第21話 協力者

 次の日、夜も明けぬうちに、ロリスの家の玄関からチラチラと光が漏れていた。玄関を出るロリスの顔をランタンの光が照らす。

 

 そこに近寄る2つの影。それに気づいた彼がランタンを高くかかげると、マリーとエリサの顔が照らし出された。


「えっ? マリーさん? それにエリサさんも? どうしたんですか?」


 突然、現れた二人に驚くロリスに、マリーは 呆れたように息を吐き出した。


「この状況で『どうした』って、言うの? ロリスの手助けをしようと待ってたのに」


「ホントですね」


 哀れみの表情で、小首をかしげるエリサ。


『え? 手伝ってくれるのですか?』と尋ねるロリスに、 『そうよ?』『はい』と二人は頷いた。


 しかし、ロリスは首を横に振り、二人の申し出を断る。


「いやいや、お二人とも相手はグリフォンですよ? 危険です。オレが蒔いた種なので、お二人は村にいてください」

 

 人の良いロリスらしいが、そんなことを言っているから、村にいいように使われるのだ。そんなロリスをマリーが一喝する。


「何言ってるのよ素人が! こっちは現役の冒険者よ。ちゃんと計画して行動してるの。素人のロリスに心配されることはないわ!」


「まあ、マリーさんは疑わしいですがね」


「エリサ、ちょっとやめてよ! 今、カッコよく決めたトコなのに」


 空気がピリッとするはずが、余計なエリサの一言で逆になごんだ。


「ふふっ。なるほど、さすがですね。リラックスできました。ありがとうございます」


 ロリスは、うやうやしく頭を下げた。


「ちょっと! ロリスそれはやめてよね。とにかく、私たちがサポートするから、存分に戦いなさい。まあ、ホントは『私が倒す』って言えたら、もっとカッコよかったんだけど……」


「ま、無理ですね。マリーさんも私もまだまだ鍛錬が足りません。もっと、剣のコントロールや速度を上げて斬る、突く技術を上げないと、グリフォンには通用しませんから」


 少し自虐が入るマリーに、エリサが自分たちの未熟さを指摘する言葉をかぶせる。


「わかってるわよ! だからサポートに専念するの。ロリスを生贄になんてさせないわ! 危なくなったら、引きずってでも撤退させる。生きていれば、何回でも再戦できるし、相手が嫌がって巣を離れるかもしれないからね?」


 もちろん、これはウソである。巣を守るグリフォンが少々の攻撃で巣を離れるわけがない。ロリスが暴走して飛び込むのを防ぐための言葉だった。


 真剣な顔でロリスを見つめる二人。

 ここまでされては、ロリスも二人の提案を受け入れるしかない。


「わかりました。冒険者の二人が手伝ってくれるなら、心強いです。よろしくお願いします」


 ロリスはもう一度、二人に頭を下げた。


「了解よ」「行きましょう」


 二人の了解の言葉と共に、三人は揃って歩き出した。ロリスたちはグリフォンの待つ山頂の巣に向かったが、その後ろを追いかける二つの影には気づいていなかった。


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