第14話
自然と涙を溢したのはいつぶりだろう?
とても暖かい涙だった。
今までずっと閉じ込めていた心の叫びを星は受け止めてくれた。
静かに聞いてくれた。
『それはたしかに心の傷だ。深い、深い心の傷だ。でもそんな心の傷があるまどかちゃんもまどかちゃんなんだよ』
という文字がまどかの荒んでいた心にスッと刺さる。
人間には同じ言葉を言われても響く言葉をくれる人とそうでない人がどうしてもいる。
そう、まどかにとって星は『心に響く言葉をくれる人』であった。
加奈子もまどかにとって心に響く言葉をくれる人である。
でも今まで知り合ってきたトークアプリの人たちはどこか薄っぺらいというか
たとえ同じ言葉をもらっても『心には響かない』
まどかは『大切な何か』を手に入れたようである。
『好き』と『愛してる』の違いをいくら調べてみても『愛情』を知らないまどかにとっては難解な問題であった。
しかし、まどかは『好き』とかの感情を全部すっ飛ばしても
星のことを愛おしく思っていた。
これが『愛情』なのかはまどかには判断できなかったが星の言葉は心の奥にとどまってまどかの心を暖かくした。
人は悲しいことがあった時、どうやって乗り越えるのだろうか?
人は嬉しいことがあった時、誰と共有したいと思うのだろうか?
人は、ひとは、ひとはつらいことがあった時につらいと泣き叫ぶことができるのであろうか?
まどかに幼少期の記憶はほとんど残っていない。
母親から浴びせられた言葉は覚えている。
でもその言葉をどうやって掻い潜って生きてきたのか記憶がないのである。
幼少期は親との愛着を育むためにとても大切な時期である。
そんな大切な時期の記憶がないまどかには今までの人生、楽しかったことはあったのだろうか?
偶然に加奈子という生涯を通して仲良くしていきたいと思う友達ができたことはまどかにとって財産である。
つらいことがあったらすぐ連絡するように加奈子から言われている。
結婚しているので出来るだけ迷惑はかけたくないと思っていた。
なぜか星にも、『つらいこと』があったらすぐ話してほしいと言われたのである。
その気持ちがくすぐったかった。
でも嬉しかった。
軽い口調での「わかるー」は散々もらってきた。
でも、本当の気持ちなんて誰にもわかるわけない。
寄り添うことはできても「わかるー」なんて軽く言って欲しくないのが本音だった。
星と加奈子は軽はずみに「わかるー」とは絶対言わなかった。
まず、心の1番奥に届く言葉をくれる
それが何より嬉しかった。
加奈子にも星にも生活があるので、文字というツールで連絡を取るのが主であった。
加奈子とは時々会って『ガールズトーク』なるものを展開していた。
星とは『逢ってみたい』という気持ちがゼロではないが、『逢う』ことよりも
文字を音を紡ぐことに幸せを感じていた。
同じ音を奏でてくれる星のことを少しずつ知るたびに喜びが増える。
今まで感じることのなかった感情にまどか自身が驚いている。
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