第45話 鉱山調査隊キャンプ
次の日の未明、領都の東門に集まったロリスたちは、ゼニスから借りた木製の武器を手に、彼らはまず川へと向かって歩いていく。
東門を出てすぐにアンツ川の上流域にぶつかった一行は、川に沿って旧鉱山のある中流域に向かう。旧鉱山へと歩みを進める中、ロリスがこの依頼の詳細について尋ねると、ゼニスがそれに答えた。
「洪水で坑道に水が流れ込み、鉱山村も流され閉鎖された鉱山だが、鉱脈は価値があるから、調査隊が派遣されたんだ。彼らは水没しなかった斜面の高い位置から鉱脈への再掘削を試みたんだが、運悪くアシッドスライムが住む自然の洞窟にぶち当たったらしい」
『なるほど』『ふ~ん』『そうなんだ』と薄い反応の3人に、『もうちょっと反応しろよ。張り合いがないな』と不満気なゼニス。
そんな話をしながら、洪水など起きそうもない穏やかな川辺を歩く4人。その視線の先に、河原に張られたテントがいくつか見える。
「お、あれだな? 調査隊のテントは」
「手分けして聞き込みするわよ」
「わかりました」
ゼニスとマリーとエリサの3人が歩く速度を上げた。
「ちょ、ちょっと待って!」
慌ててついていくロリス。
4人はテントに到着すると、彼らは調査員たちから情報を集め始める。ゼニスが話を聞いた調査員は、再掘削穴から逃げ出した時、100匹以上のアシッドスライムに退避所が囲まれたと話した。
「100匹は……かなりだな。集団で一斉に襲われたら結構ヤバい数だ。退避所にはトイレがあるらしいから、その匂いに引き寄せられたんだろう」
ゼニスは顎に手をやり、神妙な顔になる。スライムは別名【掃除屋】腐敗した動物の死骸とかが大好きだ、もちろん動物の排泄物なんかも体に取り込みキレイにして排出するから、匂いにつられて退避所までやって来た可能性が高い。
「確かに、現状が不明なので慎重に行動すべきですね。入り口からすぐの所にもスライムがいたようで、調査員たちはそれ以上進めなかったそうですから」
エリサが聞いた調査員は、今日の朝、なんとか逃げ出した退避者がいないか、確認のため鉱山に入った。しかし、アシッドスライム数匹に遭遇したため撤退したとのこと。入り口近くにもいるとなれば、退避所付近はもっと多くなってるかもしれない。
「オレは穴掘り職人に話を聞きました。穴が繋がった洞窟を調べた時、その自然洞窟奥に流れる黄色くなった地底の川を見つけたらしい。ただ、近くにいたアシッドスライムの攻撃を受けて逃げ出したので詳細はわからずじまい。だが、あれがすべて退避所にやって来たと考えると、今いるのは100匹どころじゃないだろうと……」
ロリスは初めての情報収集で得た話を伝え、ゼニスはそれを聞いて頷いた。
「その情報は俺も聞いた。調査員側としては『自然洞窟の奥にいるスライムたちまでは距離があるので、待避所まで来ることはないだろう』と分析していたが、大量にいる可能性もあるから最悪は撤退も考慮すべきだな」
ロリスの情報を受けて自分の情報とすり合わせ考えるゼニス。
「再掘削穴は、あの川の右岸にせり出た山の斜面にあるらしいわよ? アシッドスライム対策で、全員が厚手の服や皮鎧を着ていて良かったわ。これが重装備ならかなり辛い登山になるところだもの」
最後にそう言って、マリーが指さす先は、山の斜面の結構高い位置であった。
メンバーが真剣に話す顔を見たロリスは、『みんな真剣に情報を集めて分析している。情報分析って大事なんだな』と感心する。そして『自分も情報を大事にしなければ』と思うのだった。
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