第11話  狩りの危険!

 朝、みんなで僕の血で乾杯。僕の血をゾンビ化の予防薬として飲む。朝から血を流して貧血気味な僕に、姫が回復魔法を施してくれる。それから、僕は狩りへ。


 森の奥に入り込む。


 痛い!


 と思ったら、ゾンビ化した蛇に足をかじられていた。

 僕は蛇を剣で両断にした。

 蛇は苦手だ。

 さあ、獲物を探そう。


 しばらくすると、ゾンビ化したウサギを見つけた。

 俊足で近付き剣の鞘で殴った。ウサギは気を失った。

 僕は兎をぐるぐる巻きに縛った。


 そして今度はゾンビ化した鹿を見つけた。


 一瞬。


 鹿は振り向く暇も無く頭を強打されて倒れた。

 鹿もぐるぐる巻きに縛る。


 この世界の僕は、まるでスーパーマンだ。

 こんなに素早く動けるなんて。

 正直、僕は調子に乗っていた。

 自分の力を自覚するほど気分が良くなる。


 それから、川へ向かった。

 ワニがいるということだが…。


 いた。


 一匹のワニがゆうゆうと浅瀬で休んでいる。

 ゾンビ化はしていないようだ。

 僕は捕まえることにした。

 皆の食料になるからだ。

 僕は浅瀬まで跳んだ。そして、ワニの頭部を刺し貫いた。

 良い剣だ。本当によく斬れる。

 ワニを殺したのは、ゾンビ化していないので即食料にするためだ。


 僕は、ウサギと鹿とワニを引きずって帰った。

 僕は皆から歓迎された。


「今日は大量やな」

「重かっただろう?」

「いえ、僕、この世界ではあまり重さを感じないんです」


 本当に、重い物を持っても平気だ。

 やっぱり、ここでの僕はスーパーマンだ。

 自己陶酔してしまいそうになる。

 自然と笑みがこぼれる。


「そうか。じゃあ、実験の続きをするか」

「ええ」


 僕は台の上にウサギを置いた。


「皆さん、離れていてください」


 また、瞬の血を飲ませる。

 しばらくすると、正常化した。

 リスと魚に続き、ウサギも治療できるようだ。


「ただのウサギに戻りました」

「リスとか、小動物には有効やねんなぁ」

「次は鹿です」


 鹿にも血を飲ませる。

 しばらく待つ。

 もうしばらく待つ。

 あと少しだけ待つ…。


「ダメです!ゾンビ化したままです」

「そうか……残念やな」

「わかりました、小さな生き物はゾンビから生身の体に治せますが、或る一定以上大きな生き物には、瞬の血の効果が無いみたいですね」


 姫が実験の結果をまとめた。


 ガッ!


 ジンが鹿の頭を矛で叩きつぶした。

 その時、僕は目眩と寒気に襲われた。

 その場に倒れる。


「瞬、どうしたの?」

「急に目眩と寒気が…」

「どうしてかしら?」

「お兄ちゃん!」


 菫が抱きついてきた。

 菫が僕の額に手を当てる。


「お兄ちゃん、すごい熱だよ!」

「瞬、原因はわかる?」

「そういえば!蛇に噛まれました」

「毒蛇だったのね」

「僕、死ぬのかなぁ」

「お兄ちゃん!」

「瞬、回復魔法を施します」

「お願いします。菫を置いていけません」

「お兄ちゃん、しっかり!」

「菫さん、どいて」

「姫、お願いします」

「……」


 姫が呪文の詠唱を始める。

 僕は次第に楽になっていった。

 詠唱が終わると、僕はスッカリ健康になっていた。


「瞬、どう?」

「治ったみたいです」

「森の中で倒れなくて良かったわ」

「そうですね。森の中で1人で倒れてたら死んでいましたね」

「お兄ちゃん、どうして蛇の毒に気付かなかったの?」

「ゾンビ化した蛇だったんだ。俺にはゾンビウイルスの抗体があるから大丈夫だと思った。毒のことは気付かなかった」

「お兄ちゃん、だから調子に乗るなって言ったのに」

「ごめん、菫。もう、大丈夫」

「でも、さっきの“菫を置いて行けない”という台詞は良かったわよ」

「いい心がけだろう?」

「そうね。お兄ちゃんは私を置いて死んじゃダメなの」

「わかってるよ」

「今度、調子に乗ったら本気で怒るからね」

「わかった。ごめん」


 僕は自己陶酔する気分じゃなくなった。気を引き締めた。


「瞬、気を付けてくださいね」

「はい。ありがとうございました」

「とにかく無事で良かったやんけ」

「ああ、一時はどうなるかと思ったけどな」

「……ゾンビ以外にも危険はある」


 珍しくジンも言葉を発した。


「毒蛇にやられるとは思っていませんでした。これからは、油断しないように気を付けます」 

「瞬も無事やったことやし、今日はワニでも食おうや」

「ポックル、ワニの料理は出来ますか?」

「はい。料理できると思います」

「私も手伝います」

「…あ、わ、私も…」


 菫の方から姫達に近付いた。

 瞬は嬉しくなった。



 他の人とも気楽に話せるようになれば、きっと菫は楽になる。


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