第25話 象さんハウス

「まあ入ってよ」


 恐る恐る僕がユメさんをぞうさんハウスに招くと、彼女は口許に両手を添えて歓声を上げた。


「すっごくいいじゃん! タスクも見てみなよ~!」


 ユメさんにそう言われて僕もぞうさんハウスに入ると、なんということでしょう。


 中でまず目にした広々としたリビングが、とても家庭的だったんだ。


「すごい……」

「さすがタスクだねっ」


 白くて清潔感のあるリビングを前に唖然とする僕に、ユメさんは嬉しそうに腕を絡める。


 それから家の中を見て回ったけど、このコミカルな見た目に寄らず結構僕に馴染みのある内装になっていた。


 二階も見たところで、僕はユメさんとこれからのことを話し合うことに。


「思ったよりいい家になったけど、まだ家具も最低限しかなくて寂しいな……」

「しょうがないよタスク、だってまだできたばっかだもん」


 そう、ぞうさんビルドで一緒に作れたのは机やタンスといった木製の物だけだったんだ。


「ないならこれから揃えていけばいいんだよ。二人ならなんとかなるっしょ」

「そうだねユメさん。そのためにもお仕事頑張らなくっちゃ」

「頼りにしてるよ、旦那様」


 肘で小突くユメさんにそう言われて、僕はぽっと頬が熱くなってしまう。


 旦那様か、僕ももうユメさんの人生を半分背負う立場になっちゃったんだ。


「ありがとう、愛してるよユメさん」


 僕が長い鼻でユメさんのほっぺたにチューすると、彼女は頬を染めてこう言う。


「も~タスクったらー。……もう夫婦なんだし、ユメさんってのも他人行儀だからやめてほしいかな」

「それもそっか。じゃあユメちゃん、でいい?」

「タスクがそう呼びたいのなら……」


 あれ、ユメちゃんが赤くなった頬に両手を添えてはにかんでいるよ。


「大好きだよ、ユメちゃん」

「~~っ!」


 カッコつけてユメさんの肩に腕を回して僕がささやいたら、いきなり顔をビンタされた。


「痛っ!」

「あ、ごめん。あんまり恥ずかしくなっちゃったから、つい……」


 あはは、結婚に向けてもうちょっとユメちゃんと仲良くならなきゃな……。


 そんなこんなで一階の奥に行くと、なぜかバスルームだけは既にしっかりと完備されているようで。


 二人で中に入ってみると、象のオブジェが至るところにあしらわれた大きな湯船があった。


「あははっ、まーた象じゃん! あんたどんだけ好きなの~!?」

「いや、そういうわけじゃ……」


 またしても抱腹絶倒なユメちゃんに、僕は苦笑する。


 試しに象さんオブジェの一つ、鼻の根本にある蛇口を捻ってみたら、そこから熱々のお湯が吹き出してきた。


「これってタスクのはなシャワーそっくりじゃん!」

「……自分でもビックリだよ」


 まさかお風呂まで象さん尽くしになっちゃうなんて。


 しばらく湯船にお湯がたまるのを待ってから、僕たちはお風呂に入ることにしたんだけど。


「……本当に一緒に入るの?」

「だってあたしたちもう夫婦なんだし、裸の付き合いだってしたいじゃん」


 そう言いながらユメちゃんがするすると服を脱いでいくものだから、僕は目のやり場に困ってしまう。


「もー、そんなに恥ずかしがることないでしょ?」

「そうだけどさぁ……」


 モジモジする僕をよそに、ユメちゃんはすっかり全裸になっていた。


「おお……っ!」


 シミ一つない白い素肌に整った身体つき。

 特に豊かに膨らんだ胸とか、きゅっとくびれた腰にすらりと長い脚とか、ユメちゃんの身体は完璧な女体美だった。


「きれいだ……!」

「え、ホント?」

「うん! ユメちゃんの身体がきれいすぎて見惚れそうだよ!」

「あははっ、それは嬉しいや。あたしの身体、もっと見てくれてもいいんだよ?」

「そんなことよりもお風呂入ろうよ。いつまでも裸でいたら風邪引いちゃう」

「それもそうね」


 僕も服を脱いだところで、二人でお風呂場に入る。


「やっぱり広いお風呂だよね~。さすがタスクだよ」

「いやー、それほどでも~」


 確かにワンダー家のお風呂って結構狭いし、お湯を沸かす都合で毎日は入れなかったもんね。


「これからは毎日お風呂に入れるんだよ」

「それは嬉しいね~」


 またしてもユメちゃんに肘で小突かれながらも、僕たちは二人揃って湯船に浸かった。


「ふーっ、やっぱお風呂は気持ちいいね~」

「うん、全くだよ」


 ただでさえお風呂は気持ちいいのに、目の前には美人のユメちゃんがいる。


 おまけにお湯で濡れた彼女のいい匂いもする。

 僕にとっても極楽だった。


 そう思っていたら、ユメちゃんがニヤニヤしながらこんなことを。


「あれれ~? タスクのここ、もうヤル気満々じゃ~ん」

「ひゃいんっ!?」


 あ、僕の象さんが。ユメちゃんそんなところ握っちゃダメ!


「あははっ、タスクってばウケるんだけど~」

「む~!」


 ユメちゃんにばかり笑われるのも悔しかったので、僕も長い鼻を彼女の胸に伸ばした。


 ぽふん、やっぱりユメちゃんのおっぱい柔らかいぞう。


「あ、そこいっちゃう? ――いいよ、どうぞっ」


 それから僕とユメちゃんは、お風呂場でお互いに子供みたくじゃれあったんだ。

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