時系列とかめちゃめちゃになっててごめん、

 和歌山で寺に集まった時の話を先に詳しくしておく。なんで帰る予定を延期してまで寺に泊まったかって話も含めて。


 友達夫婦は車の運転上手いんだよな。旦那氏の方、営業仕事でめっちゃ車使うからかな。すげえ快適よ。

 父実家から寺まで、車で概ね7〜8分。

 子供の頃、墓参りで何回か行った記憶はある。その時の坊さんの顔、あんまり覚えてないんだよな。じじいだった気はする。

 寺着いて今の坊さんに会って母に持たされた歌舞伎揚げ渡してヘコヘコして、先に墓参りした。

 友達夫婦も一緒に墓洗ってくれて一緒に手ぇ合わせてくれて、ほんと優しい友達を持ったよ私は。

 まあ2人にはそこで「とりあえず☓☓にある日帰り温泉行って待ってて、終わったら連絡するから。それまでサーティワンでも食ってろ」って言って、2人は心配そうにしてたけど無理矢理車に乗せて、カーナビに目的地の住所入力して、私は寺の本堂に向かった。

 そこにはもう坊さん、りゅう、いちろーが座ってて、いちろーの隣に眼鏡スーツの男がいた。これが役所の人。あだちさん。

 明け方に足つってふくらはぎ痛いから正座じゃなくてもいいですか、って宣言して三角座りした。座布団めっちゃ薄っぺらかった。腰も痛い。そして眠い。


 坊さんがなんか台帳?みたいなの見せてくれた。昔の、江戸時代からの檀家の戸籍みたいな奴ね。

 いわゆる家系図というか、うちの墓に入ってる人達が辿れるわけよ。


 歴史の教科書で言うなら江戸時代から明治時代に移り変わるかどうか、其れ位の頃の話。

 家の2階から飛び降りて井戸に頭ぶつけて死んだのはアヤネちゃん(仮名)。享年16歳。ぴちぴちのぎゃるですわね。

 その原因となった下働きの少年、てっきり外から奉公に来た人間かと思っていたら血縁の人間だったらしくて名前の記載があった。

 こっちの名前はシュウジ(仮名)。享年15歳。ガキやな。

 曽祖父の更にもうひとつ上の祖父、高祖父か。そのじじいが実権を握ってた時代。

 高祖父の従兄弟の息子の1人とか?4親等の更に先だ!和歌山県内の別の集落に住んでたらしいんだけど兄弟が多すぎて奉公に出されてうちにやってきたらしいんだよな、シュウジ。

 それで高祖父こと、くそじじいがなんの気まぐれが知らんがいわゆる今で言う養子みたいな感じで自分の子供の1人としてシュウジを扱う事になった。

 曽祖父の弟として、そしてアヤネちゃんにとっても弟。血の繋がりの少し遠い、ほぼ他人みたいな男子がいきなり家族ヅラして加わってきた。 


 なんか元々体弱い家系だったらしくて、恐らく血縁の男子を手元にひとりでも集めておきたかったんじゃないですかね、くそじじい。


 ※これはあくまで坊さんの話とあだちさんの話を元に私が再構成しています。


 今の法律でも従兄弟同士なら結婚は出来るじゃん。一応。再従兄弟なんてほんと更に他人よ、そりゃお年頃の男女なら恋に落ちても仕方ないわな。

 そんでも一つ屋根の下でそういう関係になったらそりゃばれるじゃん。ていうか取り壊した方の蔵でこっそり会ってたんだって。でもばれるよ、そんなん時間の問題よ。それでもめて、シュウジを罰として取り壊してない方の、昨日私が入った方の蔵に閉じ込めたわけ。2階に。そんでもすぐ逃げ出して、夜を徹して探し回ったら山の中の池で溺死してるのが見つかったと。

 それは全部記録に残ってる。村で起きた事件は全部記されてるんだね。アヤネちゃんの死もね。

 アダチさんが当時のじじいの日記を史料館に展示してるんですよ!って言ってたけどなんでちょっと楽しそうなんだよ。いや、昔の事なんて正直他人事だよ、身内でもちょっとそう思うわ。当時のじじいなんて会った事もないからそりゃ他人事なんだけど。うん。でもさあ。


 それでまあ私達の家系には呪いが掛かってると。

 2人の葬式をして、まあシュウジの方の葬式なんかはろくなもんじゃなくて、じじいとじじいの奥さんと坊さんだけで焼き場に行って簡素に終わらせた、ろくなもんじゃなかったらしいけどね。

 それでアヤネちゃんの葬儀の後、まだ四十九日どころか初七日も終わらない位から井戸に幽霊が出ると。

 アヤネちゃんの幽霊がね。

 家人も客人も女中も下働きも皆「見た」って大騒ぎになって、寺の坊さんと神社の神主が両方呼ばれて、鎮める儀式を毎年行う事になった、っていうわけ。


 ていうか廃仏毀釈ってなんだったの。ぎりぎりその寸前の話で、寺はその影響でしばらく人がいない時期もあったらしいけど余りに荒れ放題で治安を心配した神社側の尽力で程なくしそりゃまて跡継ぎが戻ってきたとかなんとかよくわからん。そんなことあるんだ。

 むしろその状況でよく台帳が残ってたな、と思ってたら、寺にあった貴重な物を一時期家の蔵に隠してたらしいんだよね。まあそういうこともあるのか。全ては歴史の教科書通りではないってことだよなあ。そりゃまあ坊さんも神主も未だにすぐ集まってくれるよな。なんなら役所も。地域の記録を守った家だもんな。


 そんで話が逸れた、その頃から髪の毛が家の中に増えた。

 じじいが流石にじじいだから病気で寝込んで、井戸に酒を入れる日がお盆から何日か遅れたら家の中が大変な事になったんだってよ。髪の毛で。女中が悲鳴上げるくらい。そりゃあもう食べ物に髪の毛が入る位、って言われてちょっと吐きそうになった。昼飯これからなんだよ、止めろよ、って思った。その時に私は持って来た髪の毛を坊さんと神主に相談して、神主が引き取ってくれることになった。ジップロック渡す時にふと思ったんだけど、なんか少し髪の毛増えてるような気がしたんだけど流石に着のせいですよね。


 それでさ、なんか話してる間、坊さんも神主も私に対してよそよそしいんだよ。2人で耳打ちとかしてんのよ。

 初対面だからか、このメンバーの中で私だけが女だからか?やんのかこら、って思ってたらさ、坊さんに「ところであなた厄払いとか行ってます?」って聞かれた。

 一応行ってる。形式だけですけど、って言ったら、神主が、ちょっと言いにくいんですけど、って。


 あなた、血が濃いですね、たまにあなたの顔に、知らない女の子の顔が重なるんです。多分、あなた、アヤネさんが憑いてるんじゃないですかね、って。


 そんで坊さんが、良くないから今日は寺に泊まれ、先ずあなたにくっついている悪い物を抜くしかないでしょう、って。


 はあ?


 荷物取りに帰っていい?ついでに援護呼んでいい?


 そんで友達に電話したらさ、電話の向こうで揃って大笑いしてやがんの。


 そりゃ笑うよね。





 


 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る