第4話  旅するエリカ達!

「食事が出来たわよ」


 姫が笑顔でみんなに声をかける。姫は身長165センチくらい。スタイルは……ナイスバディだ。そして、何より顔がいい。かなりの美人だ。金髪がよく似合っている。そして、おだやかでソフトな雰囲気でみんなを癒やしてくれる。僕は、姫のファンになっていた。


「皆さん、集まってください」


 エリカとポックルの声に男達が立ち上がった。


「あなた達も」


 エリカが言うと、


「お兄ちゃんも一緒じゃないと嫌!」


 菫が言った。


「デク、瞬をこちらへ」


 デクと呼ばれた大男が縛られている僕を皆の所に運んだ。

 随分、手荒だった。僕は引きずられていった。


「お兄ちゃんに乱暴しないで」

「どうせゾンビになる奴だ」

「デク、今は人間ですよ」

「へい……」


 皆、姫の言うことには逆らわない。


「さあ、食べましょう」


 見慣れない料理だった。というよりも見慣れない食材だった。


「お兄ちゃんは縛られて手が使えないから、私が食べさせてあげる」

「頼む」

「しょうがないわね」


 菫が少しだけ笑った。

 ちなみに、使うのは箸ではなくナイフとフォークだった。


「美味い」

「そうだね。美味しいね、お兄ちゃん」

「自己紹介がまだの者もいますね」


 エリカが言った。


「そちらがクラマ」


 目つきの鋭い男だった。


「クラマや。俺も高速剣士や」

「こちらがデク」


 大男だった。


「デクだ。大斧を使う。俺は怪力の持ち主だ」

「それからジン」


 寡黙で長身の男だった。


「…ジンだ。矛を使う」

「そしてポックル」

「ポックルです。僕は戦闘要員ではありません。食事を作ったり、洗濯したりします」


 少年が言った。


「私は回復魔法や防御魔法が得意です。回復魔法を使える者は極めて少ないので、私は“姫”と呼ばれています。そう言えば、瞬は傷だらけですね」

「歯形がいっぱいです」

「治しましょう」

「いいんですか?」

「構いません」


 エリカが呪文の詠唱を始めた。

 僕は心地よい光に包まれた。


「はい、終わりました。肉体的な傷を治し、精神的疲労を回復させました」

「スッキリしました。ありがとうございます」

「姫、ゾンビ野郎に回復魔法はもったいないですぜ」


 デクが言った。


「まだ人間だよ」


 僕が言った。


「あなた達はゾンビ達と戦えるんですね?」


 ポックルが言った。


「はい。さっき、しばらく2人で戦っていました」

「デク、瞬がこのままゾンビにならなければ心強い味方になるわ」

「ゾンビにならなければ、でしょう?」

「俺達兄妹は結構強いですよ」


 初めてゾンビと闘った時の感覚を思い出す。

 ゲーム通りにやれば、俺達はかなり出来る!

 僕には自信があった。


「噛まれまくってるじゃねえか」


 反論できない。


「……初めての実戦で、感覚がわからなかったんです」

「次は大丈夫ってか?」

「はい」

「そう簡単に信じられねえよ」

「あなた達は旅をしているのですか?」


 僕は話題を変えた。


「ええ、そうよ。生者を集めて或る程度の戦力を手に入れたいの」

「生者って、どのくらいいるのですか?」

「そうね… 残念ながら極めて少ないわ。なかなか出逢えない」

「そんなに少ないんですか?」

「あなたのいた世界にゾンビはいないのですよね?」

「ええ、ゲームや物語に登場してくるだけです」

「羨ましい話ですね」

「この世界には、元々ゾンビがいたのですか?」

「いいえ。10年くらい前からよ」

「どうしてゾンビが…?」

「それがわからないの。伝染病のように急に増えたから」

「10年前……」

「それからはゾンビから逃げる生活。仲間がだいぶ減ったわ」

「今も逃げているのですか?」

「戦ってはいますが……数が違いますから」

「それで人間を集めているのですね」

「そうね。人間の街、1つくらい欲しいわね」

「街ですか。早く街1つを解放できればいいですね」

「瞬、あなた達のことをもっと教えてもらえるかしら?」

「構いませんよ、その代わり、僕にあなた達のことを教えてください」


 僕達は日が暮れるまで語り合った。


「日が暮れたわね」

「今日は天気が良いのでテントはいらないですね」

「姫、馬車の中で寝てください。あっしらは外で寝ます」

「お前達も寝ろ」


 僕達は眠った。というよりも、寝ようとした。

 だが、なかなか眠れない。

 知らない世界に来てしまい、不安で眠れない。

 ゾンビになるかもしれないと思うと、怖くて眠れない。

 それでも、朝方にはウトウトしていた。


 菫は僕の隣で眠った。朝になった。


「なんでこいつはゾンビにならへんねん!?」



 僕はその声で目を覚ました。







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