第29話

義姉視点 過去編


私は足は動いた。


そして、気がつくと優を抱きしめていた。


「お姉さん」


何を言っていいのか分からない。だって私は人を殺したことがないし、分からない。


「・・・」


優は優しく、背中を抱きしめてくれて居る。


「お姉ちゃん、」


まるで愛を返してくれるように、


「・・・」


優は純粋な子供だ。母親や誰かに愛を求める純粋な子ども


本当はずっと早く付き合うべきだった。この数ヶ月だけで、とっくに優が優しい普通の少年だと知っていた。なのに放置して、


あの時、お姉ちゃんに言われて引き取る覚悟もしたのに、


そうだ、私がしないといけないこと


「よくやった」


「え、」


「よく守った。命懸けでよく守った」


褒めること


「でも、人殺しはよくないよ」


「よく殺した!!」


「・・・っ」


受け入れ、正しいと認めてあげること


「良いんだ。よく守った。やらないとやられる。生きるために仕方ないんだ!!当然だよ!!」


散々聞いた、姉から優は人殺しを喜んでいたと楽しんでいたと


な訳あるか!!そんな子がそれから人を殺さない訳がない!!


殺しが趣味なら、もっとサイコパスだわ!!


「でも、でも、もっとやり方はあっただろうし」


「あるでも、生きるためなら確実を選ぶべし!!少年法もあるし!!だからよく生きた。よく戦った!!よくゴミを排除した!!えらい、えらいよ、優!!」


「・・・」


私も、本当はこのことをお姉ちゃんに言いたかった。初めに優のことを聞いた時に、それは仕方ないでしょと、思った筈だ。


でも娘から人殺しのことを自慢したと聞いて私も狂ってしまった。


「・・・ぅ、」


そして、優は号泣した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る