池で耳鳴りが酷くなったような気がしたけど言わなかった。ていうか小さな滝なのにやたら音がうるさいなって。私しかそう思ってなかったみたいだけど。

 明日また神社でお祓いやり直すの面倒じゃん。私になんか憑いてるなんて言われても信じられなかったしさ。ちょっと体調悪いだけなのよ。ほんとに。だから明日には絶対帰る、仕事もあるから帰る、って歩きながらずっと言ってた。

 祠にはお参りした。それはちゃんとした方が良いと思ったから。

 りゅうに何度もお前体調悪いのか、って聞かれたけど、別に日常には差し障りはないんだよ、ってずっと言い返してた。

 だけど歩いてたらまた足がつって、クソ、って思わず口をついて出た。

 早く山を降りて眠りたい。その時はそのことしか考えて無かった。

 あだちさんは空気を読まず、昔からこの山で神隠しが多いんですよねえ、って友達旦那氏に話してた。へぇ~って間の抜けた返事が聞こえてワロタ。笑ってる場合じゃないんだけどワロタ。

 2年前のGWにも帰省してた家族の子供が散策中にいなくなってまだ見つかってないって。ニュースで見たな、そう言えば。

 ていうかこの山、一応この辺りはまだうちの土地なんじゃないの?勝手に散策していいの?そしたらりゅうが「別に構わない、整備はしてるし入っちゃいけないところには立て看板もしてる。クマがいるわけでもないしな。ていうかこの山で人が入れるのはほんと下の方だけだよ、そこは地元の人の散歩コースになってる」ってさ。いいんだ。

「別に家の中に入られるわけじゃないし」

 そりゃあまあそうなんだけど。

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