第5話

あの、ホントすいませんでした…」

まぁ俺も最初連絡が来たとき驚いたしお互い様だ

「いやいや、全然大丈夫だから。 家の母さんのダル絡みは忘れて良いから。うん、ホントに。」

まぁ俺が事前に言っておけば、こうならなかった可能性は高…くもないような気もするが。

思い出したのか顔を青くして「は、はいホントにその節は…」とボソボソと喋っている。

「いや、まぁうん、なんかこっちがごめん。とりあえずお茶か何か持ってくるから。」「お、お構い無く…」

お構いなく、とは言ってはいるが、この状況でお構いしない方も酷なもんだとは思う。


「はい、これ飲んで落ち着き?」と麦茶を差し出す

「ホントに申し訳ない…。」とうつむきながら赤くなっている。

「家の親、あんなんだから。気にしたらダメだよ。」

「流石だね…坪井母、軽く遊ばれてしまった。」

なんかホントにごめんよ。

「とりあえずまぁ、気を取り直して昨日のをもう一回教えてよ。 」

多分集中出来ないとは思うけど、折角来てもらったんだ、教えてもらおう。


「う、うん。じゃあ、気を取り直して」

と必要な筆箱やらを出す。「えーと、ここがこうだから…」

こうしてしばらくすると、さっきの白川とは変わって、メガネを掛けた真剣なその横顔は凛々しく年上を思わせる雰囲気だった。席が離れており後ろだった事もあって、しっかりとメガネ姿を見たこともなく、新鮮で何となく良いなと感じる。

昨日の復習に引き続き、着々と問題をこなして行く。たまに休憩を挟み、分からないところは白川に教えてもらい、目標ラインの復習が終わり気づくと夕方になっていた。


「それじゃあ、とりあえず今日はこの辺で終わりにしようか。お疲れ様。」

出来なかった事をやり、流石にいつもより数倍頭を使ったからか、それなりに疲労感がある。

「ふーありがとう。今日の復習だけでもテストで十分な成果が発揮できそう。」

「そりゃあ良かったよ。」

時刻は午後6時、そろそろ夕飯の支度か。

そういや、明日のためにカレーの材料はあった気がする。

「ちょっと待ってて。」


部屋を出ててリビングへ向かうと、母親は書類をまとめている。

こう見えて一応、とある大学の法学の講師をやっているらしく、何らかの書類かノートパソコンを持ち歩いている場合が多い。

そして反抗しようという気が起こらない。恐らく反抗したとして、口で勝てる相手ではなく、正しさというベクトルであれば、最早足元にすら及ばないと分かっているからだ。

「母さん、そういや今日の晩御飯もう決めてる?カレー作ろうかと思ってるんだけど。」

折角これだけ教えてもらってるんだから、少しくらい恩を返してもバチは当たらないだろう。

「あら、二人で作るの?共同作業ねぇ。あんたカレーはちょっとうるさいからねぇ…。満足してもらえるんじゃない?にしてもあんた料理って年の割には攻めるねぇ!胃袋掴む作戦か!」

またこのおばさんは…共同作業は無視するとして

「違うわ!教えてもらってばっかりだから、折角だから何か出来ればと思っただけ。あと一緒にキッチンに立つかは分からん!とりあえず今日夕飯食べてくか聞いてくるから。」

「はいはい。たまたまカレーは明日頼もうと思ってて材料はあるから適当に使って良いからね。」


そそくさと部屋へ戻る。そうか白川は一緒に料理するだろうか、聞いてみるか。

「あのさ、良かったらなんだけど今日家で夕飯食べてかない?カレー作るんだけど一緒に夕飯食べてく?」

何だか別に変なことをしてる訳でもないのに、何だか緊張する。何で緊張するんだろう。

「え、いいの?ちょっと家に夕飯聞いてみる。」

と俺の謎緊張に対して白川は嬉しそうに部屋を出て、電話を掛けはじめた。

そもそも論、相手方にも夕飯があるし夕方6時になって聞くべきではなかったな、とも思ったが、そこは反省としておこう。


しばらくして白川は上機嫌で戻ってきた。

「大丈夫そう!こないだ話してたカレーでしょ?食べてみたかったから是非食べさせてよ。」

反応が良くて嬉しい。ここまで上機嫌な白川は中々珍しいな

「お、良かった。それじゃあ時間も時間だし、そろそろ作ろうかな。」

ドアを開けキッチンへ向かう。

「母さん、今から作るけど大丈夫?」

「いいよー、そういや勉強はある程度解決できた?飲み込み遅かったでしょ。ごめんね白川さん。」

「いえいえ、少しずつ解けてきてますよ。多分平均くらいは取れると思います。」

飲み込みが遅いことの、さり気ないフォローがありがたい…。

「ありがとね白川さん。」

母親は満足そうな顔をして、すぐ戻るといい自室へ帰っていった。


「助かってるよ、ありがとうございます。白川上皇。」

「いいけど何で上皇よ、そもそも漢字違うでしょ。まぁ…じゃあ料理なんだけどさ、あんまり上手じゃないけど手伝える所は手伝いたいから、一緒にキッチン居ていい?。」

「なんならそっちの方が嬉しいかな。なんなら手伝ってもらえるか丁度聞こうかと思ってた所。そういや白川は辛いの大丈夫か? 」

本人から言ってくれるのはありがたい。キッチンに移動し材料を冷蔵庫から出してゆく。

「うん、大丈夫。そんなお子様みたいなナンパする人に心配される筋合いありませんよー」あーもうそんな事言うと隣から…

「あら!あんたナンパもするようになったの!」

ほら見たことか「んもー!せからしいっ!!んなことしとらんわ!?てかナンパってむしろお子様しないし、味覚とそれ関係ある!?」


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