第6話 パーティー参加の打診?

 エリサが転倒した馬車に目を向けると、自警団員たちが馬車を起こそうとしている。


「せーのっ!」


 ズシャーン!!


「よーしっ! 壊れた所が無いか確認するぞ!」


 自警団員たちは起こした馬車を押したり引いたりしながら、室内を覗き込み、前方の御者台や後方の荷物を点検している。そして、点検がほぼ終わると、自警団のリーダーが手を挙げてロリスを呼んだ。


「おーい! ロリスちょっと来てくれ!」


「わかった!」


 ロリスはリーダーに呼ばれて走っていく。


「どうしたのかしらね?」


「さあ? ロリスに何か力仕事でも頼むんでしょうか?」


 しれっと、ロリスを呼び捨てにするエリサ。それに気づいたマリーが注意する。


「ちょっと? エリサ、あんた年下なのに、ロリスを呼び捨てするのはダメでしょ?」


「マリーさんには言われたくないですね。マリーさんだって、冒険者ギルドのゼニスさんを呼び捨てでしょ?」


 痛いところを突かれたマリーは、なんとか言い訳を考える。


『あれは、あいつがライバルみたいなものだから、さん付けは変というか……それに、実年齢は私が……』とゴニョゴニョ言いかけると、すぐにエリサの逆襲をくらった。


「なるほど。じゃあ、実年齢を公表しましょうか。一部の人しか実年齢を知らない実年齢を理由にし敬称を省くのはダメです」


 『実年齢を公表するべき』と言い返されて慌てるマリー。


「えっ! それは嫌よ!!」


「じゃあ、私もロリスを後輩と認定します。だからロリスと呼び捨てにしてもいいですよね?」


「ちょっと待って? 何でロリスがエリサの後輩なのよ?」


「もし、同じパーティーになれば私が先輩だし? ふふ、わかってるんですよ? マリーさんロリスをパーティーに迎えたいと思ってるでしょ?」


「うっ! あっ……よ、良くわかったわね……」


 図星であったマリーは反論できずに目が泳ぐ。そして、つい認めてしまった。こうなると完全にエリサのペースだ。


「わかりますよ。一目惚れしたんでしょ? まあ、私は男をこのパーティに入れるのは反対ですが、片思いのままで恋煩こいわずらいされても困るので、さっさとパーティーに招聘して、真実のマリーさんを見てもらって、パッと散るのもアリかなと」


「散らないわよ!」


 淡々としゃべる内容に少し毒があるエリサ。反論するマリー。


「まあ、とりあえず私は条件付き賛成ってことですよ? 条件は私とマリーさんが旅が続けられることです。それならば何をしてもらってもいい。そうそう、夜は私、耳栓して寝ますから、隣で何していても構いませんが、ちゃんと対策してくださいね? 途中で旅が続けられなくなったとかは駄目ですよ? 」


「何の話してんのよ! こんな外で!」


「大事な話ですよ。話を戻しますが、今後、ロリスがパーティーメンバーになれば、私の後輩ですからね呼び捨てにするのは当然です。納得でしょ?」


 呼び捨てを認めさせる為だけの『屁理屈だな』と、マリーは思う。


「完全に屁理屈にしか聞こえないけど、わかったわ。エリサが賛成なら、すぐにでもロリスへパーティー参加を打診をする!」


「いや、それはちょっと待ってください。まず、私たちは今、受けている依頼を完遂させねばなりません。ロリスは冒険者じゃないんですから、今の依頼中は荷物持ちポーターとしての同行となります。荷物持ちポーターは冒険者の独断で雇えますが、一応、主の貴族様にお伺いを立てる必要がある。それに、本人の意向も重要です。最低一日は待ちましょう」


 ロリスを参加させたくないエリサだが、マリーに嫌われるのも困る。

 そんなエリサの説得により、ロリスへのパーティー参加の打診は、一日待たれることになったのである。


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