第15話
とある日、まどかは今日も相変わらず星と話をしている。
まどかはこの時間が少しでも長く続けばいいなと思うようになっていた。
星はまどかのことをどう思っているのか気になり出した頃…
星は相変わらず、忙しく仕事をしていた。
藍との仲も相変わらずであった。
「ねえー?花村くんって本当に好きな人いないの?
恋愛ってだるいって思ってるの?」
藍はもはやヤケクソな気持ちで聞いてみた。
少しは自分の方を向いてくれるかも?という期待も込めて。
「…
好きな人いますよ!
」
「え?そうなの?」
藍は驚きを隠せない。
つい先日自分を振ったばかりの男性に好きな人がいるとな。
「え?私の知ってる人?」
とありがちな質問をする藍。
「いや、知らないです。
俺もよく知らないです。
顔も住んでるところも何も知らないです。」
「それって好きって言えるの?」
正しく正論であった。
星に突き刺さりもしなかったが俗に言う『正論』というやつだ。
「顔も住んでるところも何も知らなくても惹かれるものがある人がいるんですよね」
と星が遠くを見ながら話す。
それは相手のことを思い浮かべているかのように。
藍はどこに住んでるかもわからない人に恋をしている星にこれからどんなアプローチをしても無駄だと悟る。
「逢いたいと思わないの?」
「逢いたいと思わないと言ったら嘘になりますけど、逢って何か違うって思うのが怖いと言うか、幻滅されるのが怖いと言うか」
とまた遠くを見て話す星にどこに住んでいるかもわからない相手に嫉妬している藍がそこにはいた。
「顔わからないってそんなに重要じゃないって言うかお互い知らなくても、気にはなりますけど、でもそれだけっていうか…」
人生において当たり前は存在しない。
毎日ご飯を食べられること
好きな人がいること
相手がそばにいてくれること
どれをとっても当たり前なんてことは一つもない。
逢いたいがないと言ったら嘘になる。
どんな人か気にならないと言ったら嘘になる。
でも今の関係が心地いいと思うのも事実である。
友達なのか?
まどかちゃんがどう思ってくれてるのかわからない。
でもこのまま何も知らないでいるのが幸せなのかもとも思うのである。
そんかことを思っているとまどかから連絡がくる。
『今日あったつらい話。』
『今日仕事でミスしたよー。
同僚がフォローしてくれたから助かった』
と相変わらずな文面に星の心は和む。
励ます文章を送り、慰める。
当たり前がない世の中で2人が出会ってお互いどう思ってるかよりも、相手の気持ちを優先して。
逢いたいとか逢いたくないとかそんなことを全部すっ飛ばせるほどの感情を持ち寄って
今日も2人は言葉を紡ぐ。
声を聞くことも、逢うこともない2人には文字しか存在しない。
でもそこにはたしかに『音』があって
メロディーに乗せるように言葉を乗せて会話をする。
2人が思いやりを持たなかったら成り立たない時間だ。
そんなかけがえのない時間は今日も進む。
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