第12話

今回はほんの少し星の生活に目を向けてみましょう。


星は本名『花村星』(はなむらしょう)


と言う。



クリエイティブな仕事をしていることは周知の通りである。



まどかに変な誤解を与えたくなくて黙っているが、彼はとてもよくモテる。



古川原藍(28)と言う女性が星の同僚にいる。

よく言うナイスバディでスタイル抜群、非の打ち所がない女性である。



この古川原藍、もちろん星の彼女の座を虎視眈々と狙っている。



あの手、この手を使うも今のところ脈がない模様。



『おかしい、この私に落ちない男はいないはず』



藍はナイスバディを待ち合わせたかなりの自信家だった。



そんなところが透けて見えるのか星にはあまり見向きもされなかった。




「花村くん。今度の土曜日ご飯行かない?

たまにはいいでしょう?それとも行けない理由があるの?」




ここで断りたいが断ったら面倒なことになる要素しか見当たらない文言だ。



『行けない理由などない。行きたくない理由ならいっぱいあるが』



とはさすがに言えないので




「いいですよ。いきましょう」


と大人な対応をする。



「お酒飲みたいなー。いいかな?」



「いいですよ。居酒屋にしますか?それとも違うお店にしますか?」




「花村くんにお任せするね。土曜日楽しみ」





藍の星にリードされたい圧がすごい。

星は内心面倒だなと言う気持ちを抑えつつ



「了解です」



と軽く答えてパソコンで美味しそうにお酒の飲める居酒屋を検索する。




星はお酒は好きな方である。

でも『酒は飲んでも飲まれるな』をモットーに飲まれるほどお酒を飲むことはなく、適度な量を嗜んでいる。



近所に少しだけ気軽に行けるような居酒屋を見つけた。



『ここにしよう!なんでもいいって言ってたし』





ということで土曜日となった。




「お待たせー、花村くん」






と今日はいかにも『気合い』入ってます!

な格好をしてきた藍に少しだけ嫌気がさしたようにも見える星は気にも止めず。



「行きましょうか!」




あくまで冷静な判断である。




「…」

『おかしいな…可愛いですねとか綺麗ですねとかないわけ?なんでこんな塩対応なわけ?』



と内心不満あり気な顔をして星の後ろをついていく。





「いらっしゃいませー」


「予約した花村ですけど」


「お待ちしておりました」





と軽快に席まで案内された。




「それで今日はなんでお酒飲もうと思ったんですか?会社で何かありましたか?」




星は藍に尋ねる。



「嫌なことがあったわけじゃないんだ。

ねえ、私たち付き合わない?」



藍の藍による、ぶっ飛んだ愛の告白である。



これに間髪入れずに




「無理ですね、付き合うとかそういうのだるいんですよね…」




と、ものの数秒で藍の愛の告白を振って見せた。



モテる男はここが違うんです!とでも言うのか?



本当に星は恋愛を楽しむつもりがなかった。

星もそれなりに恋愛してきた。

それなりにモテる。


でも恋愛したいと思わないのである。



「なーんだ、振られたのか。」



とこちらも本気だったのかイケメンという部類に属しそうな星を横に添えて歩きたかったのか


悪びれたそぶりも落ち込んだそぶりも見せずとお酒を煽った。


お酒を煽るところを見ると当てが外れたのかこの私を振るなんて『いい度胸ね!』の境地なのか…



藍の愛の告白は見事に撃沈したのである。










帰宅してから星はまどかに連絡する。

なんとなくなのか意図があって連絡するのかは星にしかわからないが



今日同僚と飲みに行ったことなどを報告する。


まどかからは普通に返信がある。



『楽しかった?』

いつも変わらぬまどかの返信に心のどこかで安堵する。



『うーん、楽しかったかな?』



『うーんって何?笑』




変わらない日常がそこにはあった。



それに2人とも安堵するのである。

友達なのか友達以上なのか


わからない2人の感情はどこへ流れていく?



お酒に酔ってる星はついつい口が滑った。



『同僚に告られた』



と!




『え?』





口は災いの元とはよく言ったものである。

口は災いをもたらす。



この2人にも漏れなく…


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