お泊り
ほんとは墓参りの後坊さんの話聞いたらそのまま神奈川帰るつもりだったんだよなあ。
だから私の荷物、スーツケースは友達の車に積んでたんだよ。私はスマホと財布と虫除けだけ入れたポシェットだけで寺にいてさ。
そういえば昨日蔵で見つけた父さんの僅かばかりの遺品入れた紙袋?それ置いて来ちゃった事に気付いて、とりあえずりゅうの車で一旦家に戻った。
いちろーは寺に残った。なんかあだちさんと話してた。
友達にはこのまま寺に泊まる事になったから何時頃までに寺の駐車場に戻って来て、途中にユニクロがあったはずだからそこに寄って下着とTシャツ1枚買って来て欲しい金は後で払う、正直ひと晩寺とか退屈だろうから明日まで付き添って欲しいけど、もししんどかったら私の荷物下ろして先に帰ってもいいよ、って電話で言った。
りゅうの奥さんと子供達は買い物に出てて、まあ本当はりゅうも連休だし家族サービスしたかったよな、ごめんね、って言ったら、別にいいよ、ってぶっきらぼうに言われた。諦めてんのかな、いろんなこと。
もう忘れ物はない?蔵はもう確認しなくていい?って聞かれてその時は「これから友達が寺に来るからもういい、2階はどうせ額縁しかないんでしょ」って答えた。りゅうは小さな声で「まあお前がいいならいいけど」って言いながら、奥さんが作り置きしてた麦茶を私の水筒に入れてくれた。りゅうは暑いからシャツ着替えて来る、って言って、私はしばらく居間で待つことにした。
仏間をチラッと覗いて本当にもう忘れ物がないことを確認して、居間から縁側に出て井戸を改めて真正面から見てみたんだよね。
ほんとにリングみたいなおもんない話になってきたなあ、ってちょっと思って正直萎えてきた。
あといきなり祓うとかなんだよ、って思うじゃん。
でも最近ずっと眠い。風邪とかいう程じゃないけどずっとだるい。それは嘘じゃない。
自分が自分じゃないみたいな感覚はある。
いつからかな。
父さんの日記開いた日からかな。
連休明けたら病院の定期検診があるから流石にその時相談しようかなって思ってたとこなんだよね。
今はなんか耳鳴りみたいなのがする。
井戸から変な音が聞こえるような気がする。
でも気にしないふりをしてる。
なんだろうね、このぶーん、ぶーんって音。自律神経かな。
寺に戻ってトイレ借りて、坊さんの家族が、ていうか奥さんがなんか明日こどもの日だからってちらし寿司大量に作ってて、少し早いけどお昼どうぞ、って本堂の隣にある坊さんの自宅に全員招かれた。友達夫婦はまだ来てなかった。
ご飯の後、しばらくは神奈川について、むしろ父についてひたすら坊さんと神主から質問責めされて、あだちさんは1度戻ってまた後で来ますって消えて行った。よく考えたら役所の人が休日出勤とか珍しいな、というか申し訳ないなって思ってしまった。
戻って来たあだちさんは古い地図と今の地図を見せてくれて、シュウジの死んだ池の場所を教えてくれた。
「見てみたいなあ」
何気なくそう言ったら、坊さんと神主に怒られた。なんでよ。今はそれどころじゃないでしょう、ってさ。
私が眠いのもだるいのも耳鳴りするのも持病のせいだと思うんですよねえ、って一応反抗はしてみた。でも聞く耳持たないのよ神職者のおじさん達。
お祓い何時からやるんですか、って聞いたら、準備するから1時半か2時、って言われた。まだ30分以上あるじゃん、少し横になって寝てていいかな、って思ってたら友達夫婦が戻って来た。
トランクから下ろしたユニクロの袋がTシャツと下着頼んだだけなのにめっちゃでかくて「うちらももう一泊するんで!」だってよ。
なんかめっちゃうまそうな弁当買って来てて広い境内にあるベンチでうっほうっほ言いながら食ってた。なんだこいつら。私の友達です。
坊さんの自宅の方でとりあえずシャワー浴びろ、って言われて言う通りにした。服はなんか作務衣みたいなの着させられて、なんか居心地が悪いなって思った。着心地か。
足が痛いけど座布団に正座させられて、美味しくない日本酒のめっていわれてのんで、目を閉じて下を向くように言われて、坊さんが数珠持った手で私の頭に触れて、なんかずっとよくわかんないお経みたいなの唱えてて、だんだん眠くなって来て、そのままそこに突っ伏して眠ってしまった。
他の皆は後ろで並んで座ってずっと見てたんだけど、友達はやっぱり耳鳴りがしたって言ってて、友達旦那といちろーは気持ち悪くなって来てげろ派いたって。
私は何も覚えてない。寝ちゃったからな。
坊さんと神主は多分大丈夫かなあなんて適当こきながら、でも一応様子見のためにここに一晩泊まりなさいってさ。飯と布団の心配はすんなって。
お祓いって思ってたより簡単なんだな。マジで厄年に川崎大師でごせんえん払ってやった厄払いと同じというかむしろあっちより簡単だったんじゃ、って思う位。ひょうし ぬけだよ。
ていうかこれで駄目だったら明日神社に移動してそっちで改めてやるって。めんどい。終わって欲しい。
そんでその時点でまだ外は明るいわけ。2時とか3時なのよ。夕飯まで暇じゃん。わがまま言って、池を見に行きたい、って言い張ったんだよ。ずっと言ってたら坊さんが折れて、あだちさんとりゅうといちろーの付き添い有りで行く事になった。坊さんと神主は仕事があるからって。山の中は虫も出るしあぶないから、少し暑かったけどパーカー着て、車に乗った。
そんなにきつい山道じゃないけど、30分位は歩くよ、ってりゅうに言われて、靴をただのスニーカーじゃなくてティンバーランドにしてきて良かったなって思った。
みんなが池、って言うから山の中にぽつんとある池なのかなと思ってたんだけど、実際は滝つぼっぽい感じ?山奥の川の支流の支流の一部、って感じだったなあ。上手く言えないけど、川の一部なんだなあって思った。
ほとりに小さな祠があって、それは定期的に役所とか消防団とか地域の有志の人達とりゅうで掃除しに来てるってさ。
めっちゃ蛇がいた。
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