第22話 接敵

 街道から山に入り、順調に山を登る3人。ロリスは同行者のスピードに合わせて、少しペースを落として登る。


 今回は、前回の戦闘の反省して、武器を多く持参した。両腰には片手斧を1本ずつ、背中にはツルハシを装備し、右手にはもう一本の片手斧を持ち、左手にランタンを持って山を登る。


 周囲はまだ暗く、足元も見えづらいが、迷うことなく進むロリスの後を、マリーとエリサは必死についていく。


 そんな中、先頭を歩くロリスが突然立ち止まり、ランタンを地面に置いて、後ろの二人に声をかけた。


「ここから先はグリフォンの巣です。低木ていぼくばかりで隠れる場所はありません。危険になったら、この森に逃げ込んでください。グリフォンは大きいので、森には入れませんから」


「了解よ」「オーケーです」


 ロリスは二人の返事に頷き、夜空が白み始める中、グリフォンの巣に向かって走り出した。


 頂上に向かう緩やかな斜面を、低木ていぼくの間をすり抜けながら、登っていくロリス。すると、前方から『バフォッ』と1度、羽ばたく音が聞こえた。


(来る!)


 グリフォンは3本の足でロリスの方に走ってくる。

 まだ暗く、鳥目のために周囲が見えず、飛び上がっても敵を視認できないからだろう。


(ぐっ! このままだと正面からまともに攻撃を受ける! しかし、低木ていぼくが邪魔して避けられない!)


 ロリスは、背中からツルハシを抜き、体の前で片手斧と交差させて、以前ギルド試験で見たことがある他人の防御姿勢を取る。

 しかし、その防御は、2つの武器をただ交差させただけで、全く防御になっていない構えだった。


ザンッ ザンッ! ザンッ!!


 獅子の足で力強く地面を蹴り、低木ていぼくをものともせず踏み越えながらロリスに向かって駆けるグリフォン。

 しかし、そのままロリスに突撃するのかと思いきや、防御するロリスの上を跳び越えて森の方に走っていく。


「えっ?!」 


 ロリスが後ろを振り返ると、森の入り口で光が円を書いてグルグルと回っている。

 マリーとエリサがランタンを回して、夜目の利かないグリフォンを引き付けていた。


 二人のサポートでグリフォンの背後を取ったロリスは、グリフォンの後を追いかける。グリフォンが地上を走る速度はそれほど速くない、たぶん3本脚になったことが影響している。

 ロリスが距離を詰め、グリフォンが森の入り口に近づいた時、光の円が消えた。グリフォンに接近されたマリーとエリサが森の中に逃げ込んだのだ。


 グリフォンは光を見失い立ち止まる。

 そこに追いついたロリスが、グリフォンの背後から渾身の一撃を放つ。


「くらえっ!」


 大きく振りかぶられた、ツルハシと片手斧が、その羽と獅子の背中を襲う――




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