第7話  狩り。森の中へ!

「じゃあ、森の中に入ってみます」

「瞬、これを使いなさい」


 エリカが綺麗な剣をくれた。綺麗な銀色の長剣。剣を美しいと思ったのは初めてだった。西洋の剣。鞘もキラキラ光って、僕は、宝物を貰ったかのように嬉しかった。


「こんなに素敵な剣をもらってもいいんですか?」

「ええ、どうぞ」


 僕は剣を抜いてみた。

 刀身も綺麗な剣だった。長さも重さもちょうどいい。


「武人だった父の形見です」

「そんな貴重なもの、受け取れません」

「いいんです。使って貰った方が剣も喜ぶでしょう」

「わかりました。では、使わせていただきます。ありがとうございます」

「はい。ご武運を」

「じゃあ、いってきます」

「気を付けてくださいね」

「お兄ちゃん、私は?」

「森の入口で木の実でも採っていろ、森の奥には入ってくるなよ」

「…わかった。森の奥で倒れても助けに行けないわよ」

「大丈夫だ。心配するな」

「別に、心配してるわけじゃないけど…」


 僕は森の奥深くに入って行った。

 早く新しい剣を使ってみたい。


 最初に出くわしたのはゾンビ化した猿だった。

 突然、木の上から飛び降りて襲いかかってきたのだ。

 僕は猿を一刀両断にした。

 すごくよく斬れる剣だ。

 僕は剣の切れ味に満足した。


 しかし、獲物を見つけないといけない。

 手ぶらで帰ったら、きっとガッカリされるだろう。

 逆に獲物を持ち帰ったらありがたがられるに違いない。

 僕と菫の居心地を良くするには結果が必要だ。


 見つけた。

 大きな猪がいた。

 ゾンビ化はしていないようだ。

 僕は高速で猪に襲いかかった。

 猪がこちらを振り返った。

 僕は猪の頭を打ち砕いた。

 大猪は即死した。


 やはりここはゲームの世界だ。

 元いた世界なら、僕はこんな活躍は出来ないだろう。

 初めての狩りの獲物としては充分だ。

 

 森の中は道が無いので迷う。

 僕はちゃんと、歩きながら木に傷をつけて進んでいた。

 だから帰り道に迷うことも無かった。

 僕は猪を背負って皆のところに戻った。

 真っ先に駆け寄ってきたのは菫だった。


「うわ、猪!」

「ラッキーだったよ」

「あまり調子に乗らない方がいいわよ」

「そうだな。気をつける」

「ねえ、お兄ちゃん」

「なんだ?」

「どうしてお兄ちゃんはいつでも正直に話すの?」

「正直?」

「正直というか、素直というか…」

「嘘をつく理由も無いからな」

「単純なんだね」

「何だって?」

「ううん。羨ましいって言ったの」


 皆、猪に大喜びだった。


「肉なんて何年ぶりやろう?」

「とても美味しいわ」

「瞬、よくやってくれた。これからも頼むぞ」

「任せてください」

「ポックル、よく料理できたな」

「肉をさばいたのは久しぶりです」


 皆、肉に飢えていたのだ。


「瞬、ゾンビ化した獣には遭遇しなかったの?」

「ゾンビ化した猿に襲われました」

「お兄ちゃん、猿に襲われたの?」

「ああ、一刀両断にしたけどな」

「調子に乗っていると、いつかひどい目に会うわよ」

「やっぱり俺達は森の奥に行けないな」

「やめておいた方が良いと思います。かすり傷でも致命傷でしょうから」

「瞬の加入で食糧事情に関しては改善されたな」

「これからは肉を食えるんやなぁ」

「夢みたいだ」

「魚はどうですか?」

「ダメなんだ。ゾンビ化している魚もいる。噛みつかれたら終わりだ」

「近い内に、魚を獲って来ましょうか?」

「魚か、魚もええなぁ」

「お魚も、何年も食べていないわね」

「食料は植物だけだったんですか?」

「ああ。植物はゾンビ化しないからな」

「植物だけでは味気ないが、ポックルが料理上手なので助かっている」

「確かに、植物だけでも美味しかったです」

「そうだろう。ポックルは料理の名人だからな」

「いやあ、それほどでもないですよ」

「しかし、猪一頭でもこの人数ではスグに食べ終わってしまうな」

「これから、もっと沢山の獲物を獲るようにします」

「瞬、無理はしないでね」

「はい。でも、もっとお役に立ちたいので」

「どうせ私は木の実しか採ってこれないわよ」


 菫が不機嫌になった。


「何を怒ってるんだよ」

「べつに、怒ってないけど」

「菫さん、きっとあなたの魔法が必要なときが来るわ」

「そうや、今は小さいことを気にしたらアカン」

「ジン、お前も何か言えよ」

「…ああ、美味いな」



 ジンはやはり寡黙だった。







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