第35話 三角の痴情争い?

 村に帰ってきた僕は、ぞうさんハウスで嫁のユメちゃんに出迎えられる。


「おかえり、あなた。あれっ、スイートも一緒なんだ」

「うん。スイートちゃんが挨拶をしたいんだって」


 僕がそう告げると、スイートちゃんは足を弾ませてぞうさんハウスを見物し始めた。


「これがタスク様の愛の巣……ステキ」

「スイートちゃんにも気に入ってもらえたようで何よりだよ」

「お風呂もあるから、良かったらあとで入っていかない?」

「お風呂は嬉しい」


 ユメちゃんの提案に嬉しそうなスイートちゃん。


 やっぱり女の子はお風呂好きだよね、分かるよ。


 そんなことを思っていたら、ユメちゃんが核心を聞いてきた。


「それであなた、さっきはツーガルで何があったのかな?」

「それなんだけどね、かくかくしかじか……」


 僕が緊急依頼のことを話したら、ユメちゃんは難しい顔をする。


「なるほどね~。育休じゃなかったらあたしも行きたかったのに~!」

「僕たちにはまだ小さいハナちゃんがいるでしょ。それにユメちゃんだってまだ大変なのに……」

「――ハナちゃんって、もしかしてタスク様の子?」


 三角形の耳をピクンと立てるスイートちゃんに、ユメちゃんがパンと手を合わせた。


「そうそう! スイートにもあたしのちょー可愛い娘を見せてあげる!」


 ついてきて、とユメちゃんが促したので、僕とスイートちゃんもついていく。


 連れてこられたのは僕とユメちゃんの寝室で、ハナちゃんがベビーベッドですやすやと寝息をたてていた。


「顔は普通なんだ」

「ちょっとスイート、それどういう意味かなぁ?」


 ちょっとガッカリしたようなスイートちゃんの反応に、ユメちゃんがこめかみに青筋を浮かべる。


 うげ、これは本気でユメちゃんを怒らせる十秒前だ。


「まあまあ! スイートちゃんに悪気はないと思うよユメちゃん。それにほら、ハナちゃんはとっても可愛いからね!」


 ユメちゃんをなだめつつ、僕は話を緊急依頼の方に戻す。


「それでユメちゃん、明日から僕しばらく帰ってこれないかもしれない。それでも大丈夫そう?」


 そう問いかけたら、ユメちゃんはふっと笑って僕の胸元に拳を軽く添えた。


「あなたのことなら心配なんてしてないよ、タスク。だってあなたは世界一強いんだからさ!」

「世界一ってそんな大袈裟な……」

「大袈裟なんかじゃない。タスク様は世界最強といってもいいレベル」


 スイートちゃんまで何言っちゃってるの!?


 とはいえここまで信頼してくれるなら、僕も安心して討伐にいけるというものだ。



 ちょっと汗をかいたので、僕はひとっ風呂浴びることにする。


「ふーっ、いい湯だな~」


 象の鼻の蛇口が存在感を放つ大きな湯船に浸かって、僕はほっと一息ついた。


 こうして一人でゆっくり浸かるのもいいものだぞう。


 長い象の鼻で鼻歌まで歌っていた時だった、突然浴室の扉が開け放たれる。


「ん、ユメちゃん?」


 ユメちゃんかと思って目を向けたら、そこにいたのはなんと裸のスイートちゃんだった。


「ちょっと、スイートちゃん!?」

「お邪魔するっ」


 何食わぬ顔でお湯を浴びるスイートちゃんに、僕は目を白黒させてしまう。


 スイートちゃんの身体は細身で華奢ながらも、女性らしいラインはきっちりと出ていて確かに美しい。

 ……じゃなくてっ!


「なんでスイートちゃんがこんなところにいるの!? しかも裸で!!」

「なんでって、タスク様と混浴するため?」


 なんで疑問系なんですかね~?


 頭が真っ白になりそうな僕の前で、スイートちゃんもゆ~っくりと湯船に華奢な身体を浸す。


「ユメだけずるい、こんなたくましい肉体からだを独り占めしてっ」


 むすっとしながらスイートちゃんが僕の胸板から太鼓腹にかけて細い指でなぞるものだから、くすぐったくてたまらない。


 しかも悪いことに、僕のぞうさんまでよからぬ勢いで勃ち上がろうとしているんだ。


「あのー、スイートちゃん? このままじゃ危ないからそろそろ浴室から出た方がいいんじゃ……」

「タスク様に弄ばれるなら、それも本望」


 そう言いながら僕の胸元に整った顔を擦り寄せるスイートちゃん。


 いつになく積極的だけど、どういう風の吹きまわし!?


「――ちょっとちょっと!! スイートったら何やってんのさ!?」


 そこへガタッ!とユメちゃんが勢い良く扉を開ける、こちらも堂々と全裸で。


「それはこっちのセリフ。タスク様を独り占めだなんて、ユメはずるい」

「タスクはあたしの旦那様なんだから当然でしょ!? ほら、タスクを惑わさないのっ!!」


 すごい剣幕でスイートちゃんをつまみ出したユメちゃんは、さも当然のように僕の前で湯船に身体を浸す。


「タスクもタスクだよ、あたし以外の女でこんなおっ立てるなんて!」

「ぱおーん!?」


 ユメちゃんにお股のぞうさんを強く握られて、僕はすっとんきょうな悲鳴を上げてしまった。


「あたししか見えないようにしてあげるから、覚悟してちょうだい!」


 それから僕は浴場でユメちゃんにこれでもかと教え込まれたんだ……。

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