?」

「まだ初日なので、ですがいい友人になれそうなのは何人かいます」

「そうか、それはよかった」


外は夕方の赤い光に照らされている。

真森は透の前を歩き、いつのまにか二人は先程の件の起こった現場である第二実技場に着いた。


「それで話とは何でしょうか?」


真森は透の問いに言葉を返さずしばらく無言のままで透が立ち止まった地点から少し離れたところまで行き止まった。


「先生?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


少し長い沈黙が続いた。


「先生」


透がもう一度呼ぶと真森は瞬時に振り返り透に向けて攻撃魔法、“アイスクルース”を発動して鋭く尖った氷を放った。


「危ないじゃないですか、いきなり攻撃魔法なんて」

「でも当たらなかっただろ」


透は先ほどと同じように発動された魔法を空中で分解して攻撃を放った真森の方を睨みつけた。

教師の真森は透を見ながら不気味とも言える表情を浮かべていた。


「発動後の魔法を破壊する技術、こんなことは私にはできない、というかこの国に今の魔法破壊の技術を持っている人間はおそらく月華の十二家の関係者の十数人と言ったところじゃないか?」

「そうですね」

「でも君は今それを使うことができた、それはなぜだ?」


尋ねる彼女の不気味で意地悪そうな表情はまだ変わらずに残り微笑んで透を見ていた。


「・・・・・・・・」

「私が考えている可能性は3つだ。まず一つ目は君の才能がずば抜けているもしくは奇跡的な何かで発動された魔法を破壊した、2回連続で。まあ可能性は低いだろうが」


そう言いながら指を3本立てた手を前に出して指の一本をたたんだ。


「二つ目は私と睦月が魔法の発動か展開を失敗した場合。だがこれもない、睦月は絶対とは言えないが今魔法を使ったのは私だ、失敗したら自分がわかる。だからこれもない」


また言い終えると二本目の指もたたんだ。


「そして最後の三つ目、君が月華の十二家の関係者である可能性。どうだ?この中に君は当てはまるんじゃないか?」


最後に残った人差し指を彼女はちらりと見た。


「確かに俺は魔法破壊が使えます、そこは認めましょう。ですが真森先生の想像にはいくつか違う点もあります。まず一つ目、俺は月華の十二家とは関係がありません。ただの親がいない一般人です」

「っ・・・・そうか」


彼女の表情が申し訳なさそうなものに変わった。


「二つ目です、確かに先ほど魔法破壊を使うことができると言いましたが先生が言っているそれは“E-リターン”のことですね?」

「そうだ」

「“E-リターン”とは発動された魔法のUQ粒子に対して外部からさらに大量の魔法力で負荷をかけることによってUQ粒子自体を破壊する魔法です」

「その通りだな、一年生でここまで知っている奴はあまりいない。さすがと言ったところか」


透は話を続けた。


「俺が使ったのはそれではなく“E-イレイス”ですよ」

「・・・・聞いたことがないが、もしかして私をからかっているのか?」


真森は少し考えてからまたもや意地悪そうな笑みで答えた。


「いえそんなつもりは、それに聞いたことがないのは当たり前でしょう」

「なぜだ?」

「俺が創ったからですよ」


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