魔法高校編Ⅱ

一限終了のチャイムが鳴り教室内には友人と話しているものもいれば寝ているものも、様々な生徒がいる。

その教室内で雫と美織の二人は部屋の後方で話していた。


「すごい緊張しました」

「確かに初めての授業は」

「いえ、そういうことではなく」


永原は雫に耳に口を寄せて小声で言った。


「周りの方々がDS式の方ばかりでその中で私だけU式なので」

「そういうことね、まあ何かあっても私たちがいるから大丈夫よ」

「それはわかっているんですが・・・・」

「今からそんなふうに考えてたら気がもたないわよ、これからはまだまだ長いんだから。それに次は魔法の実技授業よ」

「ああああああ、そうでした・・・・」


永原は顔をうつむかせながらため息をついた。


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チャイムとともに第二実技場に集まった生徒たちの前に教師が現れた。


「私が魔法実技の担当の真森直子だ、よろしくな」


その女性教師は白髪の長い髪をしていた。

言葉使いは少し男らしい感じだ。


「この授業では名前の通り魔法を使用して授業を進める。その中でお前たちが魔法を使うこともあるが、もしそこで何らかの脅威になりうる可能性があればその時は私が力尽くで止める。そのことは理解してくれ。まあ話はこれぐらいにして・・・・さっそく授業を始める。周りで三人の組を作ってくれ、それがこれからこの授業で一緒に行動する仲間になる」


「透、どうだい?僕と」


光希が透の横から声をかけた。


「ああ、よろしく」

「よかった、あと一人だけど誰か・・・・」


二人は周囲を見渡した。


「ね、ここってまだ二人?」


2人の背後から少女の声が聞こえた。

振り返るとそこにはこの授業の教師と同じような白髪をした少女がいた。


「あいてるけど?」

「よかった、私一人なんだけど入っても大丈夫?」

「ああ」

「ありがとう」


一人知らない他人がいるというこの状況は普通の人間である光希には少し耐え難いものだった。


「組ができたところから、うーん・・・・少し自己紹介でもしててくれ私は少し忘れ物をとりに行ってくる」


光希だけが感じているその微妙な空気感を透が崩した。


「名前は?」


白髪の少し背の低い少女に尋ねた。


「真森雪」

「真森?、もしかして真森さんはこの授業の先生、真森直子先生の親戚?」

「親戚というより直子の妹が正しいと思う。」

「姉妹か、だから魔法の模様が似てるのか」

「えっ、うん。そうだけど・・・・どうして魔法の模様が似てるなんてわかったの?魔法の模様は人で言う指紋みたいなもの魔法を使わないとわからないのに」

「2人から漏れ出した残留粒子、それを逆演算するとある程度の模様は見える」

「へー知らなかった。私も覚えておこうかな」


空を見ながらそうつぶやいた白髪の少女、雪を透は鋭い目で見ていた。


この少女の模様は似ている、真森先生だけじゃなく2日前の爆弾犯の模様と。


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透は慎重に真森雪のことを観察した。


魔法の模様はあの犯人のものと似ている、だが見たところ犯人の身長は170前後だが彼女は150程しかない。

まあ偽装魔法をほどこせば俺の見た犯人像に近づけない訳ではないが。

それにしても、・・・・。


と、考える透は頬に何かが触れるのを感じた。

考えるのに集中しすぎて下げていた視線を正面に戻した。

彼の目の前には真森の顔があり、彼女の両手は透の頬に触れていた。そしてだんだんと透の顔に彼女の顔が近づいていき透の青い目を覗き込んだ。


「どうした真森?」


透は落ち着いた声で目の前の少女に尋ねた。

目の前の状況に光希は思わず目を逸らして頬を赤く染めた。


「貴方の目綺麗、晴れた日の青空みたいに澄んだ色・・・・」

「はいっ!ちょっと一回離れて!」


耐えきれなくなった光希が二人の間に手を入れて強引に引き離した。


「今は先に自己紹介の続きを、ね!」

「そうだね、じゃあ私はさっき名乗ったから次は?」

「じゃあ僕から、とは言ったものの名前ぐらいかな。僕は伊多光希、よろしく」

「うん」

「俺は神座透、よろしく」

「よろしく」


真森は二人に片手ずつ差し出して握手を交わした。


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「そういえばお姉ちゃん帰ってくるの遅い」

「さっき忘れ物とか言ってたからまだなんじゃ」


この時の透の視線は二人とは別の方に向けられていた。


「お前さっきから俺のことを見下すような態度をとって、何様のつもりだ!」

「魔法力のない人間を見下して何が悪い?」


だんだんと大きくなる挑発の声や怒鳴り声が光希と雪の耳にも入り二人は最初っから争いの場を見ていた透の方へとよった。


「これは今何が起こってるの?」

「言い争いかな、今は・・・・」

「片方は知らないけどもう片方は確か睦月家の・・・・」

「そう、睦月智也。今の日本に影響力を持つ月華十二家のうちの一つである睦月家の一人息子」

「彼が・・・・まさか僕たちと同級生だったのか、テレビとかでは見たことあったけどや知らなかったな」


「ねえ、今はそれよりあの二人を止めないと」


二人の会話を雪が止めて透と光希の注意を争う二人の方に向けさせた。

智也が魔法の構築を始めた、それに伴いもう一人の方も構築を始める。


「魔法力の低い愚民はこの場にはいらない」


構築を先に始めていた睦月から雷撃が放たれた。

相手はすぐに攻撃魔法の構築を中断させて防御魔法に切り替えたが間に合わず、相手はとっさに自分の顔を魔法から守るために覆った。


「何!」


魔法を放った睦月は突如として起こった現象に声を上げずにはいられなかった、自分の放った魔法が空中で粉砕されるという現象に。

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