第18話 レベルアップ!
食後。
「なあ、菫」
「何よ」
「俺達、レベルアップ出来るかな?」
「ゲームみたいに?」
「そう、ゲームみたいに」
「瞬、何の話かしら?」
「姫、僕達、ゲームの世界では経験値に応じてレベルアップするんです」
「具体的には?」
「いろいろな数値が上がります」
「数値?」
「はい。攻撃力とか、防御力とか…」
「ほんまか? スゴイ便利やんか」
「そうなんです。この世界でもレベルアップが出来たら僕達の戦闘力は上がっていきます」
「もし、そうなら頼もしいわ」
「僕達はゲームの世界のように身軽に動けます。菫は魔法まで使えます。レベルアップ出来る可能性は高いと思います」
「どうすればレベルアップ出来るの? 経験値って?」
「戦闘を続けていれば自然に」
「じゃあ、俺達と剣の稽古をしたらいいんじゃないのか?」
デクが言った。
「そうですね。それでも経験値は上がるかもしれません」
「実戦でないとアカンのやったら困るで。そんなにしょっちゅう実戦をやってられへんからな」
「そうですね。では、皆さん明日から僕達の稽古の相手になってください」
「お安い御用や」
「瞬、レベルアップしたら、他にも何か良いことあるのかしら?」
「必殺技が使えるようになります。レベルアップする毎に使える技が増えます」
「技? それはスゴイわね」
「僕の場合、まず火炎剣や“かまいたち”が使えるようになるはずです」
「火炎剣って何?」
「剣を振るうと火炎が出て攻撃力がアップします」
「かまいたちは?」
「大風を起こして広い範囲の敵をズタズタにします」
「すごい! まるで魔法ね」
「魔法のようなものかもしれませんね」
「菫さんは?」
「シールドが使えるようになるはずです。広範囲で使える防御魔法です」
「広範囲って、どのくらいなの?」
「半径50メートル位だと思います」
「スゴイ!私達全員をカバー出来そうね」
「出来ると思います」
「そんな大事なこと忘れたらアカンで」
「すみません」
「ゲームでは私が防御しながら戦ってたもんね」
「そうだ。菫のシールドが無いと戦いにくいな」
「早く思い出してくれたらいいのに。私も忘れてたけど」
「戦闘中、なんか違和感はあったんだ。菫のシールドが無かったからだな」
「私が守らないと、お兄ちゃん、スグに飛び出しすぎてゲームオーバーになるもんね」
「そうだな」
僕は苦笑した。
「お前達兄妹は、そんなことが出来るようになるのか?」
桜が言った。
「多分ね」
「それは……人間にとっては希望の光じゃな」
「他人事みたいに言うんだな」
「私は既にゾンビだからな。他人事だ」
「だったら、なんでここにおるねん?」
「瞬に興味があるからだと言ったでじゃろう? 興味が無くなったら去る」
「それも冷たいな」
「ハッキリさせておいた方が良い」
「俺はこんなに桜に噛まれても黙っているのに」
桜は時々、僕の腕をかじる。
そんな時、菫は冷ややかな目で僕達を見る。
「瞬の腕はかじっていて心地よいのじゃ」
「なんだよ、それは」
「お兄ちゃん、かじられてるのに楽しそう」
「楽しくはないけど……まあ、別に気にはならないな」
「……変態」
「ボソッと言うな」
「頑張れ、瞬。レベルアップとやらで、スグに私を越えられるかもしれんぞ」
「でも……桜は強いから……」
「いや、私にはレベルアップする機会が無いからな」
「こんなに強いじゃんか」
「成長しないからな。多分、私の強さは今のまま変わらないだろう」
「いやいや、桜に追いつくにはしばらくかかるよ」
「何故、そう思う?」
「一緒に狩りをしていて、そう思った」
「まあいい、瞬も菫も精進しろ。ゾンビになっても面倒は見ないぞ」
「ゾンビになったら面倒見ろよ」
「ゾンビになったら興味が失せる」
「桜って結構ワガママだな」
「お兄ちゃん、今頃何を言っているの?そいつ、最初からワガママじゃん」
「そう言えば、そうだな」
「瞬、明日から稽古をお願い。次の実戦までにレベルアップしてちょうだい。みんなの命に関わることかもしれないわ」
「わかりました、姫。出来るだけのことはします」
翌日から、瞬と菫の日課に“稽古(鍛錬)”の時間が加わった。
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