第19話
まどかがどこかで話したことがあるようなそんな懐かしい気持ちにさせる人は1人しかいない。
『はじめまして』
と会話していたのは星であろう人物であった。
しかし、確信が待てない。
お互いなんとなくお互いを知っているように感じていたが、『知らない人』のフリをして会話を続ける。
職業を聞かれてまどかは焦る。
まどかの本当の職業は『作詞家』であった。
子どもの頃から好きだった『文字の世界に飛び込んだ』
小説家と言う道も考えたが。
音に乗せて文字を踊らせる世界観が好きで
『作詞家』と言う道を選んだ。
街でまどかの作詞した曲が流れている時にまどかは幸せを感じていた。
なので、今回は初めて自分が作詞家だと名乗った。
相手の男性は職業を尋ねると『カメラマン』だと言った。
クリエイティブな仕事をしているといつもは言っていると教えてくれた。
なんとなくピンときたようなこないような?
それとなく住んでるところも聞いてみる
何か試しているようでまどかも気が引けるが。
そこは仕方ない。
そうすると男性は『とある県に住んでる』と教えてくれた
たしかに景色が綺麗な街並みがあるところではある。
まどかも住んでるところを聞かれたので、
『東京』と本当のことを話した。
東京は住むのには便利だし、お店も多く夜遅くまで営業しているのが当たり前であったがまどかにはどことなく虚無感が残る感じがしていた。
まどかは元々東京に生まれ育ったわけではない。
地元は田舎のとある街であった。
地元に未練はなかったが、たまに同郷の人をテレビで観たりすると望郷の気持ちがわかないこともなかった。
会話はもちろんスムーズに進む。
しかし、あるワードは出てこない。
まどかもあるワードは出さないで会話を紡いでいく。
あるワードとはお互いに『逢いたい』と言わないことだ。
まどかは星でもあってもなくても『逢う』ことに固執した気持ちは捨て去っていた。
その男性の方も『逢いたい』と言ってこない。
ただ会話を紡げるだけで幸せだとまどかは思っていた。
もしも、縁があって星とまた再会できたとしたらこうやって話すことができているとしたら。
この上にある幸せとはあるのだろうか?
と思っていた。
まどかは幼少期の心の傷から人間関係をうまく築くことを苦手としていた。
幸い、心療内科のドクターとの信頼関係はバッチリでなんでも相談していた。
なので、思い切って受診日にただの雑談として相談してみた。
人間関係を築くのが苦手と言いつつも相談するところがたくさんあるのはまどかの人柄からくるのであろう。
ドクターはちゃんと向き合い相談に乗ってくれた。
ドクター曰く、『逢いたい』にもいろいろ理由があるように『逢えない』にもいろいろ理由があると。
ドクターの言葉はスッと心に入ってくる言葉がけをしてくれるので心にスーッと入ってくる。
『逢えない』いろいろな理由か…
それは考えなかった目から鱗な答えであった。
『逢えない』理由がなんだったのか、今となってはもうわからない。
聞く相手もどこか遠くへ行ってしまったような気がしている。
まどかはいろいろ考えを巡らせる
逢いたいと言わなかったらまだ連絡をとっていただろうか?
逢いたいと言わなかったら関係性は変わらずそこにあったのか?
想いをいくら巡らせても星からの答えは返ってこないのである。
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