第10話 夏実のヒモには……ならない! 絶対に、だ!
「え? なんかPVがすんごく伸びてる気がする⁉」
ノパソの画面をのぞいていた夏実が思わずそう叫んでいた。ライリーでは作品のPVが棒グラフになっているので、伸び方がよく見えるのだ。
確かに、バズっていると言ってもおかしくない状況だった。
『うまく、ハマったな。『小説家の野郎』から読者を引き抜こうぜ作戦が!』
「そんな名前だったっけ……?」
……まあ、作戦名はどうでもいいんだ。話し合う時に突然、ただいまより第〇回△△会議を始める、とか叫ぶみたいなものだ。みんな、やってることだろう?
バズっているのは現代ファンタジージャンルの『ダンジョン配信でうっかりカメラを忘れたらとんでもない映像が映っててバズった⁉』だった。やはりタイトルの「バズ」の字の効果なのか?
うどん転生、46日目のことだった。
これは『小説家の野郎』からうまく読者を誘導できた、というのもある。
他の2作品については、それぞれ4000PVに少し足りないくらいの微増とも言える状況だったが、この作品は現在、1日あたりのPVが8000から9000という、読者への感謝しかない状況なのだ。
実は、ライリーの「現代ファンタジー」というジャンルは本来、『小説家の野郎』では「ローファンタジー」というジャンルになる。
だが、オレはこの作品を「ヒューマンドラマ」というジャンルで設定したのだ。
……これはカテエラ――カテゴリーエラーのことで、ジャンル違いに作品を登録することを指す――ではない。
確かに現実世界と似た世界観で、ダンジョンがあって、配信なんかもしている。
だけど、その中で登場人物がわちゃわちゃと騒がしくする「ヒューマンドラマ」であることは間違いないのだ。
そういう「ヒューマンドラマ」を意識して書いている。むしろ、ダンジョンで戦う場面は少なく、大して無双と呼ばれる無敵状態にもなっていない。
だから、ジャンルは間違っていないのである。
ジャンル別に読者の数が違うというのは以前も説明していると思う。そして、読者が少ないジャンルを過疎ジャンルと呼ぶ。うむ。悲しい現実だ。
しかし、過疎ジャンルには作者にとって、とってもありがたい側面がある。それは、ランキングに載りやすいという点である。
イセコイ――「異世界恋愛」というジャンルが『小説家の野郎』では一番人気のジャンルで、読者も多くて、「総合ランキング」でもこのジャンルが上位にたくさん入っている。
そして、「ローファンタジー」というジャンルは、「異世界恋愛」と「ハイファンタジー」の次にくる3番目の人気ジャンルなのだ。
だから、そこで勝負をかけると、なかなか難しい。よわよわ作者はそんなところでは戦えない。
そこで「ヒューマンドラマ」のジャンルである。ランキング入りするためのポイントが格段に低くても大丈夫なのだ。
それでいて『小説家の野郎』はそもそもユーザー数が多いので、読者の絶対数が少ないという訳ではない。
しかも、主人公は転生させているので、もうひとつの「異世界転生・転移」のランキングも並行して挑戦できるのだ。
そこでも、「ローファンタジー」ではなく「ヒューマンドラマ」ジャンルでの登録なので、「異世界転生/転移〔文芸・SF・その他〕ランキング」での勝負となる。実はここが穴場だったりする。
実態として「異世界転生/転移〔ファンタジー〕ランキング」の日間(連載中)だと5位に入るためには1000ポイントくらいは必要なのだ。「ローファンタジー〔ファンタジー〕ランキング」でも5位になるには300ポイントくらいは必要になる。
それが、「異世界転生/転移〔文芸・SF・その他〕ランキング」では100ポイント足らずで5位に入る。もっというなら、「ヒューマンドラマ〔文芸〕ランキング」だと50ポイントで5位は固い。
今回、『小説家の野郎』での公開初日となったのは木曜日だった。この木曜日の3話更新で、82ポイントを獲得した。
このポイントで翌朝には「ヒューマンドラマ〔文芸〕ランキング」の日間(連載中)で3位に入った。同時に「異世界転生/転移〔文芸・SF・その他〕ランキング」でも5位だったのだ。
ここで重要なのは5位以上というランキングだ。『小説家の野郎』にはそれぞれのジャンルのランキングをまとめたページが公開されているがそこに載るのが各ジャンルの5位までなのである!
