第3話 おっさんと女冒険者1
「……ァァァーッ!」
『ん? 今、何かの悲鳴が…?』と疑問を抱きつつ、ロリスは山を下りながら、足を止めて周囲に耳を傾ける。
「……リサー…逃げろー……」
切迫した声が、かすかにロリスの耳に届く。
「いかん! 誰かが何かに襲われている!」
そう直感したロリスは、急いで山を駆け下る。山を下るにつれ、周囲の声や音がはっきりと聞こえてきた。
……キィンッ!
「……クソッ!」
「ウガアアッ!」
「うわっ! 危な!」
ロリスが声の方向へと急ぐと、街道でシルバーベアと
「くらえっ!」
「グガァッ!」
「くそ! 肉が硬くて剣が入らねえっ!」
シルバーベアの筋肉は堅く、剣を深く刺すには筋肉のわずかな隙間を狙わないと深く剣は刺さらない。
ギインッ!
「うわっ!」
シルバーベアはその剣を右爪で払いのけ、剣はクルクルと空中を回転しながら道端の地面に突き刺さる。
「チイッ!」
「おい! そこのおっさん! なにか武器を貸してくれ! 武器がないとどうにもならん!」
「オ、オウ! 受け取れ!」
ロリスは、持っていたツルハシを投げた。
ブブブブッブンッ!
しかし、慌てて投げたツルハシは唸りを上げながら回転し、
「うわっ!」
驚いた
「グオッ!」
その背後にいたシルバーベアも地面にひれ伏してツルハシを避けた。
ブブッブオンッ!
ツルハシは唸りをあげながら通りすぎる。
「バカ! 殺す気か!」
「グオッ、オオウ、オウッ!」
すぐに顔を上げてロリスに抗議する一人と一匹。
「あ、えっ? ごめん!」
敵味方ごちゃまぜの抗議に対し、なぜか素直に謝ったロリス。何とも言えない間の抜けた空気が流れた。
「げ?! そうだ、戦ってたんだ! やばっ!」
「ガ? グオウッ!」
一瞬、間の抜けた空気に支配された一人と一匹だったが、戦闘中だったことにすぐ気づき、慌てて立ち上がる。そこに、上空からブーメランのようにツルハシが返って来た。
ブブブッ! ズガンッ!!
「ピッ! ヒギィィィッ!」
ツルハシはシルバーベアの鼻先をかすめて足元に深々と突き刺さる。シルバーベアは恐怖に駆られて、奇声を上げながら山へと逃げていく。
『ふう。何とかなったな?』とロリスは一息ついた。
「何がフウよ! 何とかなってないわよ! 一歩間違えばコッチが死んでるわ!」
感謝よりも恐怖が先に立った
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