第44話 D級依頼
「うん、それならこの『鉱山技術者の救助』だね。今あるD級依頼はこれだけだし」
エリサは、机の上から依頼書一枚をつまみ上げてみんなに見せた。
「なるほど、旧アンツ鉱山内の退避所に取り残された調査員の救出か……調査中にモンスターに囲まれて帰れなくなったと。まあ、いいんじゃない。あそこなら、モンスターもさほど強くないし」
簡単に内容を読んで賛成するマリー。そこに口を挟むゼニス。
「待て、それちょっと面倒なやつだ。相手は多数のアシッドスライムで、E級冒険者が逃げ帰って来た依頼だぞ? ギルドに帰って来た所を見たが、アシッドスライムの酸で、装備品がボロボロになってかわいそうだったな」
低級の冒険者は予備の武具を持っていることが少ない。装備が酸でダメージを受ければ、依頼を成功させても装備の買い替えで赤字になってしまう。
「うえ~~、アシッドスライムですか? 防具は皮か厚手の服を、武器は木製を用意しないといけませんね。ゼニスさん、練習場の木製武器タダで貸してくれない?」
アシッドスライムと聞いて嫌そうに顔をしかめたエリサは、ゼニスに武器をおねだりする。
「いやぁ、レンタル料はタダでもいいが、損害が大きいからな? そうだな、1本につき500CP、ツルハシはないから、ロリスだけ大ハンマーで1000CPだ。合計2000CPの保険料を払うなら考えてもいいぞ?」
「え? 保険料で通常のレンタル料の半分も取るの?」
そう答えたゼニスに、嫌そうに顔をしかめ文句を言ったマリー。
しかし、ひとつため息をつくと、『仕方ないわね』と言って1000CP銀貨を2枚ゼニスに投げて渡した。
「おっとと。いいのか? 木製武器の保険料を払うということは、この『鉱山技術者の救助』依頼を受けるんだな?」
ゼニスは少し体勢を崩しながらも銀貨を受け取り、驚いた顔でマリーに尋ねる。
「そうよ、D級依頼はこれしかないし、受けるしかないわ。相手がアシッドスライムだってわかっているんだから、酸の対策さえすれば怖くないしね? じゃあ、エリサ、受付に行って受付料を払ってきて」
マリーはエリサに受付に向かうよう指示した。
「はい、行ってきます。そうだ、ロリスも一緒に来て。依頼受注の手続きがどんなものか知っておくべきだから」
マリーの指示を受けて立ち上がったエリサは、ロリスを誘う。
「あ、はい。勉強させてもらいます!」
ロリスも立ち上がり、エリサの後について部屋を出ていく。
「じゃあ、オレも事務所で木製武器の手続きしてくるわ。後は頼む」
続いてゼニスも部屋を出ていき、一人部屋に残ったマリーは依頼書の返却作業を受け持つことになった。
そのマリーの前には大量の依頼書が残されている。
(えっ、実はこれを掲示板に戻すのが一番面倒じゃないの?)
『貧乏くじを引いた』と、しばらく壁を向いて無視を決め込んでいたマリーだったが無視できず、結局一人で残った依頼書を掲示板に戻しに行ったのだった。
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