今回、『ダンジョン配信でうっかりカメラを忘れたらとんでもない映像が映っててバズった⁉』はランキングをまとめたページに2カ所で露出することになった。
それが金、土、日と続いて、日曜にはどちらの日間(連載中)でもランキング1位に君臨! それと同時に「総合ランキング」でも49位と、「総合ランキング」のページの1枚目の一番下の方に名前が出たのである。
この時点で、週間ランキングでもジャンル別では5位以上となって、なんと、『小説家の野郎』のトップページに露出することになった。まあ、ジャンル別ランキングなのでタブをクリックしないと見えない部分ではあるんだけどさ。
それでも表紙となるトップページの影響力は計り知れないものがある。
つまりは、バズったのだ。
しかも、その絶妙のタイミングでの、あとがきで「ライリーで先行しています」という誘い文句とは言い切れない誘い文句が見事に刺さったらしい。
結果として、ライリーでのPVが1日あたり8000から9000という状況が生まれた。これはうまくいったと考えられる。
しかも、読者の中に、作者読みと呼ばれる、気になった作品の作者のページへ進み、他の作品も読んでくれる最高の読者がいたらしい。
そのせいか、他の2作品もそれぞれランキングの20位前後に顔出しして、『小説家の野郎』でプチバズりが発生していた。
さらにはライリーで完結済みの『おコゲ転生』のPVが、完結以来、久しぶりに5000を超えるなどの波及効果もあった。未読だった読者が読み始めたのだろう。完結しているから安心してじっくりと読んで頂きたい。
1日の全体のPVは2万2千から2万3千くらいだ。なんというありがたい状況なんだ⁉
……ただ、『小説家の野郎』の方が、格段にPVが跳ねてるんだよなぁ。
あのPVがもし、インセンティブに影響するのであれば……。
まあ、それは言っても仕方がないことではある。ある程度、狙い通りにライリーへと読者を呼び込めたのだから、成功だと思うしかない。
『過疎ジャンルでも、ランキングの載れば、他のジャンルと同じところで紹介されるからな! 狙い通りだ!』
「さすがはケイちゃんだね。まあ、卑怯っていうか、セコいっていうか……うん。頑張ったね」
……ちょっと引っ掛かる部分がなきにしもあらず。だが、まあ、夏実もニコニコと笑っているのなら、どんなそしりも受けようではないか!
だが、このバズりはそれだけで止まらなかったのである……。
うどん転生、51日目。
ライリーが「ライリーセカンド」について、ついに情報公開に踏み切った。
新たに始まるサブスクとしての有料サイトだ。
ライリー運営としても絶対に負けられない戦いがそこにある。そして、その執筆陣として名を連ねるオレも……ペンネームのビワパパが、「ライリーセカンド」のアピールページにばっちりと掲載されていた。まあ、そりゃそうだ。
そこで注目されたのだろう。その日からまたグンっとPVが跳ね上がり、1日の全体的なPVが3万を超える日が続くようになった。多い日には3万5千に届きそうな日もあったのだ。
オレがライリーからの広告収入の分配で、家賃等を支払えるようになる日も近い……というか、そうならなかった場合、ある意味で夏実のヒモとなる日も……来るかもしれないのだ。
それだけは叔父としての威厳を保つためにも避けたい。まあ、もうすでにうどんだから威厳とかゼロかもしれないけどな!
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