第7話 村への帰還
マリーとエリサの会話が終わる頃、ロリスも自警団のリーダーとの話を終えて二人の元へ戻ってきた。
「馬車は大した損傷もなく、引いて帰れるそうなんだが、やっぱり馬はダメみたいだ」
「ええ、ぐったりしていて、虫の息のようだから仕方ないわね」
「そうですね」
ロリスの報告に頷くマリーとエリサ。
「それで、可哀そうだが馬は解体して肉を持って帰るそうだ。貴族さんから、馬がダメなら馬車回収の報酬として受け取ることになってたんだと。それで作業には時間がかかるから、先に帰ってくれとさ」
「わかったわ。ロリス」
「了解。ロリス」
二人は同意した。マリーもエリスも呼び捨てにしているが、気にしてない様子のロリス。
「それじゃあ、行こうか? マリーさん肩を貸します……」
「あっ、はい……お願いね?」
ロリスが肩を貸し、マリーが立ち上がる。エリサから見ても両者の顔が近い。マリーがロリスの首に腕を巻き付けて、べったりとくっついているのがわかる。
(カ~~~~ッ、普段そんなことしないのに。もっと、ガサツでガハハな女のくせに!
エリサは心の中で唾を吐く。ただ普通の男ならその攻撃で骨抜きにされそうな所だが、ロリスはしっかり耐えている。救助だと言い聞かせているのか動じる様子もない。自警団の男たちがその様子を見て冷やかすが、ロリス顔は真っ赤にしながらも、前だけを見て歩いていく。
(へえ? 耐えてるよ。マリーさん
エリサは納得し、二人の後をついていく。後はこの男が自分の計画にどう影響するかだけを考えればいい。
(マリーさんが、ロリスにフラれるのが一番いい形ね。でも、ロリスの相手が私だと問題だから、他にロリスを誘惑する相手を探さないと。教団に誰か良い娘がいないかなあ?)
エリサは、都合のいいことを考えているが、教団に入信した女性たちは、超々美形の教祖に夢中で、顔面が整っている程度の普通のおっさんに目もくれない。教団本部から出ることはなく、教祖からの指令であっても、他の者にやらせて自分は本部に残りたい者がほとんどだ。『エリサみたいに馬鹿正直なのは珍しい』というのが本当の所である。
(ようし! この依頼で隣国に行ったら、久しぶりに教団関係者と連絡を取ろう。もしかしたら教祖様が「エリサに会いたい! 帰ってきてくれ!」とか言ってきて、すぐ帰還することになるかも! そうなったら、指令なんてどうでもいい。『後はお二人で』って、マリーさんとロリスを放って帰ればいいしね! よし! やる気出てきたわ!)
しかし、教祖はすでにエリサの事を忘れている。現在のエリサは、
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