第43話 初のミーティングルーム

 ボーディーから豪華な朝食をご馳走になった後、ロリスたち『深紅のバラ』パーティーは礼を言い、冒険者ギルドへと向かった。

 ギルドに到着すると、待ち合わせしていたゼニスが腕組みをして受付で待っていた。


「遅いぞ! 昨日、遅れないようにと言っただろう。今日から1ヶ月、共に依頼をこなす仲間なんだ。もう少し気を使え!」


「ごめん、ごめん。ボーディーの定宿での朝食が美味しくて、ついおかわりを3回もしちゃったよ」


 『ペンッ』と、たらふく食べて出た腹を叩くマリー。そんな周りの目を気にしないマリーに呆れるエリサ。


「はあ……どうせ、ただ飯だから食い溜めしただけですよね? マリーさん」


「どっちでもいいわ! さあ、早く掲示板から良い依頼を取ってこい! ミーティングするぞ!」


 朝から人を待たせておいて、くだらない話をしている二人を注意するゼニス。


「「へーい」」


 マリーとエリサは、ゼニスに急かされて掲示板へと向かった。


「ロリスは俺と来い。ミーティングルームへ行くぞ」


「ああ、わかった」


 ロリスはゼニスに従い、ミーティングルームへと向かった。これから1ヶ月、ゼニスはロリスの真の実力を見極めるためにパーティーに加わることになっていた。

 グリフォンを倒す能力が本当にあるのかどうか、ミレーニが半信半疑なためで、ゼニスは1ヶ月間ロリスと行動を共にし、その実力を認めれば、ギルドがグリフォン討伐の証明書を発行するという。

 ミーティングルームに入って、みんなで打ち合わせを始めるのを新鮮な気持ちで待つロリス。

 ミーティングルームでの打ち合わせを前に、昨晩ボーディーから試験の内容を褒められたロリスは、興奮を抑えきれずにいた。初めての依頼を失敗しないように、心の中で『落ち着け、落ち着け』と自分に言い聞かせている。


「……リス、ロリス! ちゃんと聞いてる?」


 突然マリーに大声で呼ばれ、驚くロリス。


「はい! あっ、いえ……聞いてなかったです……すいません」


 慌てて返事したが、打ち合わせが始まったことに気づかず、謝るロリス。少し上の空になっていたようだ。


 マリーは『タンッ!』と机を強く叩いて注意した。


「ちょっと、私たちはあなたのために依頼を選んでいるのよ。しっかり集中しなさいよ!」


『イッ』と歯をむき出し怒りを示すマリー。


「まあマリー落ち着けよ。ロリスにとってはこれが初めての打ち合わせなんだから、少しは大目に見てやろう」


 ゼニスがロリスをかばった。


「何言ってんのよ。ロリスの自覚が足りないから注意しただけじゃない。ロリスが早くE級に昇格しないと、私たちはいつまでも依頼で1ポイントしかもらえないのよ」


 『ムッ』としてゼニスを睨むマリー。


 ギルドの依頼は、自分のクラスより下の依頼を受けた場合1ポイントしかもらえない。これは、上級者が簡単にポイントを稼ぐのを防ぐための措置だ。逆に初心者は、自分の級より上の依頼を2級上まで受けることができ、成長を促すようになっている。

 このようなシステムなので、ロリスより上級者のマリーたちが、まともなポイントをもらえるように、ロリスに『E級まで上がれ』というのは当然の要求ではある。


「まあ、E級に昇格するだけなら、D級の依頼をパーティーで受ければいいですよね。+4ポイントでちょうどE級になるから」


 エリサがマリーの言葉を受けて提案した。しかし、ゼニスはそれを否定する。


「だが、そこでC級の依頼を受けて失敗したら、ロリスは一気に合計-4ポイントになる。マイナスになれば、ギルドの奉仕依頼を受けなければならない。それには時間がかかるぞ」


「じゃあ、どうすんのよ?」


 マリーがゼニスにかみつく。


「D級の依頼をパーティーで受けた後、E級の単独依頼なら、ポイントは3倍の+6ポイントもらえて、D級に昇格できる。単独依頼でのマイナスポイントは一律-2ポイントだから、積み立てた合計ポイントが一気にマイナスになることはない」


 単独依頼は成功すればポイントが3倍になり、失敗してもマイナスポイントは少ないため、お得な選択肢となっている。

 ロリスはまだ詳細を理解していないが、ゼニスはギルド職員として詳しく知っていた。


「なるほどね。まずはD級か」


 エリサは机の上に無造作に置かれた依頼書を調べ始めた―――

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