第14話 スカウトのお願い
イリスはマリーとエリサのじゃれ合いを見て笑った。『この人達になら託せる』と感じ、心のわだかまりを解消するために、兄の事を頼もうと決心する。
「はは、バカ真面目か……確かに兄にはその表現がぴったりですね。ただ、その真面目さのおかげで、ウチの農場は大きくなった。兄が開墾を始めてから15年。もう父への贖罪は必要ない。マリーさん、エリサさん、お願いです。兄に冒険者の適正があるなら、ここから連れ出してくれませんか?」
イリスは二人に頭を下げた。その願いに対し、マリーは肯定的に、エリサは否定的に応じる。
「えっ? いいの? ロイドさんが激高しない?」
「そうですよ、イリスさん。よく考えてモノを言ってください」
イリスには、二人が農場や家族の結束が壊れる心配をしているように聞こえた。しかし、兄は我がままを言って良いほど働いたのだ。
イリスは再び頼みました。
「父の事は私が何とかしますのでお願いします。可能性がないなら仕方ないですが……」
イリス二度目の願い。マリーはその意気に感じて約束した。
「いいわよ。彼は才能ある逸材ですし、いい男だし、私の将来のためにも、最初からスカウトする気でしたから、こちらこそ末永くお願いします!」
「???」
マリーの言葉が変で戸惑うイリス。
そんな状況に、出来ればスカウトしたくないエリサが注文を付けた。
「マリーさん、言葉に自分の願望が混じってます。それに、ただロリスをスカウトするのは頂けないな。やる気があるかどうかを確認できる課題を出さないと私は納得できません」
「わかったわ。課題は私が決めるから、エリサ、それならいい?」
エリサの提案をすんなり受け入れたマリーに対し、嫌われるわけにいかないエリサは、マリーに従い渋々スカウトを承諾しました。
「仕方ないですね。わかりました」
「お二人共、ありがとうございます。これで兄も喜ぶでしょう」
胸につかえていた思いを遂げて、微笑むイリスに対し、エリサは早くこの気に入らないスカウト話を終割らせたく、話題を変えました。
「それよりも、イリスさん。村長の紹介状には食事の提供についても書かれていたはずですが?」
紹介状を確認するイリス。
「ああ、そうですね。食事の提供はさせて頂きますよ? 父に内緒でね? 朝はパンとスープだけだけですが、よろしいですか?」
「いや、もう少し何とかならないの?」
イリスの提案に食い下がるマリー。
「では、夕食にベーコン一切れを加えましょう」
「いやそれなら、朝にもベーコンを!」
などと交渉が続いた結果、一週間農業小屋の仮眠室に泊まりながら、朝夕のパンとスープにベーコンがつくという、中々豪勢な食事まで手に入れることが出来たのだった。
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