第17話 頼りになる仲間

「ふーっ、気持ちよかったー。タスクとスイートも入ればよかったのに」


 水浴びをしてお肌がツヤツヤになったユメさんの言葉で、僕とスイートちゃんは呆れたように顔を見合せた。


 休憩ついでに僕たちは軽く食事を取ることに。


 ユメさんが料理は任せてほしいと言ってたけど、どんなのを作るのかな?

 妹のリリちゃんが作ったサンドイッチも美味しかったから心配はしてないけど。


 そんなことを考えながら、僕はサクラとタンゴの二頭と戯れる。


 二頭とも長い鼻でじゃれてくるから、こっちもその力に負けないようにしなくちゃいけない。


 それがまた楽しいんだけどね。


「できたよー」


 そうしてるうちにユメさんが呼び掛けたので来てみると、美味しそうな干し肉のスープが鍋で煮えているのが見えた。


「これユメさんが作ったの?」

「ふふーん、これでも料理には自信があるんだから!」

「ユメさんの料理の腕は自分が保証する」


 鼻高々に大きな胸を張るユメさんに、スイートちゃんも太鼓判を押す。


「それじゃあいただきます」


 木のスプーンでスープを口に運ぶと、干し肉の旨味とコクが口一杯に広がった。


「んんっ、美味しい! これ美味しいよユメさん!」

「へへーん、でしょでしょ~」

「これは美味しいですな、旅の疲れが吹き飛ぶようですぞ」


 マサラさんもユメさんのスープを満足そうに食べている。


 それから休憩を終えたところで、僕たちは今度は流れる川に沿って歩き始めた。


 タンゴの背中に揺られながら進むこと半日、空が暗くなってきたところで僕たち一行は途中通りかかった村で夜を過ごすことに。


 ……村に入るなりチラチラと向けられる住人たちの目が気になってしまう。


 やっぱり僕の顔のせいかな……?


 そんなことを気にしてると、隣を歩くサクラの背中からユメさんが気を遣ってくれる。


「気にすることないよタスク。顔がちょっと変わってたって、あんたはあんただからさ」

「ユメさん……、ありがとう」


 続いてサクラとタンゴもこう言ってくれた。


「それに、わたしは目立つのも嫌いじゃないぞう」

「ぼくたちが目立つ分、マスターの顔なんて大した問題じゃないパオ」

「それもそっか。ありがとね、タンゴとサクラも」


 その頭を撫でてあげると、タンゴは嬉しそうに長い鼻をあげる。


 その間にもマサラさんが話をつけてくれたおかげで、僕たちは村長さんの屋敷に泊めてもらえることになった。


 サクラとタンゴを豆粒に戻してから鼻の穴にしまったところで、僕たちは村長さんの屋敷にお邪魔する。


「お邪魔します」

「どうぞどうぞ、入ってくだされ」


 つるっぱげの村長さんは気さくなお方で、村の外から来た僕たちも快く受け入れてくれた。


 それで僕は貸してもらった一部屋にて、ベッドに横たわって旅の疲れを癒す。


「ふーっ、疲れた~」


 初めての旅路だから僕も疲れちゃったよ。


 でもまだ初日。これからまだ二日……いや、帰りも入れたらあと五日もある。


 今日はほとんど何事もなく進んだけど、今後も同じように進むとは限らない。


 そう心に銘じて僕は、ステテコ姿になって程なく眠りについたんだ。


 翌朝、僕は扉をノックする音で目を覚ます。


「はーい」


 ステテコ姿のまま扉を開けると、その向こうにいたのはユメさんだった。


「どう、よく眠れた?」

「うん。おかげで僕も疲れが吹き飛んだよ」

「それならよかった。マサラさんが言ってたんだけど、準備ができ次第出発するって」

「はーい」


 ユメさんを見送ったところで、僕は服を着替え直してから部屋を出る。


 屋敷の外ではマサラさんが、荷車の馬の手入れをしていた。


「おはようございますタスク殿」


 僕は気づいた、マサラさんの馬は毛並みがツヤツヤな上に肉付きもいい。


「おはようございます、マサラさん。馬、大切にしてるんですね」

「もちろんですとも。馬は相棒にして家族ですから。そちらの象もそうでしょう?」

「サクラとタンゴの事ですか? まあ、そうですね」


 家族、かあ。言われてみれば確かにサクラとタンゴも本当の家族みたいに僕の事を信頼してくれている。


「出ておいで」


 僕が鼻から豆粒を吹き出して、それがサクラとタンゴになるのをマサラさんは不思議そうに見つめた。


「しかし変わったものですなあ、豆粒が象になるなんて」

「いやー、僕も詳しいことはよく分からないんですよね……」


 少し遅れてユメさんとスイートちゃんの女子二人も来たところで、僕たちは一晩お世話になった村を出てまた旅路を行くことに。


「頼りにしてるよ、タンゴにサクラ」

「もちろんパオ」

「任せてぞう!」


 やっぱりこの大きな二頭、すごく頼りになるぞう!


 タンゴの背中に乗った僕にはそう思えてならなかった。

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